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第27話:厄神様はかく呼ばれり

「かく過ごせり」を更新いたしました。

これからあちらの更新はここで発表したいと思います。

その方が皆様に余計な手間をかけさせずに済むと思いますので。

ま、そんな熱心な読者様なんているわけないですかね!?


それでは第27話をどうぞ。

「あれ、直樹さん、部活には行かないんですか?」

「ああ」

 放課後、急ぎ家へ帰ろうとしていると厄病神が声をかけてきた。

「玉藻の様子が気がかりだからな。今日は辻と桜乃弟に任せる」

 それぞれトロンボーン代理・指揮者代理だ。

「でも、部長さんに伝えないといけないのでは?」

 ………それが一番厄介なんだよなあ。

「帰る必要はない」

 死神が会話に入ってきた。

「どうしてだ。玉藻が何かやらかしてない保障はないんだぞ」

「俺が帰る」

 ………お前、何しに来たんだ?

「確かにお前のボディガードも任務だが、お前の生活に影響が出ないようにするのが第一条件だ。今後については神と相談する」

 そうかい。まあ頑張れ。

 

 

「黄泉さん、やっぱり直樹さんのことを一番に考えているんだと思います」

 俺には厄病神の進化形にしか思えなかったんだがな。少しは考えてるってことか。

 喉が渇いたのでお茶を買ってから行こうと思い、中庭の傍にある自販機へ。

「あぶない!!」

「あ?」

 上から声がしたので見上げると――

「――どわあぁぁぁ!?」

――ガシャァァン!!

 ……教室の掃除に使うホウキが落ちてきた。

 ……縦に。

「な、直樹さーん! 大丈夫ですかー!?」

「す、すみませーん!! 大丈夫ですかー!?」

 上と横から叫ばれると耳が痛い。どちらにも大丈夫と返しておく。

「やっぱり厄病神の進化形だろ……」

「でも、黄泉さん、今はいませんよ……」

 どういうことなのだ。

 

 

「貴方一人で遅れるとはね。何をしていたのかしら」

「ホウキが落ちてきた」

「なにそれ? 言い訳かしら?」

 まあ普通信じないよな。

「あんた遅かったじゃない。……ああ、お茶買ってたのね」

 藤阪が俺の手にあるお茶を見て納得したように呟く。

「そういえばお前、今日は俺より先に来てたんだな」

 お茶を買いに行く前に席を見ても既にもぬけの殻だった。

「なんとなくよ」

 そのなんとなくのおかげでホウキ事件に巻き込まれずに済んだんだ、自分の幸運さに感謝しとけ。

「そうだ、桜乃弟はいるか」

「あんたの後ろに」

 なんと。

「あの、その桜乃弟って呼び方いい加減やめてもらえませんか」

「別にいいじゃないか。桜乃の弟なんだから」

「じゃあせめて名前で呼ぶとか」

拓斗(たくと)、無駄だって。センパイが名前で呼ぶことなんてありえないんだから」

 なんだ辻、何か文句でもあるのか?

「いやぁ、文句と言うわけではありませんが、拓斗以外にも兄弟姉妹の組み合わせがあるんだからー、と思いまして」

 藤阪か。

「あ、あたしは藤阪でいいわよ。呼ぶならすみれの方にしなさい」

 しかしいきなり名前で呼ぶのもどうかと思うが。

「というわけで、じゃーん!!」

 間抜けな効果音付きで辻が藤阪妹を俺の目の前に突き出した。

「さあ! どうぞ名前で呼んじゃって下さい!」

 なんだこれは。罰ゲームか?

