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第20話:厄神様はかく泊まれず

とうとう20話目に突入です。

一体何話まで続くのでしょうか。

ちなみに作者も分かりません。

「おはよう」

 意識の奥底に微かな声が響く。この感覚はあれだ。脳は起きてるが体が寝たい時の状態だ。

「あ、凛さん。おはようございます」

「おはよう」

「朝食が出来ているぞ。」

 朝に目覚まし時計が鳴ったのを消した後のような気分。起きなければならないが眠りたい。よし、寝よう。

「わかりました。直樹さん、朝ですよ」

 誰かがゆっさゆっさと体を揺らしている気がする。だがその程度の刺激では既に再び夢の世界へ落ち始めた俺の意識を連れ戻すことはできん。

「ああ、いい。私が起こしておこう。料理が冷めるといけないから小夜達は先に行っていてくれ」

「はい、わかりました。死神さん、行きましょう」

「ああ。碧海凛、襲うなよ」

「な、な、な、ななにをいっているのだ貴様は!?」

 何やら騒がしいが構うものか。俺は寝るのだ。

「……あー、うー……さ、狭山、朝だぞ」

 布団の中というのは現実世界で最も理想的な麻薬だと思うね。これほど無害でこれほど依存性の強い物は他にないだろう。

「ほら、狭山! 起きろ!」

 バサリと布団が無くなる。馬鹿、寒いぞ。返せ。

「うわ、き、きゃあ!!」

 無意識に手を伸ばし、触れた物をそのまま抱え込む。うむ。暖かい。ふにゃふにゃしている。

 ……ふにゃふにゃ?

「…………」

「…………」

 なんとなく妙な予感がして目を開けてみると、真っ赤な顔と目があった。お前、こうしてると結構――

 ――じゃなくて。

「どわぁぁぁぁぁぁあああああ!?」

 この世に生を受けてから最も効果のある目覚ましだった。

 

 

「…………」

――カチャカチャ。

「…………」

「……お、おいしそうですよね! この料理、凛さんが作ったんですか!?」

「…………」

「う、うぅ……」

――カチャカチャ。

「うむ、美味いな。煮汁の味がしっかり中まで染み込んでいる」

「…………」

 ……あー、このかなり気まずい食事風景は俺と碧海が一言も喋っていないことに起因する。恥ずかしくて何も言えん。というか下手に何か言ったらこのまま追い出されそうだ。碧海はさっきからうつ向いたままだし。

「……直樹さん……何があったんですか……?」

 な、なんだ厄病神、目が怖いぞ。やるのか?

「やっちゃったのか」

「んなわけあるかぁーーー!!」

 しまった、思わず声を上げてしまった。碧海を見るとさらに顔を赤くしている。気まずい。

「あー……あ、碧海。さっきのはだな、その、なんだ、寝ぼけていたからちょっとおかしくなっていたというだけで、別に変な事を考えていたわけじゃなくてだな、その、あれだ、すまなかったから許してくれ」

