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第123話:厄神様はかく帰りき

どうもお久し振りです。

日陰の生ける屍こと、ガラスの靴です。


最近、新しいゲームを手に入れてしまいまして、やばいです。

誰か1日を56時間にしてください。


そんなこんなで、やっとこさエピローグ。

 朝、爽やかな目覚め。

 人間はやはり自然な目覚めが一番健康的だと再認識したところで目を開ける。

 

 若干のデジャヴを感じつつ、俺はリビングへ行き、既に起きていた死神に挨拶をする。

「あれ、今日は小夜はまだ寝てるのか?」

「どういう事情からかは知らないが、まだ寝ている」

 寝不足かね。まさか宴会の時の散歩が今頃こたえたわけじゃないだろう、きっと。

 見ると、死神は一人だけ先に朝食を済ませてしまっていた。

「俺の分は?」

「自分で作ることだ。もしくは冷蔵庫の中から即席で食べることができそうなものを探すことだな」

 迷うことなく後者を選択した俺は、冷蔵庫を適当に開けて何でもいいから食べられそうなものがないか探しながら話しかける。お、饅頭発見。

「お前、準備できてるのか?」

「無論だ。心配はない」

「お前が覚えてるなんて、ちょっと意外だな」

「中学の時にテスト返却の登校日を忘れて皆勤賞を逃すような人間とは違うからな」

「……誰のことを言っているのかな? それは」

「時間がない。急ごう」

 まだ出かける時間まで30分以上あるわ。 

 

 

 そう、今日は7月19日。

 温泉旅行から一夜明けた、終業式の朝であった。

 

 

――時間は少しばかり遡って、温泉旅行最終日、午前10時。

 

