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第19話:厄神様はかく泊まれり

第19話です。

とりあえずホテルに泊まった主人公達はどうするか考えます。

「……朝か……」

 あの悪夢のような日の翌日。俺はホテルの一室で目が覚めた。

 結局あの後警察を呼び、トラックの運転手の居眠りが原因ということになり、さらには家の修理からその間のホテルの手配まで全て運転手の負担という、出来すぎた結末を迎えることとなった。昨日は取り敢えずそのホテルの一室に泊まったのだ。

「あ、直樹さん、おはようございます」

「おはよう。朝食を食べに行こう」

 ……3人でな。

 

 

「直樹さん、お味はどうですか?」

 ああ、美味い。

「そうか。俺も食べたいのだが、残してはくれないか」

 黙れ。お前はその辺の雑草でも食ってろ。

 朝食に立ち寄ったファミレスのテーブルに並んだ料理は一人前。当然だ。厄病神は元から見えず、死神も神楽と同じく実体化も不可視にもなれるため、あの時警察の目に映った哀れな被害者とは即ち俺一人なのだ。

 そのため用意されたホテルの部屋もシングルルーム。修理が終わるまでの3日分の生活費も1人分。やってられるか。

 ちなみに部屋に1つしかなかったベッドは厄病神が使った。触れないが使った。文句あるか。

 

 

「これ以上ホテルに泊まるのはキツいな……」

 やはり3人なら3人分の扱いが欲しい。

「とすると碧海、神楽、市原……」

 その辺りだろう。

 死神が見えるかどうかは知らないが、神が死神を見れなくてどうするといったところだし、碧海も恐らく大丈夫だろう。万が一見えなくても俺と厄病神の2人分は確保できる。死神は知らん。

「……という訳だ。いいな」

「はい。わかりました」

「構わないぞ」

 なんかこういう非常事態にも普通に接している自分が嫌だ。

「ところで直樹さん」

「どうした」

「神楽さんや市原さんの家ってどこにあるんですか?」

「…………」

 

 

「それで私のところへ来たのか」

「スマン!! 何でもするから2日間だけ泊めてくれ!!」

 2日間と言うと急に断られやすくなりそうな響きに聞こえるのは俺の気のせいだろうか。

「……まあいい。確かにこのままホテル暮らしは辛いものがあるだろう」

 誠意は通じるものだな。本気できちんとしたお礼を考えよう。

「……それで、そこの男は誰なんだ」

「あ、ああ、こいつは俺の小学校からの友――」

「俺は死神だ」

 ……友達で……。

「……死神……だと?」

 空気を読めない馬鹿のせいで碧海の表情が一変した。怖い。

「狭山……どういうことか説明してくれるか」

「い、いや、これはだな……」

「し、死神さんはわたしのやっていることを手伝いに来てくれたんです!」

 馬鹿。こんなタイミングでなんてことを。

「……小夜。お前には言った筈だ。狭山にこれ以上危害が加わるようならお前も容赦しないと」

「……あ、あれ?」

 もう駄目だ。

「碧海、お前は誤解をしている。死神と言っても俺の命を奪いに来たとかではなく」

「そこの男。死神、と言ったな。私が斬り臥せてくれる」

 碧海って、人外(じんがい)相手には結構喧嘩っ早いんだな。

「面白い。人間が神に逆らうか」

 しかもこっちも乗り気だし。欲求不満か?

「お、おふたりとも、喧嘩はいけません!」

「小夜、これは喧嘩ではない」

 碧海が日本刀を構える。

「そうだな。喧嘩というよりは―――」

 死神が何処かから馬鹿でかい鎌を取り出す。

「「決闘だ」」

―――ガキィィン!!

 両者の得物がかん高い金属音をたててぶつかり合う。この話はいつからバトル物になった。

「はぁっ!!」

「ふん」

―――シュッ!! バババッ!!

「は、はわわわわ!! なな直樹さん!! 大変なのが大変です!!」

 ああ。お前もな。

 碧海の袈裟切りを避けた死神はそのまま鎌を振り上げる。碧海は間一髪しゃがむことによってこれを回避。続いて回し蹴りを繰り出す。

「くっ……」

「退魔の一族をあまり舐めないことだ」

「退魔……そうか、碧海一族、道理で」

 何か俺の知らないところで繋がりを持っていた2人はさらに闘いを加速していく。それにしても死神と互角に渡り合うとは、碧海の強さもつくづく非常識なレベルのようだ。

「直樹さん! このままではおふたりとも怪我をしてしまいます!」

「そうだな。かといって俺にこれを止める自信はない」

「ふっ」

―――ブォン!!

