第49話:厄神様はかく逃げ出し
どうもこんにちは。
ガラスの靴です。
この小説を一言で表せと尋ねれば「毎日更新」か「新キャララッシュ」か「時間の無駄」のどれかにあたると思います。
さて、今日は瞳の日だそうです。
皆様も普段はパソコンなどで酷使している目を休ませてみるといいかもしれません。
ここで言った所で説得力の欠片もありませんが。
ではいつの間にやら第49話をどうぞ。
「中間試験も終了し、答案も返却される頃です。それぞれの結果をしっかり見つめて今後の課題として下さい」
朝のHR。普段は聞き流している担任の言葉がやたらと心の奥まで突き刺さるのは何故だろう。
「筋肉痛、教科書忘れ、試験の時間割の写し間違い、最後は腹痛。ここまでくると自業自得というよりもはや災難ね」
「結局、一日たりともまともに受けられなかったのか」
「狭山、そんなに気を落とすことはない。授業はしっかりと受けていたのだろう。ならば試験が駄目でも確実に自分の力になっている筈だ」
「そうだな。たとえ全ての教科で何故か名前を書き忘れて教師に呼ばれていたとしても大丈夫だ」
「もうほっといてください……」
「あ、あのー……直樹さん」
「…………」
「そ、その、すみませんでした……」
「…………?」
「またわたしのせいで迷惑をかけてしまって……」
いや待て。
「……こ、今度は大切な……試験まで……」
何度言っても分からん奴め。
「待て。お前が原因だと誰が決めた。仮にそうだとしても俺が気を付けていれば防げたものがほとんどだ。だから何でもかんでも自分一人の責任だと思うな」
「……直樹さん」
「よし。次から『わたしのせい』とか言う度に一発殴るからな」
「え? え?」
「何度も言わせるな。お前が勝手に思い詰めて勝手に離れていったら必ず探し出し――」
「やあやあ直樹氏! どうやら今回の結果は散々なようだね!」
「てやあぁぁぁぁぁ!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!?」
「いきなり何をするんだい!? 危うく三途の川の水流の速さを計測してしまうところだったよ!?」
「黙れ! 久しぶりに出てきたと思ったら話の腰を折った上に人のトラウマになりそうなことをえぐりおってからに! 死神も来るな! お前を呼んだ訳じゃない!」
「そうか」
死神はまた席へ戻っていった。なんなんだ。
「直樹氏は気にしているのかな!?」
「意外とダメージが大きいようですね。過敏に反応しています」
「そこ! 煩い! 成績悪くて悪かったな!」
「はっはっは! 心配することはないさ! 直樹氏の成績が本当に悪いかはもうじき分かるよ!」
「どういう意味だ?」
「それは秘密だよ! ではさらば!」
「お邪魔しました」
本当に何しに来たんだ。
「ですね……」
で、放課後。
「今日は久し振りの部活です。今までのブランクをしっかりと取り戻して下さい」
中間試験が終わって初の部活はいつも以上に気合いが入っていた。主に部長が。
「かったるいわねー。直樹、今日の合奏出なくていい?」
「いいわけあるか。お前のソロだろ」
「なんなら私が吹きましょうか?」
「お前な、トロンボーンでトランペットのソロを吹くのに許可なんて出せると――」
「よろしく」
「待て」
部員は相変わらずのだらけっぷりだ。お前ら少しは真面目にやってくれ。
「でもセンパイ、私が真面目にやってたら気持ち悪くないですか?」
「気持ち悪くない! やれ!」
「あー、狭山先輩が満月ちゃんをいじめてるー」
なんなんだ。俺の方が苛められてる気分だ。
「もういい。やる気なくした。桜乃弟、お前指揮やれ」
「えぇーーー!? 意味わかんないんですけど!?」
「意味なんてない。なんとなくだ」
「理不尽だーーー!!」
絶叫する桜乃弟を余所にトロンボーンの練習を再開する。
「あんたなに職務放棄してるのよ」
「今日は指揮やったら多分キレるぞ。いいのか?」
「……拓斗! 早く準備しろ!」
「拓斗くん! 急いで!」
「わ、わかった!」
途端に慌ただしくなる高2トリオ。そんなに嫌か。
「あんたがキレたら部活崩壊するからね」
「人を核兵器みたいに言うな。俺はただなんで曲が上手く聴こえないかを語るだけだろ」
「後輩泣かせながらね」