 自分でも何が言いたいのか分からない謝罪をしてしまった。

「……あ……ああ……」

「直樹さん……ほんとになにしたんですか……」

「や、ま、待て! 決してやましいことはないぞ!」

「自分の布団に碧海凛を引き倒しただけだ」

「おい死神テメェーーー!!」

「な、直樹さん、そんなことを……」

「おい、まずなんであいつが知ってるかだろ!!」

「見ていた」

 殺す。

「…………」

 あああ、碧海の顔色がかなり大変なことになってきた。他人が見たら病院に電話しそうだ。

「す、スマン!! 悪かった!! 今日はもう帰る!! また今度礼はするから!!」

 ビビリとか言うな。このままここにいたら本気で訴えられそうだ。

「い、いや! ま、待て! 狭山がそんなに気にすることではない!」

 意外にも碧海から引き止められた。

「い、いや、でも……」

「そ、その、さっきのは私も不注意だった……から……」

「あ、ああ……その、スマン」

「い、いい。約束通り今日はここで――」

「続きか」

「何を言っているんだ貴様はぁーーー!?」

「おっと」

 うわ、またバトルが始まった。

「直樹さん、後でじっくりお話を聞かせて下さいね?」

「は、はい……」

 碧海と死神がそれぞれの箸で斬り合いをするという凄いのかなんなのか分からない闘いをしている横で厄病神が俺に謎の威圧感を向けてきた。思わず頷いてしまったぞ。

「しかし助かったな。今日もホテルでは流石に疲れる」

 闘いを終えた死神が何事もないかのように食事を再開した。後頭部に箸刺さってるんだけど。

「それで、今日のことなんだが」

「あ、ああ」

 こちらも何事もなかったかのように新しい箸を準備する碧海。

「すまないが、これから鍛錬をしなければならない。見ていて面白いものでもないだろうから、適当に散歩でもしていてくれないか」

「わかった」

 まあ俺達のせいで普段のペースを崩させる訳にもいかないので、言葉通りにさせてもらうことにした。

「前も来ましたけど、凛さんのお家ってとても大きいんですね!」

 ああ。名家だからな。俺の家とは規模も歴史も桁違いだ。

「狭山君」

 庭を見ていると後ろから痺れるような低音の声がかかった。これは……。

「お、おはようございます、源三郎さん……」

「おはよう」

 碧海の父親にしてこの家の当主である源三郎氏であった。

 情けないのを覚悟で言おう。死ぬほど怖い。

 その逞しい体つきからは人が殺せるんじゃないかという程のオーラが常に放出されている。冗談抜きでナイフくらいなら腹筋で弾きそうだ。

「君が霊体に憑依されたとは聞いていたが、家に住めなくなる程強い厄が集まるとはな」

「あ、あはは、そうですね……」

「君がその霊かね」

「ひゃ、ひゃい!! ごめんなさい!!」

 何も言われていないのに謝る厄病神。分かる。物凄く分かるぞその気持ち。

「…………」

「……な、直樹さ〜ん……」

 泣くな。堪えろ。今泣かれたら俺がただではすまん。

「……ふん。まあいい。君も死なないように気をつけろ」

「ご、ご忠告感謝します……」

「それで、彼は君の友達かね」

 どうやら死神のことは聞いていないようだ。助かった。

「え、ええ。小学校以来の友人で、たまたま遊びに来ていたところに事故が起きたんですよ」

「なら彼は彼の家に帰ればいいだろう。何故ここにまで来る」

「……じ、実は、もともと泊まる予定で、それでこいつの親も旅行に出掛けちゃいまして」

「……そうか。まあいい」

 死ぬ。オーラに切り刻まれそうだ。

 死神も流石にこの人には何も言わない。ここで問題発言したら口をホチキスで留めてやる。

「……本題はそこではない」

「ま、まだ何か!?」

「……昨日はよく眠れたかね」

「は、はひ!!」

 いかん、声が裏返った。

「……ま、ま、まさかとは思うが……うちの娘に……ふ、ふ、ふしだらなことなど……!」

「し、してない!! してません!!」

 これはやばい。朝のことがばれたら両手両足持って引き千切られそうだ。

「そ、そうか。いやすまない。娘の友人を疑いたくはないのだが、やはり親としては心配でね」

「い、いやあ。親として娘を心配するのは当然ですよ。な?」

「そ、そうです! その通りです!」

「有難う。いや、朝からうちの娘が君達を起こしに行くのを見てね、いい友人を持ったものだ」

「朝から布団に引き込むくらいな」

「…………!!」

「………」

「……」

「…」

 

 

「死ね!! 死んでしまえ!!」

「人間とは鍛錬次第であそこまでなるのか。驚いた」

「誰のせいだと思ってるんだぁーー!!」

「な、直樹さーーん!!」

 俺はボコボコにされてその上碧海の家から放り出された。死神も同じく満身創痍である。

 一応誤解は解いたので出入り禁止とまではいかなかったが、今日の寝床を探さなければならなくなった。といっても最終的にはホテルがあるから野宿にはならないが。

「さて、どうするか……」

「だが心配は無用のようだ」

 どうして。そう答える前にその意図を知って愕然とし、次いで悲嘆した俺は間違ってはいないはずだ。

「どうした直樹氏! やはり追い出されたのかね! 焦りは禁物だよ! なんなら僕の家に招待しようかい!?」

「三つ目の発言について説明をしてもらってからホテルと天秤にかけさせてもらおう」

 本当に、なんなんだ。


どうもこんにちは、ガラスの靴です。

 

碧海さんとのドキドキな2日間を期待していた人はごめんなさい。

 

さて、今回登場の碧海父、源三郎さん。

新キャラっていうほどではないです。

 

碧海父は強いのも確かなのですが、恐ろしいというのが一番ぴったりだと思います。

戸〇呂弟とか、ブ〇リーみたいな感じです。

何のことか分からない人は全力でスルーしてください。

 

次回は神様の自宅に密着取材です。

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