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第63話:厄神様はかく祝いき

どうもこんにちは。

ガラスの靴です。

さて、更新についてなのですが、これから毎日更新を続けるのは色々とキツそうなので、そういった場合に前回のように一気に休んで書き溜めるのと2日置きくらいにチマチマ出すのではどちらがよいのでしょうか?

よろしければご意見を下さい。


では誕生日ってイベントだよねという第63話、どうぞ。


「実は今日、僕の誕生日なんですよ」

「……へー……」

「……それで?」

 6月20日(月)、この日の部活は桜乃弟のこんな発言から始まった。

 

 

「い、いやー。やっぱり誕生日っていったらめでたいじゃないですか」

「おめでとう」

「おめでとう。これでいいの?」

「……プ、プレゼントなんかもらっちゃったりして」

「おい藤阪、お前なんかあるか?」

「んーと、そういえば学食で残したカップゼリーがあったわね。はい」

「あ、ありがとうございます。……じゃなくて! 狭山先輩とか藤阪先輩のプレゼントはどうでもいいんですよ!」

「…………」

「…………」

 

 

「で、プレゼントがなんだって?」

 何故か全身傷だらけの桜乃弟に問いかける。

「ええ……その、藤阪先輩の家では、なにかそういう話題は出ませんでした……?」

「まったく」

「…………」

 ああ。なるほど。

「藤阪妹か」

「ばっ!? 何言ってるんですか! 本人に聞こえたらどうするんですかちょっとぉ!」

 慌てすぎだ。

「悪いけど、あんたが今日誕生日だって事すら知らないかもしれないわよ」

「……わかりました……」

 桜乃弟は肩を落としてフラフラと旅立っていった。

「……どうするよ」

「どうするって言ったってねぇ……」

 

 

「よ、藤阪妹」

「あ、こんにちはー!」

 あそこまで聞いてなにもしないのはちょっとばかり寝覚めが悪い。俺達はそれとなく藤阪妹にリサーチをかけることにした。

「すみれー。今日が拓斗の誕生日だって知ってたー?」

「……なんで当然のようにいる」

「え? 何言ってるんですかー。長い長い修学旅行からようやく帰ってきた後輩に対する第一声がそれですかー?」

 そうじゃなくて。練習しろ。

「それですみれ、知ってた?」

「人の話を聴け」

「うーん? 拓斗くんの誕生日なの?」

「あちゃー」

「完全にアウトね……」

 頑張れ桜乃弟。来年またチャンスが来るさ。

「あ、知らなかった。それじゃー別にいいや。気にせず練習しなさい」

「お前酷いな」

 仮にも同学年で同じグループだろ。

「誕生日なんて別に知らなくても生きていけるじゃないですかー。あ、ちなみに私の誕生日は9月26日です」

 きっちり自己主張してるじゃないか。

「そういえばわたしの誕生日のときには拓斗くんがぬいぐるみをくれたなー」

「……やるわね」

「マメだな」

 感心している場合ではない。

「すみれ、それじゃ流石に『忘れてました』はまずいわよ。何でもいいからプレゼント用意しなさい」

「うん! 拓斗くんの誕生日を祝ってあげなきゃだね!」

 こうして藤阪妹のプレゼント探しが始まった。

 

 

「あの、直樹さん。今は部活中じゃ……」

「それを気にしてはいけない。気にした瞬間あの部長に不在を感知される気がする」

 パッと買ってパッと戻ってくればばれないだろ。

「それで、ぬいぐるみってどれくらいの大きさだったのかしらね」

「どうせ大した物は買えてないんじゃないですかー?」

 好き勝手推論を繰り広げる2人を余所に、藤阪妹は結構真剣に店を探しているようだ。

「なあ厄病神。お前が誕生日にもらってうれしいものってなんだ?」

「うーん……。お花なんてどうでしょうか?」

 花か。なかなかいいかもな。

「おい藤阪妹。花とかはどうだ?」

「お花ですか! いいかも知れません!」

 よし、決定。

 

 

「うーん……。なかなかいいのがありません……」

 商店街の花屋。来てみたはいいが桜乃弟にあいそうなものとなるとなかなか見つからない。

「そういえば桜乃はどこに行ったんだ」

「帰ったんじゃない?」

 ……家で弟の誕生日を祝う準備をしていると信じたい。

「よくよく考えたら、拓斗さんは男の方ですし、直樹さんの意見の方がいいのではないでしょうか?」

 ここにきて根本的な問題が発覚。やり直しとなった。

 

 

「で、あんたがもらって嬉しいものって何よ」

「うーむ……」

「早く答えて下さいよー」

 商店街を歩きながら考える。なんかお前ら妙に真剣じゃないか?

