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第23話:厄神様はかく庇えり

とうとう述べアクセス人数が1万を突破いたしました。

本当にありがとうございます。

これからも読み続けて頂ければ幸いです。

「――ふふふ、あのような封印なぞわらわには無いも同然。憎き人間どもめ、封印したことを後悔させてやるわ――」

「……あの方は……?」

 封印を解いたら出てきた(らしい)のは、少女だった。

 ……頭から耳が生えた少女だった。

 

 

「死神、説明しろ」

「あいつが封印されていた妖怪だ」

「女の子ですね」

「耳の生えたな」

「妖怪だからな」

「妖怪さんですか」

「――む、なんじゃ貴様らは。わらわに何か用か」

 俺達が多分に現実逃避の混じった会話をしているうちにその妖怪(らしい少女)がこちらに気付いた。

「お前の封印を解いたのは俺だ。俺の使い魔になれ」

 死神、まだ使い魔にする気か。

「使い魔? そんな下等なものになどなるものか。よし決めた、わらわの復讐はまず貴様からじゃ!」

 瞬間、少女が死神に襲いかかった。

「……っ!? あぶな――」

「きゃん!?」

「……は?」

 少女は死神にあっけなく取り押さえられていた。弱いな。

 

 

「……で、お前はなんなんだ」

「離せー!! わらわを誰だと思っておるのじゃー!!」

 いやだからそれを訊きたいんだが。

 今、謎の少女は縄でぐるんぐるんに拘束されて転がっている。なんだか哀れだ。

「なに? わらわを知らぬのか?」

 だから誰だってさっきから訊いてるだろ。

「ふん! この大妖怪玉藻前(たまものまえ)様を知らぬとは、ばかな人間もいたものよ!」

 その大妖怪様が目の前でふん縛られてるのはなんなんだ。

「そ、それは、そう、わざとじゃ! わざと捕まっているふりをしておるのじゃ!」

 じゃあ脱出してみろ。

「う……」

「そうだな、その縄を解けたら釈放してやろうじゃないか」

「うぅ……」

「直樹さん、ひどいです……」

「サディストだな」

 煩い。外野は黙ってろ。

「だいたい封印だって自分じゃ解けてなかったじゃないか。死神に解いてもらっておいて何を言うか」

「な、なに!? あの封印はわらわが解いたのではないのか!?」

 だから違う。

「き、貴様らは何者だ!? だいたいここはどこなのだ!?」

 ……死神、バトンタッチ。

「お前はいつ頃封印されたのだ」

「むむ……覚えておらぬ」

 自分のことくらい覚えてろ。

「玉藻前は平安時代末期、鳥羽上皇に仕えた絶世の美女だ。その正体は白面金毛九尾の狐と言われ、鳥羽上皇が病に倒れた原因として討伐軍によって滅せられたとされている」

 代わりに死神が解説。九尾の狐ってのは聞いたことがあるな。

「おお、そうじゃそうじゃ! わらわの母上じゃ!」

 ……は?

「母上は偉大な人だった。それを人間どもときたら……」

「ちょっと待て。お前はその玉藻前じゃないのか?」

「だからそれはわらわの母上じゃと言っておろう。頭の悪い奴じゃ」

 殺す。

「いたー! 何をするのじゃー!?」

「直樹さん! 暴力はいけません!」

 暴力じゃない。制裁だ。

「おのれ! もう我慢の限界じゃ! 全員まとめて滅ぼしてくれるわー!」

 

 

「まあ何も起こらないわけだが」

「なぜじゃー!! なぜブチッといかんのじゃー!!」

 どうやら母親が凄いだけのヘボヘボキツネだったらしい。

「死神、もういい。さっさと戻してくれ」

 もうお前もこんなのを使い魔にする気なんてないだろ。

「無理だ」

「だから封印……は?」

「無理だ。封印を解く方法は知っているが封印をかけ直す方法は習っていない」

 ……なんでそんな後戻りできないことを普通にするんだ。

「それじゃあ、玉藻さんはこのままなんですか?」

 そのようだな。くそっ、無傷の置物とトライアングルが余計に腹立たしい。

「……って、なんであの置物切れてないんだ?」

「物理的に斬ることは出来ない鎌で斬ったからな。断ち切ったのは封印だけだ」

 死神の鎌といっても色々あるのか。

「あのトライアングル、もう持ち上げても平気ですか?」

「ああ。もういいぞ」

 厄病神がトライアングルを片付けて置物をリビングの窓に飾った。

「……結局残ったのはこいつだけか……」

「疲れたぞ……」

 じたばたあがいていたキツネ少女も今はぐったりとしている。人間と変わりないな。耳以外は。

「尻尾は生えているのだろうか。見てみよう。そう狭山直樹は思ったのであった」

 黙れ。誰がそんなこと思うか。

「俺は気になる。見てみるか」

「ばっ、やめ……!」

「な、何をするか! こら離せ! きゃー!!」

 