「み、満月ちゃん、恥ずかしいよぅ……」

「まま、いーからいーから」

「直樹さん、いっちゃってください!」

 どさくさに紛れて声援を送る厄病神。お前の魂胆はお見通しだ。

「……じゃ、じゃあ行くぞ……?」

「ふぇ? は、はい……」

 気付けばギャラリーが集まり始めている。時間が経てば経つほど不利だ。

「す……」

「は、はい……」

「す……」

 口が動かない。

「早く言いなさいよ……」

 落ち着け。たった3文字。

「さあどうぞ! す!?」

「スッペ」

「たりゃああああああ!!」

「がはっ!?」

 全力で蹴られた。

「なんですか今のは? 私はボケなんて求めてないんです。軽騎兵の作曲家なんて思い浮かべるヒマがあったらスミレ科の多年草を言ってください」

「すみませんでした……」

 そうだな。草の名前だと思えばいいんだ。

「す…みれ……」

「は、はい……」

 よし、言えた。

「う〜ん、思ったより面白くないですね〜。じゃあ今日はみんなを名前で呼んでください」

「なんでだよ!?」

「無論、その方が面白そうだからです」

 悪魔だ。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!! 名前で呼んでもらう必要なんてないわよ!」

 藤阪が反対意見を出した。その調子だ、頼む。

「ん〜。じゃあ、名前で呼んで欲しいひとっ!?」

――ババババッ!!

 俺と藤阪、それに藤阪妹は挙げなかった。

 ……逆に言うと、他の奴は全員挙げた。

「はいけってーい!! それじゃあセンパイ、今日は名前で呼んでくださいねー!」

 知るか。俺はいつも通り名字で呼ぶ。

「おんやぁー? まさか指揮者ともあろう方が、みんなの名前を覚えていないんですかー?」

 ムカ。

「ようし、やってやろうじゃないか。俺の記憶力を舐めるなよ」

「じゃあ私から! はいどうぞ!」

「満月!」

「ぼ、僕も!」

「拓斗!」

「藤阪センパイは?」

「葵!」

「その妹は?」

「すみれ!」

「部長は?」

「静流!」

「わたしの名前は!?」

「小夜!」

「小夜?」

「…………」

 振り返る。

 ……厄病神が満面の笑みでそこにいた。

「センパイ、小夜って誰ですか?」

 知らん。

「まさか間違えたんですか?」

「え?」

「ほら、いっつも神楽センパイが呼んでるじゃないですか。市原――?」

 どうやら舞の名前の質問と重なっていたようだった。助かった。

「あ、ああ。舞だ」

「怪しかったですねぇー……」

 まあ舞なら小夜の姿も見えるから問題ないだろう。他の奴だと洒落にならなかったが。

「酷いです」

「おい」

「あーあ、これは罰ゲームですねー」

 なんだそれは。

「夕飯奢りなんてどう?」

 葵、お前は何を言ってくれてるんだ。そんなこと言ったら――

「「さんせーい!!」」

 ……終わったな。

「貴方たち、何を騒いでいるの」

「あ、部長。いや、センパイが何やら騒がしくてですね」

 満月お前な。

「狭山くん、貴方今日はどうしたの? 熱でもあるんじゃない?」

「い、いや、静流、これはだな……」

「……え……?」

 いえーい、やっちまったーい。

「……辻さん、他の人も練習させておいて。私はちょっと飲み物を……」

 ……松崎は行ってしまった。

「……センパイ、中々やってくれますねー」

 な、何をだ。

「別に何でもないですよ? さあみんな、練習練習ー」

 一気に人がいなくなった。このやっちまった感はなんだろう。

「ふ、藤阪、それじゃあ練習でもするか……」

「一人でやれば?」

 なんでそんな不機嫌なんだお前。

 

 

 結局気付けば俺一人。人生そんなもんさと思いながら練習を始める。

「な、直樹さん、わたしの名前は――」

「今度それ言ったら永久に厄病神だからな」

「ご、ごめんなさい……」


たんに主人公に名前で呼ばせてみたかっただけです。


これから主人公が小夜と呼ぶわけではありません。

むしろ意地でも厄病神と呼ぶでしょう。

ただ最後の台詞に厄介なニュアンスを含めてしまいましたが。


最後の部分で辻はこっそり主人公の様子を窺ってニヤニヤしているのですが、それはまた別のお話です。


そして本編では初登場となる桜乃弟こと桜乃拓斗、藤阪妹こと藤阪すみれ。

サブキャラの上位に位置している方々ですので、覚えておいて損はないかもしれません。


次回は玉藻対策会議の予定です。

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厄神様とガラスの靴
こっそり開設。
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