「気のせいよ」

「気のせいです」

 俺が誕生日にもらってうれしいもの……。

「ハンカチとか」

「うわ、地味ー」

「なんかパッとしないわね」

「黙れ」

「それじゃあハンカチ屋さんに行きましょう!」

 藤阪妹はあるのかも分からない店を目標にしてダッと駆け出してしまった。

「……すみれも意外と真剣なのね」

「案外報われる日が来るかもな」

 

 

 ハンカチの専門店なんてものはどこかにはあるのかもしれないが、少なくともこの町の商店街には存在しておらず、仕方がないので駅前に出てデパートの紳士コーナーで探すことになった。

「ねえ直樹。あんた本当にこんなものもらって嬉しいの?」

「ん? 何か言ったか?」

「真剣に選んでますねー……」

「うーん……どれがいいのかなぁ……?」

ところで、紳士コーナーで売っているハンカチというのは案外馬鹿にならないものだ。質も、……値段も。

「予算オーバー、ね」

「ど、どうしよ〜!」

「諦めれば?」

「そんなぁ〜!」

 結局部活ももうすぐ終わりそうな頃まで経ってもいいプレゼントが見つからず、藤阪妹は泣きそうな顔で2人に泣き付いている。表現がおかしいな。

「厄病神、この際なんでもいいから、今すぐ用意できそうなプレゼントってないのか?」

「え、えー? んーと……あ! そういえばすみれさんはクッキーを焼くのが上手だったような!」

「クッキーなんて今から焼けるか!」

「…………!!」

 なにやら急に空気が変わった。藤阪妹を見ると決意を固めた表情をしている。

「あのねお姉ちゃん! お願いがあるの!」

「な、なに?」

「今日――」

 

 

――……。

――…………!! ……!!

――……!

「何言ってるか聞こえないわね」

「状況は手に取るように分かるが」

「なんで私たち、こんな壁に隠れてるんですかねー」

 今、廊下では藤阪妹と桜乃弟が話をしている。俺たち3人はそれを廊下の角から盗み見ているのだが、結局藤阪妹はクッキーを焼くことに決めたらしい。

 ただ今から焼いて持って行くのは時間的に厳しい。そこで藤阪妹が決めたのは、逆転の発想だった。

「まさか拓斗を家に呼ぶなんてね……」

「昔のすみれからは考えられないなー」

 桜乃弟は驚いた顔をしてからすぐに首を大きく縦に振り、放っておけば狂喜乱舞して楽器を放り投げるんじゃないかと思うほど張り切って部活の片づけを再開した。

「お姉ちゃん! 拓斗くん大丈夫だって!」

「まあそりゃあそうでしょうねえ……」

「それじゃあわたしも片付けしてくるね!」

「あーあ、行っちゃった。随分うれしそうでしたねー」

 うんうん。仲良き事は良き事かな。

「そうね。それで貴方たちは、仲良く何をしていたのかしら?」

「……いやー、ちょっとした野暮用が……」

「あ、あははー。まさかこんなに遅くなるなんて思わなくってですねー」

「ならその用がなんだったのか、これからじっくり聞かせてもらいましょう」

 探偵に完全な証拠を突きつけられたときの犯人はこんな気持ちなんだろうな。

 俺達は人知れず30分間の拘束を受けたのであった。

 

 

「まったく……ちょっとサボったくらいで……」

「まさかあそこでばれるとはな」

「逆に部長はいつ練習してるんですかねー」

 俺達は駅前のファーストフード店に来ていた。暗闇に染まっていく町を見ながら両サイドに次々と奪われていくフライドポテトを1本つまむ。

「流石に今の家に帰る度胸はないわね。もう少し時間を潰してから帰りましょう」

「なんで俺まで巻き込まれてるんだ」

「センパイの案だからじゃないですかー?」

 だったらお前がいる理由は。

「まあまあ。細かいことを気にしすぎるとハゲますよー」

「余計なお世話だ!」

 携帯電話が鳴る。取ると、桜乃からだった。

「どうした」

『いやー、拓斗の奴がどこ行ってるか知らねえか?』

「まあ一応は」

『そうか。それじゃあ言っておいてくれないか? 千歌が誕生日パーティーを始めるのをずっと待ってて、それでいま姉貴が殺意に満ち溢れてるって』

「……ああ、分かった……」

 せめてもう少しだけ、夢を見せておいてやろう。

 ……悪夢に変わる時まで。


す「うまく焼けましたー」

拓「い、いただきます!」

藤「……幸せそうね」

辻「この後に地獄が待っているとも知らず……」

桜「まあ千歌も姉貴も本編では出てないわけだが」

厄「番外編を読んで頂ければ多少楽しめると思います」

松「そんなことより、少しは真面目に部活に出てもらえるかしら」

直「……善処します……」



はい、という訳でお誕生日のお話でした。

最初の誕生日がサブキャラて。

まあすみれの誕生日が過ぎてるのは完全にこちらのミスです。

もしいるならすみれファンの方ごめんなさい。


さて、次回は後輩の話にするか吸血鬼の話にするか。

たぶんどちらかです。

お楽しみにー!

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厄神様とガラスの靴
こっそり開設。
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