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第68話:厄神様はかく雪投げ

どうもこんにちは、ガラスの靴です。

連日更新がやたら珍しく感じる辺りもう駄目ですね。

……頑張らねば……!!


さて、それでは第68話をどうぞ。

「それでは始めよう! スタート!」

「あの屈辱……倍にして返してあげるわ……!」

「――ですから、簡単に言えば雪玉を相手にぶつければいいんです」

「な、なるほど。それで、雪玉はどのくらいの大きさなのだ?」

 結局ルールなしでは試合にならないということで、両チームが陣地を3つ作り、その中央の陣地にある旗を先に取るか、相手を殲滅した方が勝ちという形式で行うことになった。

「おい狭山……」

「ああ……正直言ってまともな戦力になりそうなのは俺達だけだ。だが向こうには藤阪と辻がいる。負けたらどんな目にあうか……」

「……えげつないな……」

 というわけでここは作戦を練ろう。

「まずこちらには敵の手の内を知る必殺技がある」

「マジかよ! お前すげえな!」

 煩い。

「……ごめんなさい……」

 厄病神には既に敵陣の状況を視察しに行ってもらっている。向こうでその存在を感知できるのは死神と神楽だけだし、雪玉をすり抜けるという無敵ぶり。まずはそれで相手の出方を伺うつもりだ。

「狭山くん。まずは集中攻撃で一人ずつ敵を潰していくのが効果的ではないかしら?」

「なるほど。それは確かにそうかもしれない。そうするとまずは……」

「藤阪さんなんてどうかしらね」

 なんかこの人、目がおかしいんですけど。

「おそらく敵勢力において前線に立つのは藤阪さんと神楽さんでしょう。そして後衛の補給ラインに辻さんと黄泉さん、遊撃にすみれさんと拓斗さんが配置されると思われます」

 市原が雪に予想全体図を描いていく。

「とすると最も脅威となるのはおそらく前線の2人だろう。まずは正面突破を避け、遊撃を潰して側面から攻めるべきだと思うが」

 碧海は戦闘のプロだ。あの身体能力なら2、3人は倒せるかもしれない。

「直樹さん! 様子を見てきました! ここから見て右側に神楽さんとすみれさん、左側に藤阪さんと拓斗さんがいて、後ろの方で辻さんと黄泉さんが雪玉をいっぱい作っています」

 ……これは、案外いけるかもしれない。

「よし、それじゃこっちの出方を決めよう。まず桜乃」

「おう! 任せとけ!」

「正面に行って適当に踊ってろ。その隙に碧海が右側を攻める」

「俺、囮っすか!?」

 冗談だ。

「まず、右サイドと左サイド、どちらが攻めやすいかだが……」

「左だと思います。すみれさんはまず間違いなく一撃でしとめることが出来そうですし、神楽さんは放っておいてもこちらへ特攻を仕掛けてくるでしょう」

 なるほど。

「よし、それじゃまず左側を攻めるぞ。俺と桜乃と市原が雪玉を作るから、碧海と松崎は藤阪妹を狙ってくれ」

「わかった」

「わかったわ」

 スマン藤阪妹、これも戦術だ。こんど何か奢るから。

 ほどなく藤阪妹の小さな悲鳴と、藤阪姉の怒り狂った声が聞こえてきた。

「なあ狭山、俺たちひょっとして怒らせてはいけない奴を怒らせたんじゃ……」

「試合後のことも考えた戦術にしておけばよかった……」

「直樹さん、すみれさんが戦線離脱しました!」

「よし、いいぞ3人とも!」

「え、なに? ひょっとして倒したの?」

 藤阪妹はな。

「もたもたしているヒマはありません。1、2の3で正面に向かって一斉射撃を行って下さい」

「分かった」

「いきますよ。1、2、3」

 陣地の上から俺と桜乃が雪玉を投げつける。しかし手応えはない。

「甘いな直樹氏! 僕が真正面から攻めるとでも――!!」

「お疲れ様でした」

 

 

