第42話:厄神様はかく看護し
あっぶねー!
あ、そこの人、何があったか聞いてくれますか。
いやね、ほら、この小説って毎日更新が命じゃないですか。
それなのに今日、更新するのをすっかり忘れてたんですよー!
HAHAHA! こいつはいけねーや!
………ごめんなさい。今日はちょっと珍しく外出したんで更新しそびれてました………。
で、では!
ジェームズ・バリー作『ピーターパン』がロンドンで初演された「ピーターパンの日」!
そんな12月27日、第42話をどうぞー!
「37度9分。微熱より少し高いと言ったところか」
「幽霊の風邪も人間に移るんじゃの」
「とりあえず、直樹さんは横になっていてください」
ここは普段のノリで治っていて欲しかったな。
厄病神が風邪をひいた翌日。前回から引き続き俺は病床に臥していた。
「幸い風邪のためのグッズは大量に残っている。遠慮なく寝ていろ」
くそ。なんてことだ。
「それじゃあ、お粥を作りましょうか。玉藻さん、手伝ってくれますか?」
「うむ! まかせろ!」
また鍋をひっくり返したら容赦しないぞ。
「お前は大人しく寝ていろ。直に料理が出来る」
「お前は学校行けよ……。俺の看病する意味もない……ってか、死神が枕元に立っていると治るものも治らない気がするんだが」
「心外だな。俺が学校に行ったら、アレを誰にやらせる気なのだ」
「……そうだったな……」
アレとは、まあ、昨日に遡る。
「た、玉藻さん、わわ、わたしひとりでできますから……!」
「大丈夫じゃ。ほれ、脱げ脱げ」
「きゃあ〜〜〜〜〜〜!!」
「……中に入ってみたいのか」
「変なことばっか言うと殺すぞ……」
風邪をひいた病人は汗をかく。汗は拭かないといけない。とすると厄病神の体を拭けるのは当然玉藻しかおらず。
「お前は小夜や玉藻に自分の肢体を余すところなく拭かせたいのか。なら俺は行くとしよう」
「今すぐ絞め殺すぞ。いいから残れ。大体俺は自分で拭くからいい」
どっちにしたって気持ち悪い。他人に自分の体をすすんでさらけ出そうとする奴はボディビルダーか露出狂だ。
「直樹さん、おかゆができましたよ」
「ああ。ありがとう」
「ほれ、口を開けんか」
……またやるのか。
「いいから口を開けんか。ほれ」
「だから1人で……あつーーー!!」
「た、玉藻さん! そんな一気に流し込んでは熱いです!」
「次は俺が行こう。あーん」
「遊ぶなーーー!!」
屈辱的な食事を与えられた俺はとっとと寝て治してしまうことにした。いや、お粥は美味かったが。
「たまご酒、というのがあるな」
「お酒……ですか?」
昼飯を食べ終わり、4人全員が俺の部屋にいるという非常に暑苦しい状況の中死神が人のパソコンで勝手にネット検索をしていた。
「これだ。風邪で消耗するビタミン類、蛋白質、糖分を補い、酒を使っているため体も温まって寝付きも良くなるらしい」
「おお。やはり酒は百薬の長じゃな!」
お前はオッサンか。
「俺は未成年だぞ……。酒なんて飲んでられるか……」
「心配ない。最初に酒を火にかけてアルコールを飛ばすようだ」
「それで、作り方は……」
「今プリントアウトする。材料は酒と卵と砂糖だけでいいそうだ」
意外と簡単なんだな。
「お主、なんの玉子がいいのじゃ」
「退場」
魚類込みの選択肢は危険すぎる。
「お酒ってあるんですか?」
リビングの床下収納に日本酒が入ってるぞ。
「何故即答できる」
……よく消毒に使うからな。
たまご酒の作り方。
1.酒1カップを煮立ててアルコールを良く飛ばし、冷ます。
2.よく溶いた卵1個に砂糖大さじ3杯を混ぜ、先程の酒を少しずつ加える。
3.弱火で温めてとろみがついたら完成。
「本当に簡単なんだな」
「はい。うまくできたかどうかはわかりませんけど………」
ポタージュのような外見だが、仄かな酒の香りが漂っている。
――ごく。
「……ど、どうでした……?」
「……美味い……」
これで風邪が治るなら何杯でも飲みたいな。
「ダメです! お薬は量が大切なんです!」
わかったわかった。
「あとは大人しく寝ていろ」
「そうじゃな。わらわたちは下におるから、容態が急変したら諦めるんじゃな」
せめて呼んでくれとかにしろよ。
「それじゃあ直樹さん、ゆっくり寝てて下さいね」
そうだな。俺は厄病神の言う通りに寝ることにした。
「……樹さん、寝ちゃってますか……?」
誰かの声が聞こえる。
「……直樹さん、早く良くなってくださいね」
厄病神か……?
