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第30話:厄神様はかく逃げりき

とうとう30話になりました。

ここまで続くなんてびっくりです。

では第30話をどうぞ。

 非常にやりづらい。

「――であるから、下線部の3行前の筆者の主張をもとにして――」

「玉藻さん、わかりますか?」

「むむむ、さっぱりじゃの」

 授業中である。それにもかかわらず雑談ができるのはこいつらが他人から見えないからだろう。

 玉藻の声はある程度周囲に聞こえてしまうようだが、囁き程度なら問題ないようだ。

 だが俺には会話が全て丸聞こえであり、鬱陶しいことこの上ない。

 今すぐ静かにしろと言いたいところだが、俺の席は後ろから2番目であり、奴らは教室の一番後ろにいるため、何かしようとしても俺の後ろの席の奴に気付かれる恐れがある。

「何故こんな分かりづらい文を書くのじゃ。ひょっとして本当は頭が悪いのではないか?」

 んな訳あるか馬鹿。

 

 

「授業参観をするのは勝手だが喋るな。迷惑だ」

「ごめんなさい………」

 授業終了後、厄病神と玉藻、それにカモフラージュのため死神に向かって注意する。

「あの程度なら他の人間には聞こえていないだろうがな。気をつけろ」

「はい………」

 厄病神、お前がそんなへこむことないだろ。原因は厄病神の腕の中にいるお前だ。

「うるさい! 黙ればいいのじゃろ!!」

 そうだ。おとなしくしてろ。

 

 

 そして次の時間。

「よし、この問題を………碧海、解いてみろ」

「はい」

「あ、碧海さん、頑張って下さい」

「ふん、せいぜい間違えて恥をかくのじゃ」

 よし、殴ろう。

 

 

「痛いではないかー!!」

「やかましい!! あんだけ黙ってろっつっただろうが!!」

「さ、狭山、そんなに怒る必要は………」

「碧海も少しは怒ってやれ! こいつ調子に乗ってるぞ!」

「ほ、ほんとにごめんなさい!! 次からはなにも喋りません!!」

 頼むぞ本当に………。

 

 

「ようし、昼だぁーー!!」

「やっと昼か………」

「今日はなんか随分疲れてるわね。調子でも悪いの?」

 その後の授業は何とか問題なく過ぎていき、ようやく昼休みとなった。

「狭山直樹、昼はどうするのだ」

「私達はいつも食堂で食べてるんだけど、あんたも来る?」

「では同行しよう」

 

 

「おい厄病神、玉藻、腹減ってないか?」

 学食へ行く道すがら、さりげなく2人に尋ねる。

「わたしは大丈夫です」

「わらわは腹ぺこなのじゃー。朝からなにも食べておらんのだぞ」

「大丈夫か、そうか」

「人の話を聞かんか」

 

 

「今日は随分ヘルシーね」

「気分だ」

 俺が頼んだのはきつねうどん。なんとなく狐といえばこれのような気がした。

「う、うまい!! なんじゃこれは!! うますぎるぞ!!」

 そして油揚げは玉藻にやった。大絶賛だ。あんまり焦って食うと喉に詰まるぞ。今は小さいんだから。

「玉藻さん、そんなに急いで食べなくても大丈夫ですよ」

「う、うむ……」

「……で、死神、それはなんだ」

「揚げ餃子のトマトソース煮込み・オリーブオイル和えだ」

 死神が食べているのは毒々しく真っ赤に染まった揚げ餃子。美味いのかそんなもん。

「昔、興味本位で頼んだ奴が倒れたって話だぜ……」

 そんなもんおいておくな。

「あんた、中々やるわね……」

「なあなあ、オレにもひとつ分けてくれよ」

 桜乃が勇者になった。

「いいだろう」

「よっしゃ、狭山、これ食ったらあとでジュース奢れよ」

「なんでだよ」

「行くぞ!」

 一方的な契約は履行されないぞ。

 俺がその言葉を言う必要はなかった。

「一目散に駆けていったわね……」

「桜乃、死ぬなよ……」

「ふむ、駆け出すほど美味かったか」

 いや、違うから。

 

 

「死ぬかと思ったぜ……」

 桜乃が戻ってきたのは5限が始まる3分前。大丈夫かお前。

「へっ……このオレをなめるなよ……」

 よく分からん台詞をはいて桜乃は机に突っ伏した。

 

 

 そして時は過ぎ、放課後。

「玉藻、俺は部活に行くがお前はどうするんだ」

「わらわも行こう」

 まあ好きにしてくれ。

 

 

