第28話:厄神様はかく止めりき
最近だいぶ評価感想をいただけるようになりました。
この拙い作品を評価していただき本当にありがとうございます。
感想はどしどし送って下さい!!
………送って下さい………!!
では第28話です。
「黄泉さんと玉藻さん、何をしているんでしょうか?」
「知るか。帰ってみれば分かるだろ」
部活で醜態をさらした帰り道、玉藻とそれ以上に死神の行動に不安を抱きながら帰途につく。
「よくよく考えてみれば何故赤の他人を3人も家に泊めて、しかもそいつらに留守を任せるなんて大冒険をしているんだ俺は。よし決めた。何かしていたら全員追い出そう」
「そ、そんな! それって、私も入ってるんですか!?」
当然だ。
――ガチャ!
家に帰ってリビングへ。
「遅かったな。料理はもうできている」
「うわ、似合わん……」
死神がエプロン姿で出迎えてきた。気持ち悪いからやめろ。
「玉藻さんはどうしましたか?」
「寝ている」
なんでだ。
玉藻はリビングのソファで寝息を立てていた。どうやら本当にコマーシャルの最初の文字をメモしようとして途中で寝てしまったようだ。
「なんだか本当に子供みたいですね……」
「そうだな」
さて、玉藻はいいとしよう。
「何でお前がここにいるんだ」
「何でとは随分だね!! せっかく玉藻君の今後について話し合おうと来たというのに!!」
どういうことだ。
「今日分かれる時に言った筈だ。神と相談すると」
そういえばそんなことを言っていた気もするな。
「そこでだ!! まず第一に、直樹氏は玉藻君が家にいるのと自分の目の届くところにいるのとどちらがいいかね!?」
また難しい質問だな。正直玉藻自身の安全から見ても家に一人でいさせたくはない。だが目の届くところというとまた転校なんてことになるんじゃないのか。
「それもいい案だ! そうするかね!?」
勘弁してくれ。
「そうじゃなければどうするんですか?」
「こんなものがある」
死神が見せたのは和風の横笛。どこから拾ってきたこんなもん。
「これは玉藻君の持ち物だよ!! 今日僕が持ってきたのさ!!」
威張って言うな。それでこれがなんなんだ。
「玉藻君は妖狐にしては力が弱いと思わなかったかね!?」
たしかに下手したら俺より弱そうだが、あいつの母親が凄いだけで本人はそんなもんじゃないのか。
「キミは妖狐の力を少し侮っているね!! 彼女らがその気になれば退魔士が束になっても敵わない最強クラスの力を持っているんだよ!!」
かなり胡散臭いな。やはりこのへぼへぼギツネを見てしまったからか。
「つまり、玉藻はその笛を持つことで妖力を上げることができる」
なんかバトル漫画みたいだな。
「人間だって銃を所持すれば脅威さ! それと同じだよ!!」
そんなもんかね。
「その笛は持つとどうなるんですか?」
「まあ、君たちのイメージする妖狐に近くなるね!!」
意味が分からんな。
「とりあえず夕飯にしよう。今日はシチューだ」
「いつもお前が作ってるみたいな言い方すんな」
「黄泉さんもお料理できたんですねー!」
「彼の料理はなかなかのものさ!! 僕としては小夜君の料理も食べてみたいがね!!」
「ありがとうございます! いつでもいらしてください!」
こらこら、勝手に招待するな。入り浸るぞこいつは。
「……む……にゃ? なんじゃお主ら、いつの間に帰ってきていたのじゃ」
お前がアホ面で寝てる間にだ。
「誰がアホ面かぁ!! ……ん? 誰じゃそやつは?」
神様だ。
「何を言っておるのじゃお主は。とうとう頭がいかれたか」
殴るぞ。
「そういうのは殴ってから言うことじゃないと思います……」
「うぅ……小夜、あやつは誰なのじゃ」
「はい。神楽さんといって、神様なんです」
「……まことか?」
「そうとも! 僕が神様さ!」
「うぬぬ……まあ死神がおるのじゃから神がいても不思議ではないが……人間はこんな者を信仰しておったのか? やはり分からんの」
心配しなくても世間の人々はこんなふざけた男を信仰しているつもりではない。
「それにしてもどこかで見たことあるような……」
「さ、さて玉藻君! この笛に見覚えがあるかね!?」
「ないぞ」
「…………」
おい。
「神よ、任せろといったのはお前だった筈だ。こんなことでは話にならんな」
「た、玉藻君! 本当に知らないのかい!?」
「そんな悪趣味なもの見たこともない。小夜、本当にこんなやつが神なのか?」
「ええっと……たぶん……」
どうした神様。神は万能ではないという命題でも証明するつもりか?