「さて、諸君、思い残すことはもうないかね!?」

 旅館の前で神楽が大仰に問いかける。これから死にに行くみたいだな。

「皆様、この度はご利用いただいて、まことにありがとうございました。またいつでも遊びにいらしてください」

 女将さんが柔和な笑顔で見送りに来てくれた。やっぱり普通にしていれば普通の人だ。

「あ、そうそう。これもよろしければ頂いてください」

 そう言って何かの箱詰めを俺に手渡してくる。ここで遠慮するのもどうかと思ったので、礼を言って素直に受け取ることにした。

「なになに? 何かのお菓子?」

「この地域の名産品かもしれないな」

「あぶらあげがいいぞ!」

「……お菓子の方がいいの」

「もしかして、割引券とかじゃないですかー?」

「いやむしろ、女湯からくすねた下着――」

――メキャッ。

 不慮の事故でお亡くなりになったマイファザーを踏みつけつつ、それぞれが勝手な想像しながら寄ってくる。俺も中身が気になるな、開けてみるか。

――パカリ。

「……チラシ?」

「えぇ。おひとり様ノルマは20枚です。ご近所の方にお配りください」

「ここにきてまさかの広告塔!?」

 やっぱり油断も隙もあったもんじゃなかった。

「……では冗談は置いておきまして」

 本気の目だったな。

「こちらになります」

 そう言って二度目に手渡されたのは、今度こそちゃんとした土産品だった。この地域の特産品などが入っている。

「わぁ〜! 美味しそうですね!」

「同感だな。問題はひとつしかないことだが」

「……あら、それも心配はないようよ? ほら、あそこに人数分並んでいるわ」

「素晴らしいサービス精神ですね。感服しました」

「はっはっは! いやまったく、心遣い感謝するよ!」

 嬉しい荷物も増えたところで、本当に帰ることにした。

「……そうだ、お前はどうするんだ」

「ん? ボク?」

 実はさっきからいた天狗に話しかけてみる。こちらを品定めするかのようにじろじろ見た後、喋り始める。

「ボクが人間なんかと一緒に町に行く? 考えただけで虫酸が走るよ。ボクはボクで勝手にやらせてもらうから」

「そうか」

 予想はしていたので、とりたてて驚いたわけではなかった。

「玉藻……っていうと紛らわしいけど、まぁ玉藻でいいや。オマエも、いい加減そんな奴らと一緒にいない方が――」

「どうやらまだ自分の立場がわかってないようね?」

「――っていうのはやっぱり人それぞれだよねー」

 ……哀れ天狗、ついに恐怖の前に屈したか。

「玉藻は挨拶しなくていいのか?」

 一応は、最も自分に近い存在であろう天狗。何も言わずに別れさせるのもどうかと思った俺は、とりあえず玉藻に振ってみた。

「……うむ、それではの」

「あ、ああ、うん」

 ……終わりかよ。

「わらわは別に何も変わっておらぬ。だから、別にいいのじゃ」

「そうだな。その通りだ」

「……よく分からんが、玉藻と死神がそう言うなら」

 いつかまた会うことがあるかもしれない。なら、無理に今から接する必要はないのだろう。

「あー、そうだ!! あたしデジカメ持って来てたんだった!!」

「なにー!? お前、早く言えよ!!」

「よーし諸君、折角だ、ここで集合写真でも撮ろうではないか!!」

「よっしゃ乗ったー! オレが真ん中だー!!」

「甘いですね桜乃センパイ、私が既にスタンバってまーす!!」

「碧海さん、松崎さん。おふたりとも早く位置についてください」

「わ、私はここで充分だ……」

「私もあまり中央は……」

「……はっ! 私は今まで一体何を……ってそんなことより、なんと気付けば写真を撮るところではないか! これは突撃するしかあるまい! ほら何をやっているんだ2人とも、真ん中へ入りたまえ!」

「……流石、狭山直樹の父君だな。俺も中央へ寄るとしよう」

「ふん、ボクも写ってやる」

「それでは撮らせていただきますね」

「わ、私がまだ入ってないのー!」

「……わたし、ここにいたら心霊写真になってしまいそうな……」


――カシャッ!!

 最後に一枚、記念写真。

 後日現像されたものには、うっすらと幽霊らしきものが写っており、藤阪と松崎を気絶させたとか。

 

 こうして、俺達の旅行は終わった。

 まったく大したことのない、無計画なものだったが、それでも俺達にとっては、この夏の思い出に違いはなかった。

 

 

 ちなみに帰りはどうしたかというと。

「お嬢様。お迎えに上がりました」

「折角だからみんなも家まで送ってあげるの」

「お任せください。狭山様を初めとして、お嬢様のご友人様となれば、ぞんざいな扱いはできません。どうぞ皆様、お乗りください」

「……すげーな……」

「そうね……」

 俺は生まれて初めてリムジンに乗った。

 

 

「――ということがあった訳だ」

「え、えぇ……、知ってますけど……」

 俺達が出かけようとした間際、血相を変えて飛び起きてきた小夜にそんな話をすると、えらく不思議なものを見る目をされた。そりゃまあそれが一般的な反応なのは分かっているが。

「やれやれ、1日前のことをわざわざ語りつくさなければ記憶に留めることもできないとは、とうとう始まったか」

「おい、何がだ? 何が始まったと言いたいんだお前は?」

 ……そんな会話をしながら、通学路を3人で歩いていく。

 あれだけ大騒ぎをした旅行から1日経てば、それはもう元通りの日々。

 こうして、再び日常が始まっていくのであった。

直「なんだこの微妙な空気は」

死「ご愛読ありがとうございました。ガラスの靴先生の次回作をご期待ください」

響「やめて! リアルにこんな終わり方をしてしまいそうだからやめて!」

葵「完全に打ち切りの終わり方ね……」

直「『あそこで終わっておけばよかったのに』なんてのがあるともう最悪だな」

響「当てはまってる! 文句の付け所がなく当てはまってる!」

死「残念ながら、この物語はもう少しだけ続くのだ」

響「残念とか言うなよ! あと、そう言ってからの方が長かった漫画を知っている!」

直「お前、今日は突っ込み担当なんだな」



というわけで、これで温泉編は終了です。

次回からまた日常に戻ります。


とりあえず次回は軽く脱力系の話でもやろうかと。

こんな言い方をする時点で何も考えていないのがバレバレですが。


ではでは、ここまで読んでいただきありがとうございましたー!

次回もお楽しみにー!

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厄神様とガラスの靴
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