「あれ、今日の朝センパイと一緒にいた……」

「三途川黄泉だ。よろしく」

「はぁ……よろしくお願いします……」

「何でお前がここにいるんだ」

「特に理由はない。お前の部活に興味があっただけだ」

 そうかい。

「狭山くん、彼は入部希望かしら」

「見学だ。気にする必要はない」

「そう……」

 最近俺の居場所が人外に侵食されていく感じがするな。そろそろ策を講じなければ。

「やあ直樹氏! 調子はどうかね!?」

「そこはかとなく最悪だ。帰れ」

「そうかそうか! 玉藻君も想像していたのとは違うがなんとかなっているようだね!!」

「よ、寄るな!!」

 お前はその小動物並みの警戒心をなんとかしろ。

「狭山さん」

「ん?」

 いつの間にか後ろに市原がいた。

「彼女は……狐ですか」

「妖狐だそうだ」

「……耳と尻尾は生えているのでしょうか?」

 なんで死神もお前もそんなところにこだわるんだ?

「いえ、なんとなくです」

「玉藻さん、尻尾は生えているんですか?」

 市原の質問を聞いていた厄病神が玉藻に尋ねる。

「生えておらぬ」

 ん? でも確かこいつの母親の通称は……

「白面金毛九尾の狐、妖狐は妖力に応じて尻尾が増えるのさ!!」

「ってことは、全然妖力がないってことじゃないか」

「う、うるさい!! ばかにするな!!」

「黄泉君、あの笛はどうしたんだい!?」

「今の状態では大きすぎて持つことができん。だから家においてきた」

「ふむ……」

「直樹、あんた……って、後ろの二人はなんなのよ」

「気にするな。それで、どうしたんだ」

 藤阪に突っ込まれるまでもなく、部員が部員でもない奴と談笑しているのはおかしい。しかし今さら追い出すのも面倒なので無視する。

「そうそう、それであんた、あたしの譜面知らない?」

「譜面?」

「――時に黄泉君、玉藻君がこうなったのはいつからかね?」

「朝からだ」

「そう、どっかいっちゃったのよね」

「確か……ああ、桜乃弟が楽器を運ぶ時にどこかに持っていってたな」

「――ではそろそろまずいんじゃないかね?」

「何がだ」

「本当? まったく、あたしのは動かすなって言ってあるのに……」

「そろそろ術の効力が切れるかもしれないよ」

 ……なんですと?

――ボウン!!

「きゃっ!!」

「……死神!! 連れてけ!!」

「分かっている!!」

 なんというタイミング。神楽の台詞と同時に俺にとっては死刑宣告に等しい謎の効果音が鳴り響いた。あたりが煙に包まれる。

「え? え? 何?」

 そして煙が晴れたとき、そこに人外ズの姿はいなくなっていた。

「……今の、なんだったの?」

「何でもないぞ」

「龍一と黄泉は?」

「帰ったんじゃないのか?」

 心臓に悪い。

 

 

「時間切れがあるならあるって早く言え!!」

「すまない、まったく知らなかった」

「辛うじて誰にも見られていないようだ!! 間一髪だね!!」

 全然嬉しくねえよ。

「玉藻さん、学校はどうでしたか?」

 どこかから拾ったのか帽子で耳を隠している玉藻に厄病神が尋ねる。

「あまり面白そうではないの」

 こんだけ騒がしといてそれかい。

「これなら家でてれびを見ていた方がマシじゃの」

「お前なぁ……」

「はっはっは、まあいいじゃないか!! 玉藻君、学校に来たくなったらいつでも言いたまえ!!」

「……疲れた。今日はもう帰るぞ」

「それじゃあ神楽さん、さようなら」

「ああ!! また明日会おう!!」

 結局今日はなんだったんだ。

 

 

「この笛、吹いてみればいいんじゃないか?」

「なんじゃと?」

 家に帰るとテーブルの上で存在感を主張している笛が目に入った。なんとはなしに提案してみる。

「吹くとどうなるのじゃ」

「知らん。笛なんだから吹くものだろ」

「よし、ではやってみるか」

 笛を手に取り、構える。

――ピロー……

――ボウン!

 ……ああ、またこのパターンか。

 煙が晴れると、そこには変わらず玉藻がいた。

「……今回は何にも起きないんだな」

「……し……」

 し?

「尻尾が……」

 この時、俺は初めて自分の不用意な発言が事態をややこしくしているのだということに気付いたのであった。


………なんだか大変なことになってきました。

収拾がつくのか自分でも不安です。


「揚げ餃子のトマトソース煮込み・オリーブオイル和え」、実は美味しいとかだったらそっと教えて下さい。


ちなみに続きません。

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厄神様とガラスの靴
こっそり開設。
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