第61話:厄神様はかく浴せり
どうもこんにちは、ガラスの靴です。
思ったとおりえらい勢いで読者様の記憶から消えている模様のこの作品ですが、もしよろしければこれからもお付き合い下さい。
出来る限り面白い話を提供していきたいと思っております。
では、第61話。
サブタイトル「それは王道という」をどうぞ。
「あ、紅茶がない」
「紅茶、ですか?」
夕食後、少しのんびりしようと紅茶の準備をすると、いつの間にかお茶葉が切れていたことに気がついた。
「まいったな。この辺のコンビニには売ってないだろ」
だが一度飲みたいと思ったものが飲めないと分かるとどうにも悔しい気分になる。
「……よし、買ってこよう」
「どこまでいくつもりだ」
「スーパーまで」
「……ばかじゃの」
煩い。お茶を愛する者にとっては寒空の下の買出しもへっちゃらだ。
「でも、いくら6月といっても寒いですよ。それに雨も降るみたいですし」
「まだ降ってないし、今すぐに行けば降りだす前に帰れるだろ。風呂だけ沸かしておいてくれ」
「わかりました……。気を付けて行ってきてくださいね?」
「ああ。行ってきます」
今夜は新月ではないが、月は見当たらない。
別にこの町の大気汚染が引き返せないレベルまで進んでいるわけではなく、もう雨雲が空を覆っているのだろう。
「そういえば昼間も晴れって訳じゃなかったな……」
世間一般で言えば梅雨にあたる時期だ。多少の雨は覚悟すべきだろう。
「さーて、紅茶紅茶」
雨雲に蓄えられた水分が限界突破しないうちに買って帰るとしよう。
「くそっ! もうちょい根性出して蓄えとけ!」
紅茶を買ってスーパーを出た時からポツポツと雨音が聞こえ始め、歩き始めてすぐ本格的に降り始めた。梅雨独特のしつこい雨が全身を襲う。
「なんで傘を忘れたかなぁ俺は!?」
自分で自分に突っ込みながら全速力で走る。帰ったら一刻も早く風呂に入らねば。
水たまりをいちいち避けている余裕はない。バシャバシャと音を立てながら俺は家へと急いだ。
「ただいまー!」
「お帰りなさ――直樹さん! どうしたんですか!?」
「降られたんだよ。風呂沸いてるか?」
「あ、はい。でも――」
「悪い! 先入るぞ!」
即効で着替えを持って風呂場へ。寒い。濡れた床を拭くのは後だ。マッハで服を脱いで浴室のドアを壊す勢いで開ける。
――ガラガラッ!!
「…………」
「…………」
さて、突然だがここで皆さんの意見を訊きたい。
今まで入浴中に親兄弟姉妹その他の家族に乱入された経験のある方はいるだろうか。いるとしたらどのような対処をするのが最も妥当だと思われるだろうか。自分の考えに自信のある方はその方法を書いて下記の宛先まで――
「って、募集してどうする?」
「なにをわけのわからないことをいっておるのじゃーーー!!!!」
「あだだだだだだだだだだだ!!」
水をかけられシャンプーの容器を投げられ石鹸が当たりついでスポンジ、タオル、子供のころ夏祭りで大量に釣って以来何故か風呂場のオブジェクトと化したスーパーボールの山、健康にいいと母さんがどこかから仕入れてきた木製の球、そして湯船の蓋――。
俺の意識は、そこで途絶えた。
「帰ってきたら風呂に入るために沸かしてもらってたんだよ! なんでお前が先に入ってんだ!?」
「いつ帰ってくるかなぞ聞いておらんわ! わらわの高貴な肌を汚す気か!」
「何が高貴な肌だ! だいたい平安貴族もどきの分際で入浴とはずいぶんだなおい! 平安なら平安らしく梳って満足してろ!」
「何を言うかこの無礼者めー! 気持ちがいいのだからよいではないかー!」
「というか尾っぽを湯船につけるな毛が抜けるだろ!」
「わらわをそこらのぺっとと一緒にするなーーー!!」
「ま、まあまあおふたりとも、落ち着いてください」
「そうだな。話し合いには冷静な精神状態が不可欠だ」
精神的ダメージと肉体的ダメージを受けた両者が論争に到るまで時間はかからなかった。厄病神が必死になだめてようやく水掛け論から脱却できそうだ。
「今回の件はお互いに責任があるな。これ以上の責任追及は無意味だ」
「……わらわはしんてきがいしょうを受けたのじゃぞ。ばいしょうきんを請求する」
「心的外傷に賠償金な。いらん知識ばっかつけるな」
「ふん! わらわは毎日てれびで新鮮な知識を仕入れておるのじゃ! お主なんぞよりずっと世間に詳しいわ!」
ほー。
「じゃあ買い物なんかも1人で出来るんだな?」
「……も、もちろんじゃ!」
それじゃあ丁度いい。明日は日曜だから、厄病神の代わりに買い物に行って来い。
「ど、どうして」
「俺なんかよりずっと世間に詳しいんだろ? だったら買い物くらい余裕だよな?」
「……うぅ……」
「な、直樹さん」
「という訳だから厄病神、明日はこいつに買い物を任せよう」
「いいんですか?」
普段から引きこもりみたいな生活してるんだ。たまには外に出させないとな。
「俺は賛成だ。変化の術の効果を試すいい機会だろう」
なんだ。変化の術、レベルアップでもしたのか?
