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第16話:厄神様はかく受け取り

土日だろうと一日一話。

そんなわけで第16話です。

「――明日からゴールデンウィークです。休みだからと言ってあまり羽目を外し過ぎないようにして下さいね」

「――だそうだよ直樹氏! ここらで少し疲れを癒すといい!」

 なんでお前がいるんだ。帰れ。

 

 

 休日前最後の授業ということで、生徒だけでなく教師まで心なしか浮足立っている気がする。給料泥棒どもめ。

 そしてそんななか無駄にハイテンションな男が今日もやってきた。ご丁寧に市原も同伴だ。

「今日の部活は休みのようだね! ならば僕と付き合ってくれないかい!?」

 俺は男と交際する趣味はない。助詞は正しく使え。

「おおっと、これは失礼! 僕「に」付き合ってくれたまえ! まあ僕としては君とそのような意味での交際をするのも悪くないのだがね!!」

 黙れ。気持ち悪い。それとさりげなく依頼から命令に変えるな。

「神楽さん×狭山さん……アリです」

 何がアリなんだ市原。あんまり不愉快な想像してたらぶっとばすぞ。

 

 

 そんなこんなで放課後。神楽達の用というのはつまるところ自分達で作った部活、オカルト研究同好会に遊びに来て欲しいというものだった。なら最初からそう言え。思い切り断ってやったというのに。

「はっはっは! 中々言ってくれるね! だが最終的にここまでわざわざやってきてくれたのはそういう風に捉えてしまってよいのかな!?」

 そういう風ってどういう風だ。

 オカルト研究同好会――長いな、「オカ研」でいいか――は吹奏楽部と違って旧校舎の部室棟を間借りしていた。まあ2人しかいない同好会に部屋ひとつくれてやれる分大したものだろう。

「ここなら小夜君も思う存分話せるだろう! ひとつ君の話を聞かせてもらえないかね!?」

 成程(なるほど)。用があるのはそっちだったか。

「お話……と言いましても、特に変わったことはありませんが……」

「本当かね!? 聞くところによれば直樹氏は級友の家で夕飯をご馳走になったりナンパに成功してカラオケへと洒落こんだり可愛い後輩のために何千円も注ぎ込んでプレゼントをしたそうではないか!!」

――ガタガタッ!!

「――貴様っ!! 何故それを知っている!?」

「どうかな小夜君! 概ねそのようなところではないか?」

「え、はい……。それ以外には本当に特にありませんでしたね……」

「おい!! 質問に答えろ!!」

「うるさいですよ狭山さん。これだけのことで取り乱すとは器の小さな人ですね」

「既に一般人の器の容量を超えるレベルに達しているだろ!!」

「神様はなんでもお見通しなのさ!!」

「な、直樹さん!! 落ち着いてください!!」

「離せ厄病神!! こんなプライバシー侵略者をこれ以上放っておけるか!!」

「直樹さーーん!!」

 

 

「……ハァ……ハァ……」

 ……疲れた。

「ふむ! 君は時におかしなところで我を忘れるね! 中々興味深いよ!」

 ……やかましい。全然おかしくないだろうが。

「安心したまえ! 君は私の手によって24時間365日守られているよ!」

 即刻契約破棄だ、そんな警備会社。

「ところで小夜さん」

「え、はい! なんでしょうか?」

「狭山さんは燃えたぎった目であなたを見ていたりしないのでしょうか」

――ガタガタガタッ!!

「市原ぁ!! 意味のわからない質問をするなぁ!!」

「意味がわからないのならいいです。そのままのあなたでいてください」

 そういう意味じゃない。

「燃えたぎった目……ですか? あまり見たことはありませんが……」

「それは変ですね。もしかして狭山さんにはそっちの気があるのでしょうか」

「あるわけなかろうが!!」

「おお!! それは大層驚きのカミングアウトだ!! 僕ならいつでも構わないよ!!」

「黙れーーー!!」

 

 

「それはそうと小夜君」

「はい?」

 恰好つけて話しているが奴の頭には俺の鉄拳が炸裂してコブが出来ている。

「最近直樹氏と話はしているかね?」

 意味がわからん。家庭問題を扱うカウンセラーみたいな質問の理由を説明しろ。

「前にも言った通り、幸せを分けてもらう最も手軽な方法は我が侭を通すことだ。君にはそれが足りないような気がするね」

「そ、そうでしょうか……?」

「ああ」

 なんだかんだで色々こいつの願いも訊いてやっていると思うんだがな。

 そういえばこの前買った服はどうなっているのか。結局触れなかったのだろうか。

「神楽さんは酷すぎでした」

「おや、そうかね!?」

「いつか私の寝込みを……」

「…………」

「…………」

「……寒かったからだよ?」

 わかっている。だから堪えたではないか。正直危なかったが。

「……残念です」

 何が残念なんだ市原。

「でも、これ以上のことを頼んでは直樹さんに迷惑がかかってしまいます」

「はっはっは! 思う存分かけたまえ! 心配するな!」

 お前が言うな。腹が立つ。

「そしてそんな君にはこれを進呈しよう!!」

「これは……?」

 神楽がポケットから取り出したのは小さな置物のようなもの。試してみると厄病神でも持つことが出来る。

「これは持っている人が幸福になれる置物さ!」

 この上なく胡散臭(うさんくさ)いな。

「……キツネさんですか?」

「ああ! 狐だよ! 可愛いだろう!?」

「はい! とってもかわいらしいです!」

 厄病神にとってはその本当の効果はどうでもいいようだ。

「で、どうせ何かが起こるんだろう。何が起きる。答えろ」

「それは………ま、近い内にわかるだろう!」

 なんだその含んだような台詞は。

「あの………ありがとうございます………」

「なあに小夜君! 気にするな! どうせ困るのは直樹氏さ!」

 ふざけるな。

「狭山さん……」

 どうした市原、何か言いたいことでもあるのか?

「頑張って下さい」

 何をだ。何を頑張ればいいんだ俺は。

「今日の用件はこんなところだね! 付き合ってくれて感謝する!」

「はい! とっても楽しかったです!」

「よかったですね」

「そうだな! 楽しんでくれたようで何よりだ!」

 結局俺は散々非生産的な会話をした挙句意味のわからない置物を貰うという、かなり無駄に思える放課後を過ごしてしまったのであった。


さて、第16話。

気付けば神楽がかなり変態チックになってます。

一応裏設定として直樹は中性的な顔ということになっているのですが、作者にそっちの気は全くありませんので、苦手な方も単なるギャグとして流して下さい。

でも市原さんはガチです。狙ってます。

なんのことか分からない方は全力で忘れて下さい。

 

 

次回から黄金週間です。そして新キャラです。早いよ。

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厄神様とガラスの靴
こっそり開設。
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