 

「痛いぞ」

「黙れ」

 今度は死神が縛られている。ちなみにキツネ少女は厄病神の後ろに隠れて脅えている真っ最中だ。

「仮にも女の服を剥ぎ取ろうとするとはどういう了見だ」

「知的好奇心だ」

 蹴った。

「嘘だ。すまない」

「分かればいい。さて、おいキツネ、お前はこれからどうするんだ」

「愚かな人間どもに復讐する」

 止めておけ。多分開始十秒でこの町にいる退魔士に斬り殺されるぞ。

「じゃあどうすればいいのじゃ!?」

 知るか。どこかの農村で大人しく地蔵の真似事でもしてろ。

「玉藻さん、ここで暮らすのはどうでしょうか?」

 何を言っているんだ厄病神。誰がこの家の主だと思っている。

「でも、外に出たらきっと大変です! それに、わたしたちが玉藻さんを出したんですからわたしたちが責任を持たないといけません!」

 むむ。なんだこの拾った子犬を飼う飼わないの論争みたいなのは。しかも若干向こうの方が押し気味だ。

「……し、死神はどうしたいんだ! 使い魔にもならなそうな奴をこれ以上置いておいてもしょうがないだろ!?」

「俺は構わないが」

「……キ、キツネ。お前もこんな家で暮らすのは嫌だろ?」

「当たり前じゃ。こんな危険なところで寝泊まりなぞできるか。それにキツネじゃなくて玉藻前じゃ」

 どっちも一緒だろ。

「違うわ!」

「まあいい。これで2対2だ。それなら家主である俺の意見が通るよな?」

 これ以上俺の家を妖怪屋敷に出来るか。

「……そうですよね……ごめんなさい……直樹さんの事情も考えずに我が侭を言ってしまいました……」

 ぐ。またあの涙目か。

「……玉藻さん、辛くなったらいつでも来てくださいね……」

「む……」

「それでは出ていけ。戻ってくるなよ」

「ま、待て! わらわは出ていくとは言っておらぬ!」

 おい。

「……あ……」

「……狭山直樹。これで1対3だぞ」

 死神め。狙ってやりやがったな。

「……分かった分かった。降参だ。何か問題起こすまでは置いておいてやる」

「ほ、本当ですか!?」

 涙の残った笑顔が眩しいぞこんちくしょう。

「わ、わらわは嫌じゃ! こんなところ……」

 どっちだ天邪鬼(あまのじゃく)

「ちなみに念のため言っておくが死神、お前も何かやらかしたら即刻追い出すからな」

「善処しよう」

 さてと、厄病神、キツネに適当な部屋与えておいてくれ。

「キツネではない! 玉藻前じゃ!」

「煩いキツネ」

「玉藻前じゃ!」

「だからキツ――」

「玉藻前!!」

「……玉藻」

「うむ。それでよい」

「な、直樹さん直樹さん! 私も――」

「厄病神」

「……小夜って――」

「厄病神」

「……言うん――」

「厄病神」

「――ですけどいいです……」

 絶対に厄病神としか呼ばないからな。

「俺は寝る。後は勝手にしろ」

「そうさせてもらおう」

「……お前は止めろ」

 

 

 我が家の家族構成。

 父親(不在)。

 母親(不在)

 俺(人間)。

 厄病神(幽霊)。

 死神(死神)。

 玉藻(妖怪)。

 ……勘弁してくれ……。


というわけで4人目の家族はネコ耳ならぬキツネ耳です。

別に狙ってる訳ではないです。

あと九尾の狐云々はちょこっと調べただけなので間違っていたらこっそり教えて下さい。


ではでは、今後も自分の意志の弱さが全ての元凶であることに気付いていない直樹を見守って頂けるとありがたいです。


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厄神様とガラスの靴
こっそり開設。
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