「耳を隠せるようになった」
「すごいですね玉藻さん!」
「……ふ、ふん! わらわの手にかかればそれしきのこと造作もないわ!」
で、尻尾は。
「…………」
「…………」
「……まだ、みたいですね……」
駄目だこりゃ。
で、翌日。
「足がすーすーする……」
「しょうがないだろ。スカートじゃなきゃ尻尾も隠せないんだから」
厄病神の私服を着せ、レベルアップしたらしい変化の術で耳を隠すと一応は普通の女の子が完成した。服が多少大きめなのは外見年齢的にやむをえまい。
「それで、何を買えばいいのじゃ」
「これに書いておきました」
厄病神が玉藻にメモを手渡す。買うものは数品だけのようだ。
「それじゃあ行って来い」
「う、うむ! 任せよ!」
おっかなびっくり外へ出て行った。
「…………」
「…………」
「…………」
さて、悲鳴なんかが聞こえないところをみるとひとまず変身には成功しているようだ。いや待て、もしかしたら道行く人は驚いて声も出ないのかもしれない。そもそもあいつ商店街の場所は知っていただろうかまあ知らなかったら途中で戻ってくるだろうがあいつの性格を考えるとムキになって自力で探すまで帰ってこないかもしれないそうしたら下手すると隣町まで行くんじゃないだろうかせめて連絡先が言えるようにプレートでも持たせておけばよかったでも仮に持たせたとしても知らない不審者の言葉に騙されてほいほいついていきそうだしなそうしたらどうするんだ身代金なんて
「おい父親。そんなに心配か」
「誰が父親だ! まったく心配しとらん! あいつが地域住民に迷惑をかけないか懸念していただけだ!」
「とてもそうは見えませんでしたけど……」
煩い。黙ってろ。
「まあ落ち着け。ここにこんなものがある」
「ん? イヤホン?」
死神がどこかから取り出したのは耳につけるイヤホンのようなものだった。だがそれは耳につける部分から数cmでコードが途切れており、先には音楽プレイヤーもラジオもついていない。
「耳につけてみろ」
「こうか?」
耳にはめる。やはり何も聞こえない。
死神は家の電話機をとり、なにかの番号をプッシュした。
『もしもし』
「うおわぁ!?」
イヤホンから死神の声が聞こえる。どうやら受話器に喋った言葉がそのまま受信されているらしい。
「よし。感度良好。まずまずの出来だ」
「なんなんですかこれ……?」
「神が暇つぶしに作ったらしい。これは試作品の段階だが、いずれ完成にまでこぎつけるそうだ」
阿呆だ。
「で、これを何に使うんだ?」
「俺が玉藻を尾行しよう。その状況をこのイヤホンでお前達に伝える」
送信も出来たのか。
「そうですね。その方がわたしも安心です」
「よし、では行ってくる」
死神はイヤホンを耳につけると、靴を履いて外出する準備を始めた。
「携帯電話からこの番号にかければつながるはずだ」
「ああ、分かった」
「それでは、ミッション・スタートだ」
恐らく世界一どうでもいいミッションだろうな。
辻「出てない……」
ネ(昼)「出てないの……」
ネ(夜)「出てないね……」
直「またこれか。今回は玉藻の話なんだ。まずお前達の出番はないだろうな」
厄「きっとそのうちたくさん出させてもらえますよ!」
神「時に直樹氏、僕の発明品はどうかね!?」
直「発明品ってか、あれ某ゲームのパク」
神「そうかね! 素晴らしいかね!」
直「確信犯め……」
厄「では、後半へ続きます」
というわけで裏サブタイトル「パクリじゃないよ」でした。
どっからどう見てもオリジナルではないのは気のせいです。
「どこがパクリなのか分からない」という方はこれからも健全な生活を続けていけるでしょう。
分かった方は仲間です。よろしくお願いします。
まあ連載を続けていると一度はやってみたくなる大冒険でした。
では後半をお楽しみにー!!