「……ちっ!!」

 死神の鎌が碧海の肩を霞めた。確かにこのままでは死人が出そうだ。

 ……仕方があるまい。ここは切り刻まれるの覚悟で間に入るか。達人なら逆に寸止めなんかで助かるかもしれない。

「……待て!! 2人とも退けあぁぁ!?」

――――ヒュバッ!!

「どけ狭山! 邪魔だ!!」

「刈るぞ」

 2人の得物が同時に頭をかすめた。無理だ。諦めよう。

「な、な、直樹さん! 大丈夫ですかー!!」

 次、お前な。

「む、無理ですーー!!」

―――バタン!

 その時、

「はぁーっはっはっは!! 君達、だいぶ大変なことになっているねえ!!」

「お、お前!!」

「神楽さん!!」

 救世主が、現れた。

「おやおや、碧海君も中々やるね! 死神というのは神々の中でもトップクラスの戦闘能力を有しているというのに!」

 分析は後ででいい。何で今ここに来たかは知らんが取り敢えずあいつらを止めろ。

「なぜ来たかと言われれば闘いを止めるためさ! 僕に任せたまえ!」

 神楽は1歩前へ出ると右上を高く上げ、指を弾いた。

――パチンッ……!

 その途端。

「な……っ!?」

「む……」

 2人とも動きをピタリと止めた。否、止められた。

「か、神楽!? お前が何故こんなところにいる!?」

「それはもちろん君達の闘いを止める為だよ!! 君達2人の戦いは人が殺せるからね!!」

「………もういい。離せ」

「そうだね! もう頭も冷えた頃だろう!!」

―――パチン。

 再び指を鳴らす。

「う……っ」

「……」

 糸が切れた操り人形のように床へ座り込む両者。おお、初めて神楽が神っぽい事をした気がする。

「か、神楽!! これは一体どういうことだ!? 何故貴様がここにいる!? 貴様は何者だ!?」

「ふふふ!! よくぞ訊いてくれた!! 僕は―――」

 

 

「…………」

「……だ、大丈夫か……?」

「……狭山、大変だな……」

「お、おお。お前も頑張れよ……」

 あれから神楽の正体、厄病神が俺にとり憑く正確な理由、そして死神が何故ここに来たのかを延々と語られ続け、碧海はかなりグロッキーな状態だった。別々に聞かされた俺だって頭がおかしくなりそうだったのだ、非日常に慣れた碧海にも辛かったのだろう。

「さて! せっかく互いに自己紹介を済ませたのだ! ここはひとつ親睦を深めたまえ!」

「お、おい! 正気か!?」

「僕はいつでも正気さ! ではさらば!!」

 なんてことだ。本当に行ってしまった。

「……あ、あの、凛さん……」

「…………」

「し、死神さん……」

「…………」

「……な、直樹さん……」

「…………」

「どうして直樹さんまで無言なんですかぁ〜〜〜!?」

「痛い痛い!! ちょっとやってみたくなっただけだ! ポカポカ殴るな!」

「……そうだな、狭山も小夜もこんな邪神につきまとわれては大変だろう。2人分の寝床は用意させてもらおう」

 あー、碧海さん。そんなひきつった笑顔で言われても恐いだけなんだが。

「……面白い。そこまで冥界への片道切符が欲しいか。今なら只で進呈してやろう」

「だぁーー! 頼む! 碧海! 3人分の寝床を!」

 このままでは俺が心労でぶっ倒れそうだ。

「……狭山がそこまで言うならそうするが……」

「決断を焦ることもないだろう。神の家に行けば」

「お前はもう黙ってろ! ありがとう碧海!! よろしく!!」

「あ、ああ……」

 こうして20世紀初頭におけるバルカン半島よりも緊迫した関係の中で碧海家での宿泊が可能になったのだった。

「直樹さん、怖いです……」

 我慢しろ、俺だって怖いわ。


どうもこんにちは、ガラスの靴です。

碧海は妖怪と人を見分けることはできますが、神と人を見分けることはできません。

なので今まで神楽の正体を知らなかったのです。


次回もまだまだ外泊は続きます。

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厄神様とガラスの靴
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