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第32話:厄神様はかく見舞いき

勘助ぇーーーーー!!

とうとう大河ドラマも終わってしまいましたね。

いよいよ年末という感じです。

ではそんな現実時間と縁を切った第32話をどうぞ。

「……さん! …お…さ…!」

 空が赤い。

 夕焼けにしては少し赤が強いな。

「し…かりし……! い…救…車……!」

「……い! あ…トラ……逃げ……ぞ!」

「ナン……押さ……! 今……こっち……先……!」

「な……! なお……ん!」

 はは、何言ってるか分からんな。

 駄目だ。眠い。おやすみ。

 

 

 気が付いたとき、最初に目に映ったのは白い天井だった。

「気がついたかね」

 声のした方向に首を傾けると、白衣を着たオッサンが立っていた。

「君は昨日の夕方、トラックに撥ねられたんだ。覚えているかね?」

 あれ、トラックだったのか。

「すぐさま救急車で病院に運ばれたので大事には到らなかったが、全身を強く打ち付けてしまったために若干後遺症が出てしまった。右手は動くかね」

 右手に意識を集中させる。

「動くぞ」

「…………」

 試しに右手で顔を触ってみた。あちこちに何か貼ってある。

「……左手は動くかね」

 左手に意識を集中させる。

「動くな」

「…………」

 試しに固まっている医者に左手を振ってみる。反応なし。

「……ちょ、ちょっと待っていてくれ」

 医者はそのまま部屋を出て行ってしまった。なんなんだ。

「直樹さん!」

「うお!?」

 医者が出て行ったと思った瞬間壁から厄病神がすり抜けてきた。心臓に悪いからやめてくれ。

「無事でよかった……!」

 目いっぱいに涙を浮かべる厄病神。おそらく感動の対面なのだろうが今ひとつ実感が湧かない。

「あー……大丈夫か?」

「何がですかっ!」

 泣きじゃくってるだろ。

「……何がなんだかさっぱり分からん。俺はどうなったんだ?」

「ト、トラックにひかれて、それで、救急車で病院に……」

 そこまではさっきのオッサンから聞いた。その先だ。

「さ、さっき、面会だって、それで、他の皆さんと様子を見に来たんですが、その時はほんとにもう駄目かもって……」

 全然問題ないんだが。

「他の皆さんって誰だ?」

「えっと……」

「――いいかね!? 静かにするんだよ!」

――ガチャ。

 ドアが開くと、先程の医者に続いて見知った面々が姿を見せた。

「直樹っ!!」

「おう狭山、具合はどうだ?」

「大丈夫か!?」

「さ、狭山くん……?」

「センパイ、中々しぶといですねー」

「狭山さん、大丈夫ですか。大丈夫そうですね」

「どうだい直樹氏! 感動の対面だ!」

 わらわらと現れる連中。多いよ。

「まだいるぞ」

 はい?

――先輩、大丈夫ですかー!?

――馬鹿お前、狭山先輩がトラックごときに殺されてたまるか!

――全然見えないんですけどー!

――おーい! お前いつからそんなおいしいキャラになったー?

――事故にあったクラスメイトにそれはないだろ!

――おーおー、似てる似てる! モノマネうまいな!

 部屋の外から後輩やクラスメイトの声が聞こえてくる。1人や2人ではなかった。

「いやはや、私も長いことここで医者をやっているが、ここまで一気に面会を求めに来た事は滅多にないね。おかげで受付が大変だったよ」

 そうかい。

「みんな直樹さんが心配だったんですよ」

 わかってるから。

「なんだお前、感動して涙が出たか?」

「う、煩い! 余計なお世話だ! 帰れ!」

「ありゃりゃ、怒られちゃいましたねー」

「図星か」

「黙れっつってんだろうが! しばき倒すぞ!」

「はっはっは、それでは諸君、直樹氏は諸事情によりしばらく面会謝絶だそうだ! もう少したってからこようではないか!」

――はーい。

――ばーか。

「……くそ……」

 悪いかこの野郎。

 

