第33話:厄神様はかく祝えり
どうもこんにちは!
諸事情によりかなりテンションの上がっているガラスの靴です!
今回は退院祝い!
もちろんただ祝って終わるわけありません!
ではどうぞー!
「えー、では、狭山の退院を祝して、かんぱーい!」
――かんぱぁーーい!
「お前ら、騒ぎたいだけだろ……」
検査入院を全て異常なしで通過し、首をかしげた医者に退院許可を出されたのが翌日。
そしてそのさらに翌日の今日、土曜の半日授業を使った俺の退院祝いと称してファミレスでパーティーが開かれることとなった。
「あんたのためにわざわざ来てやったんだから、感謝しなさい」
そうだな、手に持ったフライドポテトがなければもっと素直に感謝できたな。
「みんなー! もっと騒げぇー!」
他の客の迷惑になるだろ。止めんか。
「大丈夫だ。今日は神が貸しきった」
「そうとも! 直樹氏、安心して騒ぎたまえ!」
黙れ。俺は騒いだりはせん。
「わ、私も来てよかったのだろうか………」
碧海、心配はいらない。むしろお前みたいな奴がもっと来て欲しかった。
「センパーイ! こっち向いて下さいー!」
「記念撮影でもいかがですか」
俺は動物園の珍獣ではない。
「狭山くん、退院おめでとう」
ありがとう。普通の言葉がとても嬉しい。
「狭山先輩、狭山先輩」
「どうした」
「狭山先輩に退院祝いを買ってきましたー!」
藤阪妹に手渡されたのは花束。
「………あ、ああ、ありがとう………」
「わたしと拓斗くんと満月ちゃんで選んだんですよ」
「ば、ばかお前!」
「ばらすな阿呆ー!」
……お前ら……。
「い、いやその、深い意味はないです! 別に僕何も選んでないし! 選んだのは主に辻だし!」
「こら拓斗! なにをばらしているかキサマ!」
「辻が……」
「や、こ、後輩代表ですから! 深い意味はないですよー!」
ああ、ありがとう。
「……あ、改めて言われると照れますねー……」
「直樹氏! 今度はこっちだ!」
「なんだ」
神楽に呼ばれて向かったテーブルには人外ズと市原、碧海がいた。
「厄病神と話して問題ない連中か」
「その通り! まずは退院おめでとう!」
「おめでとうございます!」
「おめでとう」
「右に同じ」
「右に同じです」
「右に同じじゃ」
「……お前らな……」
「まあまあ! おかげで友情を再認識できただろう!?」
煩い。大して縁のない奴でもトラックに轢かれたと聞けば俺だって見舞いくらい行く。
「君もつくづく強情だ! それが君の良いところだよ!」
「というわけで、俺達で用意した退院祝いだ」
「あ、ありがとう……?」
渡されたのはポケットゲーム。起動すると落ち物ゲームだった。
「これで入院中も退屈しませんね」
「お前ら退院祝いの意味分かってるか? なあ?」
「まあアレは冗談だ。こっちが本命だ、受け取って欲しい」
「みんなで選びました!」
碧海と厄病神が渡してきたのは紅茶の詰合せ。これは重宝するかもしれない。
「おう狭山! 今度はこっちだ!」
今度は桜乃がやってきた。俺にも少しは食べさせて欲しいんだが。
「ほいほい! 俺たちのが終わってからな!」
「…………」
「…………」
桜乃が連れて来たテーブルには藤阪と松崎が。沈黙が肌に突き刺さりそうだ。
(おい! なんであの2人を同じテーブルに座らせてるんだ!)
(仕方がないだろ! 辻ちゃんからはノーサンキューされたし、神楽たちのテーブルはなんかしらんがあのメンバーじゃないと駄目だって言われたんだよ!)
2人に聞こえないように怒鳴りあう俺達。
「……直樹、これ。退院祝い」
「お、おう! ありがとう! 開けてもいいか!?」
「いいわよ」
藤阪から受け取った包みを開けると……指揮棒?
「あ、これ……」
「あんた前に欲しがってたじゃない。金がないとか言って。指揮棒なんて分かんなかったから適当に選んできたけど」
そこに入っていたのは、以前振り心地が良かったので買おうと思ったが手持ちがなくて諦めた指揮棒だった。そのときは藤阪も一緒にいたのだが、まさか覚えていたとは思わなかった。
「藤阪さんが何を送ればいいのかわからないと私に泣き付いてきたから、欲しがっていたものはないか聞いたらそれになったのよ。もし良かったら使って頂戴」
「誰が泣きついたのよ! あんたの方から退院祝いの話し持ち出してきたんでしょ!!」
「ま、まあまあ! 狭山、どんな感じだ?」
しっくりくる。ありがとう。
「えー、ではここで、第一回壮絶! ビンゴ大会ぃーーー!!」
……待て。
「お前もしや俺の退院なんて関係なくなってないか? ただ単に馬鹿騒ぎがしたいだけだろ?」
「な、何を言うか狭山。 オレは狭山のことを思ってだな……」
なら目を見て話せ。
「さて参加者にお配りしましたのは25マスのビンゴ用紙!」
話を聞け。
「そして番号くじをひくのは我らが狭山直樹!」
「待て待て待て! そんな話全然聞いてないぞ!」
「言ってないからな」
なんてことだ。
「ほらー! 寒いこと言ってないでとっとと始めなさーい!」
「商品はセンパイのくじにかかっているんですからねー! イカサマしたらぶん殴りますよー!」
なんて奴らだ。もう全員スタンバイ完了か。
「それでは第一回戦の商品はこちら!!」
――ダラララララララ……!!