「お、おかしいね……。絶対知っている筈なのだが……」
さっきからまるで知らなきゃおかしいみたいな言い方してるが、それが玉藻のだっていう保障でもあるのか。
「だってこれは、僕が彼女の母上から譲り受けた――」
「――なんじゃと!?」
「――しまったな、僕としたことが……」
なんだなんだ。
「なぜ貴様が母上の話をできるのじゃ!? 母上が生涯で話をした人間はやつらしかいないはずじゃぞ!!」
「玉藻君、それは……」
「ええい黙れ!! 貴様もやはりあやつらの仲間か!! 今ここで殺してくれる!!」
「おい! よせ!」
後ろから羽交い絞めにする。予想していたより抵抗する力は弱かった。
「離せ!! 離すのじゃ!!」
「し、死神!!」
「分かっている」
俺に代わって死神が玉藻を押さえつけた。
「離せ……離すのじゃ……」
「玉藻さん……」
「玉藻君、よく聞きたまえ。僕は確かに君のお母さんに会ったことがある。だがそれは君が思っているような理由ではないよ」
「そんなこと……誰が信じるものか……」
「……そうだね。僕の事は信じなくていい。ただ、これを君にと僕に預けてくれた君のお母さんの気持ちは無駄にしないで欲しい」
「…………」
「これは君のものだ。たとえ君に見覚えがなくとも、君のお母さんが君に遺した、たったひとつの形見だ」
「…………よこせ」
神は微笑むと、その笛を手渡した。
「……これが、母上の……」
「あとの詳しい話は黄泉君から聞いてくれたまえ。僕はこれで失礼するよ」
「あ、神楽さん……」
「心配は要らないよ。きっと彼女なら理解してくれるだろうからね」
神楽は笑いながら帰っていった。
「玉藻さん……」
「……ふん、おいバカ、これはなんなのだ」
死神に尋ねる。
「……バカというのはまさか俺のことか?」
「当然じゃろう。ちなみにお主はバカ2号じゃ」
今度は俺かよ。
「バカ2号ってなんだ。そんな名前じゃバカ1号がいなきゃ存在できないみたいじゃないか。俺は他の存在に依存した名前が大嫌いなんだ」
なんとかモドキとかな。
「むむ……じゃあお主は死神と呼ぶぞ」
「そうだな。そうしてくれ」
「そしてお主はバカじゃ」
「変わってねえよっ」
「それで死神、これはなんなのじゃ」
人の話を聞けよ。
「それはお前の妖力を上げる媒体のようなものだ。そうだな、まずは姿を消すことから始めるか」
「? どういう意味じゃ?」
「所謂変化の術だ。これを使いこなせれば家にひとり取り残されることもない」
なるほど、他から見えない状態になればついてきても問題ないかもしれないな。
「おお、それはいいな! よし、ゆくぞ!」
気合を入れ始める玉藻。
「力を込めすぎだ。もっと力を抜け」
「こ、こうか?」
「それではなにも力が入っていない。ちょうど中間を目指せ」
「わかりにくいわぁー! もっと分かりやすく教えんか!」
……だいぶ時間がかかりそうだ。
「厄病神、先に寝るぞ」
「え、でも……」
「この様子じゃ一晩かかってもできなさそうだ。付き合ってるだけ無駄だ」
「は、はあ……」
「おい死神、玉藻、俺は寝るからな。あまり遅くならないうちに寝ろよ」
「な、なんじゃと!? おいてくでない!!」
「わかった」
「こらーーーー!!」
そして翌日。
「直樹さん直樹さん! 大変です!」
「何が大変なんだ。安眠妨害に足る理由じゃなかったらぶっ飛ばすからな」
厄病神に叩き起こされてわけも分からずリビングへ向かう。
「狭山直樹、半分成功した」
「半分成功ってなん……」
「おうお主! これでどうじゃ!!」
テーブルの上には、手のひらサイズの人間がいた。
その名前を、玉藻といった。
「勘弁してくれ……」
おれ斉藤っす。
嘘です。ガラスの靴です。
早口で言うと「おはようございます」に聞こえると巷で評判の挨拶でした。
皆さんも試してみてはいかがでしょう?
そんなこんなで今回めっちゃ伏線モドキが多いですがそんなに気にすることはないと思います。
きっと作者もそのうち忘れます。
ちっちゃくなった玉藻はどうなるのでしょうか!?
次回はそんなお話です。