 

「直樹氏、調子はどうかね!?」

「医者も驚いてたな」

「それは当然だろうな。本来ならば指一本動かせないはずだ」

「流石にお主も死にかけたらしいの」

「当たり前だ。トラックに轢かれて無事な人間はもはや人間ではない」

 10分後に来たのは人外3人衆。

「小夜君が泣きながら駆けつけてきた時は流石に焦ったよ! その様子ならうまい具合に回復したようだね!」

「か、神楽さん!!」

 俺の横にいる厄病神が叫ぶ。

「やっぱりお前の仕業か……」

 医者の驚きようを見てそんなことだろうとは思っていたが。

「神が治療しなければ右腕どころか半身不随になるところだった」

「マジかよ……」

「情けないやつよの!」

 ちっこくなって死神の肩に乗っているお前に言われたくない。

「お前、せめて尻尾は隠せるようになれ。耳は帽子で何とかなるから」

「それが出来たら苦労はせんわー!」

「た、玉藻さん、落ち着いて下さい……」

「その調子ならすぐにでも退院できるだろう! 今日はゆっくり休むといい!」

 

 

「ちょ、調子はどう?」

「さすが不死身の肉体、トラックに轢かれて無事で済むとは」

「……」

 続いてやってきたのは藤阪、桜乃、碧海の3人。碧海、どうした。

「し、心配したんだぞ……」

「……あ、ああ。心配かけて悪かった」

「い、いや、無事で良かった。さや――」

「はーいそれまでー」

 突然桜乃が割って入る。なんだ。

(バッカお前、俺を殺す気か!)

 耳元で小声で叫ぶという器用な技を披露してくれる。意味が分からん。

「……元気そうね」

「お、おお。なんか知らんが助かったらしい」

「そう」

 氷点下の視線が痛い。俺なんかしたか?

「狭山、とりあえず元気そうで安心したぞ。退院したらパーティーな!」

 お前が騒ぎたいだけだろ。

「さ、さあ行こうぜ2人とも! あんまり居ても迷惑だろうからな!」

「そ、それじゃあな狭山。安静にしているんだぞ」

「……じゃあね」

 なんだかよくわからないままに3人は帰っていった。

 

 

「どう狭山くん? 話をしても平気かしら?」

「まさかセンパイが事故に遭うとは思いませんでしたー。これも日頃の行いですかねー」

「……天誅ですか」

「すまない松崎。このムカつく後輩2人を叩き出してくれ」

 3組目は松崎、辻、市原。本当に叩き出すぞ。

「さ、狭山くん、あまり動くと体に障るわよ」

 問題ないとは思うが従っておく。

「あははー、センパイってばムキになっちゃってー。カルシウムが足りないからすぐにイライラしたり事故に遭うんですよー」

 カルシウムが足りなくてなるのは事故の後の骨折だ。

「本当になんともなさそうですね。流石です」

 その流石ってのは医者にか、神楽にか、俺にか。

「さあ2人とも、あまり長居しては酷よ。早めに帰りましょう」

「えー。全然大丈夫そうですよー」

 お前はいいから大人しく言うこと聞いておけ。

「わかりましたよー。それじゃセンパイ、元気そうで良かったです」

 

 

 その後も見舞いは続き、全員終わったときにはもう日も暮れていた。

「体調云々ではなく普通に疲れたぞ……」

「今日のお昼からでしたしね……」

「ふん、他にやる事はないのやら」

「それだけ、皆さん狭山さんのことを心配していたんですよ」

 暇な奴らだ。全く。


暗い話は書きたくありませんので。

神様にちょちょっと治してもらいました。

現実はそううまくはいきません。

もし不快感を感じた方がいらっしゃいましたら、この場を借りてお詫び申し上げます。


というわけで次回は主人公の退院祝いです。

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厄神様とガラスの靴
こっそり開設。
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