どこかからスネアの音がする。どこから流したこんなもん。
「あそこで普通に演奏してる」
「なんで僕がこんなこと……」
……桜乃弟も大変だ。
――ダラララララ……ジャン!!
「さあ! 一回戦の賞品はこちら!『狭山直樹の一回食事ご馳走券』!!」
「待った」
――いえぇーーーーー!!
新手のいじめではないかと思うね。
「死神、わらわの分もよこすのじゃ!」
おい玉藻、どさくさに紛れてなに巨大化してやがる。
「なに、誰にも気付かれはせぬ!」
既に俺に気付かれてるじゃないか。
「それでは狭山! これを回して出てきた球に書いてある数字を読んでくれ!」
「なんで俺の奢りが賞品の試合を俺が進めなければならんのだ……」
くじを回す。
「……ええと、46」
「ちょっとー! なに意味わかんない数字出してんのよー!」
「これだからセンパイはー!」
かなり腹が立つ。ここでやめたらどんなに心地良いだろう。
「次行くぞ次。……21」
「小夜、当たったぞ」
「ありがとうございます!」
小夜のビンゴは死神が持ってやっているようだ。
「68」
「あ、当たったぞ……」
「中々当たらないね!! 直樹氏、頼んだよ!!」
「3」
「……当たらないわね……」
「よっしゃ、まずひとつ!」
「57」
「何故あたらぬのじゃー!」
「当たりました」
「――というわけで、一回戦勝者は碧海凛ー!」
「い、いいのだろうか……」
お前なら安心だ。そろそろ前のお礼もしたかったところだしな。
「では続いて二回戦!!」
「ストーップ!」
「なんだ狭山。文句でもあるのか」
「ありますとも!! いい加減にしないと殺すぞ! 今度の賞品はなんだ!?」
「温泉旅行優待券」
純粋に豪華だった!
「ちなみにスポンサーは神楽! それでは狭山、ゴー!!」
「わかったよ……」
「やったぁ! あがりました!」
「そうだな。ビンゴだ」
二回戦勝者は死神となった。というか厄病神だが。
「なんだ、三途川が勝者か。ほらよ。えーと、4人まで誘えるぞ」
「感謝する」
「……で、三回戦は?」
「もちろん!!」
もうどうだっていいです。
「そして三回戦の商品はなんと!!『狭山直樹一日絶対服従券』!!」
「な……!」
「え……?」
「はぁーーーーーーー!?」
「ちょっと響! なんなのよそれ!」
「いや、やっぱりひとつくらいふざけた商品があったほうが面白いかな、と。……何かおかしかったか?」
真顔で尋ねるな確信犯。
「こ、これは……」
「面白い! 直樹氏、覚悟したまえ!」
「……絶対服従……いけます……」
……誰が勝ってもまずい気がする。
「それではぁ……スタートォ!!」
開始から3分。現在リーチは2名。
「満月、ここは大人しく引き下がっておきなさい」
「藤阪センパイこそ、少し大人の態度を取って欲しいですねー」
どっちに転がってもその先に待つのは俺の破滅しかないだろう。
「……いくぞ」
くじを回す。出てきた数字は――
「33」
「やったぁー! ビンゴー!」
辻があがったらしい。
「それでは、勝者は辻――」
「あたしもあがったわよ」
……なんだと?
「……マジで?」
「ほら、ここ」
確かにあがっている。
「え、えー、では、勝者は辻満月と藤阪葵ということで………」
「待て待て待て」
「この場合どうなるのよ」
「しょうがないから、狭山には2日間やってもらうか」
なんてことだ。
「……まあいいわ。今日は遅いから今度頼むわよ」
「そうですねー。いつにするかはあとで決めましょー」
「……マジか……」
「それでは、これにて狭山の退院祝いパーティー閉幕!!」
かなりヤバイ結果を残して俺の「退院祝い」は終了した。なんてことだ。
という訳で主人公が相当酷い目に遭った退院祝いでした。
はっきり「祝う」よりもこういうことになっちゃいませんか?
ならないですね。
そしてフラグ立てまくりのビンゴゲームでした。
賞品はいつか実現すると思います。
掲載中の話を一斉修正しました。
誤字脱字意味不明が減っていると思います。
話に変更はないので気にならない人はわざわざ見る必要もないと思います。
次回は事故に遭った時に真っ先に駆けつける人がやっと到着する予定です。