「えーと、何が起こったの……?」

 どうやら神楽が俺達の雪玉を察知して側面から攻めようとした瞬間、それを読んでいた市原の迎撃がクリーンヒットしたらしい。

「……つまり、舞ちゃん、ひょっとして俺たち2人を囮に?」

「思った以上に効果的でした」

 もう指揮権をこいつに譲渡したくなってくる。

「すまない、狭山」

 ほどなくして碧海が帰ってきた。

「……松崎は?」

「相手にやられてしまった。藤阪の妹を倒したあとこちらへ戻ってくる時に想像以上の猛攻を受けてしまったんだ」

 仕方がない。ひとまず2人潰したんだ。これで残りは4対4。

 やられ組は観客席へ向かっていく。

「いやはや、舞君にしてやられたね!」

「碧海さん、敵の雪玉に自分の雪玉をぶつけて攻撃をかわしていたわね……」

「そんなにすごい人だったんですか!?」

 少し興味深い話があったな。

「碧海、敵の雪玉にこっちのをぶつけて応戦したってのは本当か」

「ああ。残念ながら松崎を守りきるには到らなかったが」

 充分だ。

「桜乃、出番だ」

「うおし!」

「特攻しろ」

「またかよ!?」

 心配ない。今回はきちんと策がある。

「碧海、今から桜乃を援護してくれ。桜乃はどちらでもいいから前にいる藤阪か桜乃弟のどちらかを潰してくれ」

「……オッケー! 両方潰してやるぜ!」

 その間に俺と市原は右サイドへ。

「うぎゃーー!! なんか雪玉と雪玉がぶつかってえらいことにーー!!」

「この!! 拓斗、もっと気合入れて投げなさい!」

「これでいっぱいいっぱいですよ!」

 よし、いい感じに桜乃に意識が集中している。

 俺達は首尾よく敵陣地への侵入に成功した。

「まだ辻さんと黄泉さんの姿が見えません」

「油断するなよ」

 碧海にサインを送る。

「…………」

 コクリと頷くと、雪玉を敵2人に向かって投げつけた。

 すると当然桜乃への援護は消えるわけで。

「よっしゃあ! このまま突入――ホベボバビベバボバ!?」

「よし! やっと倒し――きゃあ!?」

「うわぁ!?」

 勝利の余韻に浸っていた2人は桜乃の後方から飛んできた速球になす術もなく当たり、脱落した。

「テメェー狭山ぁ! 結局捨て駒かコラァ!?」

「この卑怯者!」

「見損ないましたよ!」

 外野が何を言おうと関係ない。全ては勝利のため。

「……狭山さん、泣いてるんですか」

「そんなことないやい」

 

 

 今現在、辻と死神がどこにいるのかはわからないが、俺と市原が敵陣のすぐ裏側、碧海が自陣に構えている。

「ここからどうするか……」

 ここまで来たら旗を取りに行きたいが、敵がどこに潜んでいるのか分からない。うかつに顔を出すのは危険だ。

「狭山さん、小夜さんに偵察してもらっては」

 それだ。

「厄病神、辻と死神が今どこにいるか見てくれ」

「はい! わかりました!」

 厄病神はふよふよと漂っていく。この報告次第で攻め方も変わるな。

「直樹さん! ダメです!」

「なんだお前、随分早――」

「黄泉さんがそこのすぐ裏側に!」

 ――!!

「市原!」

「わかってます」

 2人で陣地の横へ転がりこむ。これでひとまず第一波は避けられ……。

「悪いな。お前達が小夜を使うのは知っていた。だから裏をかかせてもらった」

 俺たちの目の前。

 陣地の横に、死神はいた。

「狭山!!」

 碧海がこちらへ駆けてくる。今動いたら――

「はいゲットーー!!」

「……やっぱりな……」

「……え?」

「やられてしまいました」

 

 

 辻は藤阪達のすぐ後ろにいたのだ。碧海がこちらに気を取られている間に俺達の陣地へ回り込み、旗をとったというわけだ。

「お前まで囮になっていたとはな……」

「真の狙いを最後まで隠しておくのは戦術の基本だ」

 おそらく俺達が自陣にこもって投げ合いをしていれば、勝利はこちらのものだっただろう。

 旗をとろうと無理に前に攻め込んだのだから、

「完敗だ……」

「ハッハッハ! いい試合だったね! では帰ろうか!」

「さて直樹に響、ちょっとこっちに来なさい」

「……忘れてた」

 俺と桜乃は5時間目を教室で受けることはできなかった。

 

 

「まだ降ってるし……」

「このまま続けば夜には凍結するかもしれないな。交通機関にも影響が出ているだろう」

「雪が降ってもいいことばかりじゃないんですね……」

 そりゃそうだ。

「セーンパーイ!」

 なんか来た。

「ちょっとお願いがあるんですけどー」

「断る」

「……まだ何も言ってません」

 どうせろくなことじゃない。

「とりあえず駅まで来てください」

 

 

『――現在運転再開の見通しは立っておらず――』

 駅は随分と落ち着きのない雰囲気だった。人々は時計と電光掲示板を交互に見比べ、絶えず放送が鳴り響いている。

「見ての通り、電車が全部止まっちゃったんです」

 こいつは電車通学だったな。

「なので――」

 もうこの時点でこいつが何を言い出すか大体予想はついた。

 だがここですぐに止められなかったのは俺の人生史上類を見ない過ちだったようだ。

「今晩、泊めてください!」


藤「卑怯者」

桜「卑怯だ」

舞「卑怯ですね」

神「卑怯だね!」

死「卑劣だな」

直「うるさいうるさいうるさーい! 黙れー!」

厄「お、落ち着いて……」

碧「捨て駒作戦が余程周囲の反感を買ったようだな」

辻「いーんじゃないですかー? あれくらい」

直「お前に言われても嬉しくない……」



はい。

ええ、皆様のおっしゃりたいことはよく分かります。

そりゃないだろ、と。

ですがこうなってしまったものは仕方がありません。

開き直って次回は辻さんの強襲です。


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厄神様とガラスの靴
こっそり開設。
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