第54話:厄神様はかく隠せり
どうもこんにちは。
明日、1月9日はとんちの日。
由来は言わずもがなでしょう。
今日のは前回のまえがきを見て下さい。
では第54話。
どうぞー!
「ネー、ベル……?」
振り返ると、最近名前を知った少女のものと同じ銀髪が見えた。
「……三度目の初めまして、だな」
……違う。
そいつはネーベルにとてもよく似ていた。だが違う。
ネーベルの目はあんな燃えるような紅ではなかった。
「お前は、誰だ」
「なに、赤の他人さ。これまでも、そしてこれからも」
不意に手が伸ばされる。
「…………!?」
「直樹さん!」
ドン、と衝撃がして、気付けば地面に横たわっていた。どうやら厄病神に突きとばされたようだ。
「痛ってー……」
「ご、ごめんなさい! つい……」
つい、じゃないわ。
「あ、あなた、いま直樹さんに何をしようとしたんですか!?」
手を伸ばしたネーベル(偽)とでも呼ぼうか、その少女に厄病神が向き合う。ネーベル(偽)は自分の邪魔をした幽霊など気にしないかのように俺を見るだけだ。
「そ、そうじゃ! 何をしておるか!?」
玉藻も加勢を開始する。俺は今そんなにとんでもないことをされそうになったのか。
「……お前らは誰だ? 妖狐と……幽霊?」
「幽霊じゃありません! 小夜です!」
いや、幽霊に変わりはないのでは?
「面倒くさいことになったな……。まあいいか。全員やってしまおう」
「何をだよ。お前誰だ」
「私が? そうだな、通りすがりの超能力者、というのはどうだ?」
いやどうだって訊かれても。
「そしてこれからやるのは人殺しでも誘拐でもない、だから抵抗するな」
その説明でハイと言える奴がいるのか訊いてみたいもんだ。
「駄目か」
「駄目だ!」
「直樹さん、この方は誰なんですか……?」
知らない知らない。全く分からない。
「じゃあなんでいきなり襲ってくるのじゃ!?」
俺の責任ではない。
「今度も邪魔が入ったか。ああ分かってる。一日一回だけだろ。帰るか」
ブツブツと独り言を言ったかと思うと、踵を返して立ち去っていってしまった。一体なんだったんだ。
「なんなのじゃあやつは!?」
数分後、俺達は死神を迎えにいく用事を諦めて安全な我が家へ帰ることにし、ついでに俺は玉藻から猛抗議を受けていた。
「だから俺にも分からないんだって」
「分からないで済むか! 殺されるかと思ったぞ!」
「まあまあ玉藻さん、誰も怪我をしていないんですから。ね? 忘れてしまいましょう」
「……小夜、何か怪しいような」
「そ、そんなことないですよ?」
そう。俺と厄病神がさっきの人物を見なかったことにしようとしているのには理由がある。ネーベルの執事の高橋さんや神楽に散々夜中出歩くなと言われていたことをついさっき思い出したのだ。
「神楽さんにばれたらきっと怒られますね……」
「そうだぞ。さっきの事件はトップシークレットだ」
「なんじゃお主ら、ひそひそ話などして」
「なんでもないぞ! そうだ玉藻、帰ったらTVゲームやってみるか?」
「本当か!?」
「ああ本当だ! なんならいろいろ――」
「やあ直樹氏! 遅くなってしまってすまないね!」
夜8時を回ってから死神を連れた神楽が家を訪れた。
「黄泉さん、それ、どうしたんですか……?」
「なんでもない。傷はもう塞がっている」
死神は体の至るところに包帯や湿布が貼ってあり、これから入院ですかと尋ねたくなるくらい怪我人の格好をしていた。
「いったい何をしたらそんなふうになるのじゃ」
「ちょっとした事故だよ! 黄泉君が階段から転がり落ちてしまってね! すまなかった!」
案外と間抜けなんだな。
「…………そうかもしれないな」
意外だ。あっさり認めた。
「そうそう直樹氏! 僕の言う通り夜間外出は自粛していたかい!?」
「夜中に出かける用なんて元からないしな」
「小夜君、どうだったかね!?」
「えっ!? えっと、その、あの、は、はい、してません!」
つまり過ぎだ。嘘をついていますと言っているようなものではないか。
「小夜君が言うなら間違いないね! よかったよかった!」
全幅の信頼を置かれていた!
「お主ら、ぼけたか? さっき……」
「わあー!? たたた玉藻さん、今日はもう寝ましょう!」
「わらわはまだ眠くなあぁぁぁぁぁぁ……!」
眠くない、という声にドップラー効果がかかる程の勢いで玉藻は退場した。
「……直樹氏、外で誰かに会ったかい?」
流石に嘘はお見通しか。
「会ったらまずかったのか?」
「まずいな」
神様連中2人がこうも警戒する事態ってのはなんなんだ。
「最悪君の人生が終焉を迎えるね。まあ生きているようだし今回はよしとしよう!」
「では送ってくれて感謝する。また明日」
「うむ! ではさらばだ!」
「俺も寝る。ではな」
「…………」
生きるって、奇跡の結晶なんだな。
あの少女は何者だったのか。
俺が招かれた館のお嬢様と何か関係があるのか。
あるとすればどのようなものなのか。
考えることは山積みだ。正直言ってかなり危険な場所に首を突っ込んでいるような気がするが、ここまできたら何が来ようと変わらないだろう。
ひとまず明日になってからだ。俺はベッドに入り、意識を閉じた。
直「殺されるかと思った」
桜「けっ、主人公サマはそうそう死なないのさ!」
藤「完全にひがみ入ってるわね……」
ネ「新しく出てきちゃって、ごめんなさい……」
辻「いいんですよ。新キャラは最初が最大の見せ場ですから」
直「相変わらずさらっと毒を……」
というわけで第54話でした。
誰がどう見ても前回切る位置を間違えました。
そして相変わらずのチキンレース更新。
無理! って思ったら暫く休むかもしれません。
あと、本編ですらこんな調子なので番外編はマジもうちょっと待って下さい。
ではでは、だいぶ毎日更新のペースに飲み込まれてきたガラスの靴でしたー。