……練習するかな。
「直樹さん、怒ると恐いんですか?」
「らしいな。自分ではそんなつもりはないんだが」
なんとなくわかります、と言う厄病神は取り敢えず殴っておいた。
「合奏でーす」
暫くして桜乃弟が空き教室まで呼びに来た。藤阪と辻にも声をかける。
「暫くしたら行くわ」
「勝手にやってろ」
「……狭山先輩、僕には無理です……」
頑張れ。俺にも無理だ。
「ほれ、行くぞ!」
「煩いわね。言われなくても行くってば」
「せっかちですねぇー」
お前らが遅すぎなんだよ。
音楽室へ入ると、フルートの辺りから氷点下の視線が突き刺さる。
「……部長、怒ってますねー」
「無断で桜乃弟に指揮やらせたからな……」
桜乃弟には来年の指揮者として今回の演奏会でも1曲任せてある。桜乃弟が指揮をするということは即ちその1曲を合奏でやるということなのだが、部活が始まる時には俺が指揮の曲を合奏すると言っていたので、余計な混乱を生じさせたということだろう。
「ま、どうせ放っておいてもあとでグチグチ言われるんでしょうから気にしなくていいんじゃないですかー?」
「お前、結構はっきり言うのな……」
「それより、こうしてセンパイと並んで吹くのも久し振りですねー」
桜乃弟が指揮をする時は大抵俺が休む時だからな。言われてみればその通りだ。
「合奏でトロンボーンを吹く直樹さんなんて全然見てません」
見せ物じゃないからな。うろちょろするなら帰れ。
「……わかりました……」
厄病神は本当に帰ってしまった。珍しいな。
「――ここはホルンがしっかり出してください。あとサックスが少し遅れます」
「はい」
桜乃弟はきちんと指導出来ている。この様子なら来年もなんとかなるだろう。
「それでは33小節目からいきます。1、2、3、」
「だぁーーー!!」
――ぶぷうぅぅぅぅぅぅ!!!
「えぇーーー!? 何やってんすかー!?」
合図に合わせて厄病神が謎の掛け声を発しながら桜乃弟の後ろの壁をすり抜けてきたのである。その現象を見ることが出来た部員は俺と市原だけであり、市原は何が起きても笑わないと言わんばかりのポーカーフェイスなため、吹き出したのは俺一人となった。
「ゲホッ、ゴホッ! す、すまん、咳き込んだ」
「センパイ、咳き込んだなんて勢いじゃなかったですよー」
「咳き込んだんだ! ちょっと外出てくる!」
廊下に飛び出すと、既に厄病神の姿はなかった。
「あの馬鹿め……」
恐らく逃げたのだろう。あんな掛け声どこで覚えたのか気になるが、今は見つけ出して殴る方が先だ。
「すまん、帰る」
「帰るって、ちょっとぉ!? 狭山先輩、何してるんですか!?」
桜乃弟、あとは任せた。
「どこだ……」
駅前を探し歩く。さっき家には電話をして厄病神が帰ったら縛りつけて連絡しろと言ってある。なんとしてでも合奏中に恥をかかせてくれた礼をせねば。
「いない……」
浮いてる分少しは見つけやすいかと思ったが、いないのか見えないのかそれらしき人物は見当たらなかった。
「……阿呆らし。帰るか」
30分程駅前をうろうろしたが見つからない。そのうち飽きてきた。
「死神か? 俺も今から帰る――なに? いる?」
家に電話すると厄病神は既に保護されているらしい。つまり全くの無駄骨だった訳だ。
「それじゃあ今から帰るぞ」
携帯電話をしまって引き返そうと振り返る。
――パサッ。
振り返ると真っ暗闇だった。
「……は?」
「失礼」
突然誰かに体を抱えられ、気付けば車に押し込まれていた。
「……あー……」
――バタン。ブロロロ……
つまるところ、
「誘拐?」
なんてことだ。
厄「藤阪さんって、トランペットだったんですね」
藤「……誰?」
直「藤阪だけ担当楽器を言い忘れてた作者が慌てて今回書き足したらしい」
藤「……だから誰?」
厄「あ、わたし小夜って言います。よろしくお願いしますね!」
藤「……そうじゃなくって……」
はい。というわけで意味の分からない終わり方でした。
意味の分からないまま次回へ続きます。
あと、見れば分かるかもしれませんがあとがきに出演する人々は本編の世界観から切り離されているのでそういうのが嫌いな方は御一報下さい。
そういうのが大好きな方も御一報下さい。
どうでもいい方も御一報下さい。
なんでもいいので御一報下さい。