「やっぱり、わたし、ダメですよね……。いっつも直樹さんに迷惑ばかりかけて……」
そんなことあるか。
「今回だって、直樹さんを休ませてしまった上に、風邪までうつしてしまって」
…………。
「やっぱり、わたしはいない方が――」
「馬鹿」
「――え?」
「お前がいなくなったら、今までお前に奪われてきた俺の幸運は誰が返してくれるんだ。俺はお前に投資してるんだぞ。勝手に夜逃げしてもらっちゃ困る」
「あ、あれ……? 直樹さん、起きて……?」
寝言だ。
「……は、はあ……」
もうお前だけの問題じゃないんだ。自分ひとりで諦めるな。
「だから、軽々しくいなくなるとか言うなよ。もしも勝手にいなくなったら、草の根分けてでも探し出してやるからな」
「……はい……。ありがとうございます……」
目を瞑ったままなので分からないが、誰かが立ち上がる気配がした。おそらく部屋を出るのだろう。
「……そうだ、直樹さん」
部屋を出る直前に、その気配が振り返った。
「わたし、直樹さんの調子が出るように、早く治しましたよ?」
「…………」
「そ、それじゃあ、おやすみなさいっ」
「何かあったか。小夜もお前も顔が赤いぞ」
……寝たふりはいかんね、全く。
「馬鹿! 俺一人で拭けるっつーの! なんで2人がかりなんだよ!」
「いや」
「なんとなくじゃ」
「なんとなくで病人いたぶんなぁーーーーー!!」
死神に身ぐるみを剥がされ、玉藻に拭かれるという恥辱プレイを味わった俺は夕飯前には熱も下がり、少しフラフラするものの歩ける程度にはなっていた。
「まだ薬の力かもしれない。あまり興奮したりするなよ」
「誰のせいで興奮してると思ってるんだ……」
「はい。直樹さん、おかゆです」
厄病神に出されたお粥は俺が昨日作ったのとはまた違うものだった。
「やっぱり一種類じゃ飽きちゃいますから……。おかわりもありますよ」
「あ、ああ……ありがとう……」
なんだか至れり尽くせりだな。
「あ、そういえば、ポストにプリントが入ってましたよ」
「プリント……学校のか?」
「はい。きっと昨日と今日配られた分ですね」
死神が持ってきたファイルにはプリントと手紙が入っていた。
『風邪よくなりなさいよ 藤阪』
『早く学校来いよ 桜乃』
「……あいつら……」
「いい友を持ったな」
そうかもしれないな。
「……ん?」
「どうしたのじゃ」
プリントを見ていると、同じ種類のが3枚入っていることがある。どれも課題プリントだ。
「あ、あの、直樹さん……」
厄病神がさっきの手紙を指差す。裏にも何か書いてあるようだ。
『暇だろうから課題よろしく 藤阪&桜乃』
「…………」
「いい友を持ったな」
「ああそうかもしれないな!?」
「な、直樹さん……」
「ばかじゃの」
そうだな、あいつらに普通の友情を期待した俺が間違ってたな。
たまには風邪もひいてみるもんだという思いは塵と消えていったのであった。
どうもこんにちは。
何かミスリードという言葉の意味を根本的に間違って捉えていたガラスの靴です。
昨日とある感想を頂いたのですが、読者様を混乱させるような記述が多々あったことをお詫びさせて頂きます。
今度からは余計な事をしないで死神とか神様とかに解説役でもやってもらうことにします。
混乱させてしまった設定に関しては近い内に説明用の話でも書くので適当に納得して頂けると幸いです。
まあとりあえず次回は普通の話を。
ではでは〜。