第45話:厄神様はかく観賞し
遂に負けました。
何に負けたのかはタイトルを見て察して下さい。
ま、ガリレオのタイトルみたいなノリで読んで下さい。作者もどうやって読むか分からないけど。
「こんなタイトルならいいんじゃない?」とかあったら教えて下さい。いやマジで。
さて、今日は1927年、上野〜浅草間に日本初の地下鉄(今の銀座線)が開通した地下鉄記念日。
地下鉄という冷静に考えれば非常に不可思議な存在をたまには真剣に考えてみるのもいいかもしれません。
あ、あと「かく過ごせり」更新しました。
今度は死神のお話です。
では、藤阪のお話の続きをどうぞー。
「どこへ行こうかしら……」
「決めてなかったのかよ……」
逃げるように藤阪家を後にしてから数分後、この一日支配者は早速行き詰まっているようだった。
「……何もないなら帰るぞ」
「わ、ちょっと! 何言ってんのよ! 帰っていいなんて一言も言ってないじゃない!」
なら早く決めてくれ。駅前にでも行くか?
「……ん、そうね。駅前に行くわよ!」
これじゃあどっちが決めてるのか分からんな。
「何してるの! 早くついてきなさい!」
「うわ! おい! 引っ張るな!」
俺は警察に連行される容疑者よろしく手首を捕まれ、そのまま駅前へ引っ張られていった。
「どこにいこうかしらね」
駅前について再び迷い始める。
「いつかみたいにデパートにでも行くか?」
「別に買うものはないわよ」
それじゃあ映画にでも行くか。暇も潰れて丁度いいだろ。
「……え、映画?」
「嫌いか?」
「い、いや、そうじゃないけど……。あーもう分かったわよ! 行けばいいんでしょ行けば!」
なんなんだ。
「ほら行くわよ!」
「だから引っ張るなってのー!」
「さて、何か見たいやつとかあるか?」
映画館について上映予定を確かめる。といっても上映している作品は入り口の上にデカデカと看板があるが。少年漫画の映画版、ラブロマンス、ホラー、SF、アクションといったところか。
「ほら、どれにするんだ?」
「え……う、うん……。あ、あれ……」
藤阪が指差したのは右から2、3番目くらい。
「お前ってホラー好きだったのか」
「……え?」
「それじゃあ買ってくるから待ってろよ」
「ちょ、ちょっと! 違うわよ!」
違うのか。ということはまさかラブロマンス?
「そっちの方が遥かに似合わないぞ。まあいいか、人の趣味は見かけによらな――」
「……もういいわ。ホラー買ってきなさい」
「ら……ラジャー……」
後ろから回し蹴りを受けボロボロになりながらチケット売り場へ向かう。
「直樹さん、あれでは藤阪さんがかわいそうです」
「なんでだ。ちょっと間違えただけだろ」
俺がそう答えると変な顔をされた。何か文句でもあるのか。
「お前って、映画見たことあるのか?」
「ないです。お金を払わないと見られないみたいですし」
いや、幽霊なら問題ないだろ。
「だからわたしは外にいますね。楽しんできてください」
「…………」
チケット売り場に着く。
「すいません、『最期の夜〜ジャック氏の後悔 第一部・とある知人の奇妙な告白』3枚下さい」
「はい」
代金を渡し、チケットを受け取る。
「直樹さん……?」
「タイトル長いな。しかも色々詰め込み過ぎでどんな話か分からないし」
「い、いえ、その……3枚……」
「お前の分だ。これで中に入れるだろ」
「……ありがとうございます……」
幽霊が入口に居座る映画館なんて縁起が悪いにも程があるからな。それだけだ。
「……タイトル長いわね」
「俺も思った。ま、元々暇潰しなんだ。あまり内容に期待しない方がいいだろ」
3人で中に入り、指定されている席に座る。館内中央の席を3つ連続で取れた時に予想はしていたが、案の定館内はガラガラだった。
「やっぱりタイトルが長すぎたんだな……」
「ほとんど人がいませんね……」
「買っちゃったんだし、見るだけ見ましょ。どうせあんたの奢りだし。あ、ポップコーン買ってきて」
なんてことだ。
映画が終わり、幕が降りる。
「…………」
「とってもかわいそうでした……」
「ホラーの欠片もなかったわね……」
映画はジャックの隣人シェリーが死んだところから始まり、シェリーの霊に出会ったジャックは次第にシェリーに惹かれていくものの、生者と死者との愛はやがてシェリーの消滅とともに儚く消えていくという、あらすじだけ聞くと訳の分からない映画だが、実際訳の分からない流れでしかしクライマックスの演出が意外と涙を誘う、何とかチケット代を払って見る価値もあったと思われるような作品だった。
「ま、いいでしょ。楽しかったし」
「シェリーさん……」
全く正反対の感想だな。同じ霊として同情するのはいいがそんな落ち込むことないだろ。
「次はどうする。昼食でも食べに行くか?」
どうせまた考えてないんだろうしな。よく考えたら藤阪の家を出てからポップコーンしか食べていない。
「……う、うん」
そうして来たのは駅前にあるファミレス。碧海と来たのもここだったな。
「藤阪、お前は何にする?」
「オムライス」
オムライスのオムってなんなんだろうな。やっぱり卵のことか?
「知らないわよ。ちょうどいいわ。これからどうするか考えるわよ」
「考えるって言ったって、もういい時間だぞ」
「……そうね。じゃあ近場でひとつくらいにしましょ」
注文した料理を食べながら2人で考える。
「そうだ、カラオケなんてどうだ?」
「騒々しいからパス」
「ゲームセンター」
「却下」
「温泉卓球」
「……あんた、適当になってない?」
思い付かないんだよ。
「……そうね。それじゃ、ウィンドウショッピングでもしましょうか」
「さっき買うものはないとか言ってなかったか?」
「見るだけよ。ほら、伝票」
……財布が刻々と氷河期に近づいていく。
今日という日が終わるのが先か所持金が尽きるのが先かという不吉な2択を考えながら俺はやたらにこやかな店員に金を渡した。
という訳で、まさかの前中後編となりました。
一応ラブコメの主人公たちは公平に扱うことを心がけてはいるのですが、ネタがうまく決まらずグダグダと書いていたらこんなに長く………。
ま、まあ、とりあえず次回をお楽しみに〜!