第14話:厄神様はかく挑めり
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ここまで読んで頂き本当にありがとうございます。
これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。
では、後輩様のお話です。
週明けの月曜日、生徒会長選挙があった。
結果は最早言うまでもないだろう。大方の予想通りあの神様野郎が当選し、文化祭における賞金制を確立するための活動を始めている。
「……そのはずだろう。何故ここにいる?」
「はっはっは! 僕を誰だと思っているのだ! そのようなこと学生生活の合間にやれば充分さ!」
だというのに神楽は市原と共に俺の教室や部活に押し掛け続けている。帰れ。
「そういえば最近市原が部活に出る割合も減っているんだが」
「それはそうさ! 彼女も生徒会役員だし、僕と共に新しい部活を立ち上げたからね!」
「……すまん、何だって?」
「僕と舞君で新しい部活を作ったのさ! その名もオカルト研究同好会!!」
それはまた怪しさ爆発なものを……。
「何せ舞君が生徒会と吹奏楽部とオカルト研究同好会を掛け持ち出来るようにするためだけに前回の生徒会長になったからね!」
なんて奴だ。それが目的であの公約を立てたのか。ここまで自己中心的だといっそ清々しいな。
「わかった。わかったからもう帰れ。お前がいると後輩の人格に悪影響を及ぼす危険性がある」
「この僕をして悪影響とは随分だね! 僕ほど純粋な心の持ち主はそうはいない筈だよ!」
純粋ならいいというわけではない。この腐った世の中で生きていくためには多少の汚れも知る必要があるのさ。
「ふむ! そちらの方面は君に任せるよ!」
はったおすぞ悪神。
どうにかこうにか神楽を追い返し、やっと練習が出来ると思ったら今度は辻がやってきた。なんなんだ。
「センパーイ! これ見てくださーい!」
辻が持って来たのは金属の部品。留め金と思しき部分が外れている。
「お前……まさか……」
「あははー、壊しちゃいましたー」
殺す。
ウチの部活に限ったことではないが、この学校では顧問が働かない。
そのため大抵の仕事は最高学年が取り仕切り、顧問はそれに承諾するだけというのが長年続く伝統だ。
そして部活の運営には当然金がかかるわけで、俺の仕事は生徒会から支給される予算の管理、いわゆる会計だ。
そして形あるものはいつか壊れる以上、楽器を修理しなければならないことも多い。そういうときに楽器屋へ修理に行くのも俺の仕事に含まれる。
「これくらいならすぐに済みますね。1時間程で修理します」
「どうもありがとうございます……」
楽器を見せると幸い大したことではなかったらしく、金具を元通りにはめて終わりらしい。
「センパイ、よかったですねー」
誰のせいでここに来たと思っている。
「1時間くらいだったら、なんかやってれば時間潰れますねー」
そうだな。どっか行きたいところはあるか。
「うわ、センパイが自ら人の意見を……。これは天変地異の前触れですね」
やかましい。俺の気が変わらないうちにとっとと決めろ。
「じゃあ――」
「あ〜〜〜〜っ!! あとちょっとだったのに〜〜!!」
アームからこぼれ落ちて最初となんら変わらない位置へ帰還したぬいぐるみ。辻はそれを悔しそうに眺めている。
――ゲームセンターに行きたいです!
という辻の要求通り、俺達は近くのゲームセンターに足を運び、そこで辻はUFOキャッチャーに悪戦苦闘している。
「センパイ、とってください!」
無茶を言うな。俺はゲームセンターにまだ数える程しか来ていないんだぞ。
「腕に回数は関係ありません!」
いや、あるだろ。
「くそ………。俺は物理は得意じゃないんだぞ………」
何回かやってみたが全敗。持ち上がりすらしない。
「直樹さん、わたしがお手伝いしましょうか………?」
どうやって。
「わたしでしたら中から縦と横の位置を確認できますし」
そうだな。それが成功率の向上に繋がるかは知らないが少なくとも重心を捉えやすくはなるだろう。
「よし、頼んだ」
「はい! まかせてください!」
「センパイ、どうしたんですか?」
気にするな。今から俺の本気を見せてやろう。
「わーい、全然期待しないで見てますねー」
厄病神がUFOキャッチャーの中に入って準備完了。行くぞ!
――ウィーン……。
「……そこです!」
――ガー……。
「……今です!」
――スカッ……。
「…………」
「…………」
「…………」
――ウィーン……。
「……センパイ、頭の次はとうとう目までいかれましたか?」
アームはぬいぐるみから20cm程離れた位置を空しく掴んで戻ってきた。
「……な、直樹さん……」
何故あれだけ外す。わざとか?
「ち、違います! 思ったより動く速さが速かったんです!」
お前、さっきまで散々やってるの見てただろ。
「とりあえず、センパイのセンスがゼロというのはわかりました。残念ですが諦めましょう」
「もう1回だ!」
結局、辻と交互に挑戦し続けること15回。
「……獲った……」
ついにぬいぐるみは転がり落ち、辻の手の中に納まった。
「いやぁー、買った方が早いんじゃないかってくらいお金を注ぎ込んでまでありがとうございましたー」
そしてその瞬間後悔が押し寄せてくる。なんで辻のぬいぐるみのために2000円も使う必要があったんだ。
「それでですねセンパイ。ひとつ気になることがあるんですが」
なんだ。金なら払うってか?
「そんなわけないじゃないですかー。寝言は寝て言ってくださいよー」
煩い。
「そうじゃなくてですね。……ここに来てからどのくらい経ちました?」
……しまった。
結局、2時間もゲームセンターで過ごしてしまった俺達は大慌てで楽器屋に戻り、苦笑いを浮かべた店員に楽器を返されるという醜態をさらしてしまったのであった。
「いやぁー、たまには楽器も壊してみるもんですねー」
殺すぞ。
というわけで後輩様のお話でした。
UFOキャッチャーが得意なわけではないので本当に内側から見れればいいのかどうかは分かりませんが少なくとも今回失敗したのは厄病神がとろいからです。
次回は鬼部長様のお話です。