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第119話:厄神様はかく償い

どうもこんにちは、ガラスの靴です!

今日は夕方からバイトなので、午前中にストックを蓄えようと思っていたところ、ついさっき(午後1時)目覚めました。

ピンチです。


ではでは、第119話をどうぞー!

「あれ? どうしたんですかセンパイ? そんな服がずぶ濡れになるくらい汗かいたんですかー?」

「いや……まぁ、いろいろあってな……」

 着替えをとりに部屋まで戻ろうとすると、辻に遭遇した。お前花火やってたんじゃなかったのか。

「花火なら終わっちゃいましたよー。センパイが寝てる間に」

 なんてことだ。少しは残しておいてくれ。それなりに楽しみにしていたんだぞ。

 と、文句を言いたいところだが、今は若干それどころではない。小夜を探して誤解を解かねば。

「あ〜……、お前、この辺で幽霊を見なかったか?」

「……やっぱり頭壊れました?」

「黙らっしゃい」

 せめてもう少しオブラートに包んだ言葉遣いをしなさい。自分でも充分変なこと言ってる自覚はあるんだから。

「まぁいい。それで、他の連中は?」

「宴会やるって一足先に部屋に戻りましたよー」

「宴会?」

 だとしたら、小夜もそっちにいるのだろうか。いやしかし、わざわざそんな騒がしいところへ行くか?

「……花火やってたのってどこだ?」

「あっちですよー。まだ神楽センパイとかが片付けで残ってると思いますけど」

「分かった。ありがとう」

 辻に礼を言って花火会場に向かう。それにしても、桜乃は両手いっぱいに花火を持って来てたと思ったんだが、こんな早くに終わるなんてひょっとしてそんなに数はなかったのか?

 俺の頭に浮かんだその疑問は、現場に着くと同時に解決したのだった。

 

 

「おお! 直樹氏! 気分はどうかね!?」

「……『気分』ってのを文字通りの意味で捉えれば、たった今最悪になった」

「そのような発言ができると言うことは、どうやら怪我の方はもう大丈夫そうですね」

 神楽と市原が共同で片づけをしているその奥で、桜乃と天狗が黒焦げのまま磔になっていた。これは小さい子供が見たらトラウマものではなかろうか。

「し……死ぬかと思った」

「全くだ――ってお前生きてたのかよ!?」

「当たり前だろ! こんな拷問レベルの所業で死んでたまるか!」

 謎のしぶとさを持つ男だ。天狗は生きてるのかと思い、顔を覗き込んでみる。

「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ…………」

 ……トラウマ、南無三。

「さて、直樹氏、それでどうしてここへ来たのかね!? まさか本気で響氏たちを虐めに来たわけではあるまい!?」

 どれだけ趣味の悪い人間だ俺は。小夜を探してきたんだよ。

「……ふむ、小夜君? 直樹氏の目が覚めたようだと君のところへ飛んでいってからは戻ってきていないよ?」

 見当違いか。ひょっとして本当に宴会会場に行ったのか?

「……そういえば」

 市原が思い出したかのように呟きだす。

「先程フラフラと覚束ない足取りで林の中へ入っていっていました」

「それを先に言ってくれぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 ……夜の林は不気味だ。

 いくら日常的に幽霊や死神や妖怪に囲まれて生活している俺でも、やはりこういう恐怖に耐性がつくわけではない。

 ギャアギャアと鳥の声が響き、月の光は眼前およそ数メートルを照らすのみ、奥は漆黒の闇に包まれている。

 なんだってあいつはこんな肝試しスポットに最適な場所に入っていったんだ。何かが呼び寄せたのか? それこそ洒落にならんだろ。

「……せめて誰かと一緒に来ればよかった」

 人外ズなら言うことなし、市原や、碧海も……まぁ多少気まずいが1人より遥かにいい。辻はそもそもそういう存在を信じていないらしいからこういう場面では心強いだろう。桜乃も馬鹿だから多分気付かない。藤阪と松崎は……

「……無理、だろうな……」

 あいつらは多分この空間に放り込んだ瞬間平常心を失いそうだ。連れて来ない方が無難だろう。

「ああもう、小夜の奴何考えてんだよ……?」

 

 

適当に林の奥まで進んでいくと、やがて少しばかり開けたところに出た。

 そこにいたのは、

「……ネーベル……?」

「ようやくのご登場か。呑気なものだねぇ」

 何故か、小夜と共にネーベルが立っていた。

「というか、お前、その羽は……?」

 ネーベルが吸血鬼というのは今さら言うまでもなく周知の事実だ。だが、俺の記憶ではシルエットまでは人間と変わらなかった筈だ。

「フフ……驚いたか?」

 知り合いにある日突然羽根が生えて驚かない奴がいたら是非ともお目にかかりたいもんだ。それともアレか? 天狗といい、最近は羽根を生やすのがブームなのか?

「それは退魔士にでも聞いてみることだねぇ。吸血鬼と月の関係を知らないわけじゃあるまい?」

 いや、『あるまい?』とか聞かれても知らないぞ。

 ……というか、さっきから一言も喋らない小夜が怖すぎる。

「そうそう、小夜をここに呼び出したのは他でもない、お前に用があったからだよ」

「呼び出した?」

「そう。利害が一致したものでね」

 この時点で嫌な予感しかしない俺はどうすればいいだろうか。

「私たち吸血鬼はね、月の影響を受けて力が変わるんだ。満月に近ければ近いほど強く、新月に近ければその分、力を発揮できなくなる」

 それは大変なことで。

「……そして、満月の日には、自分で抑えるのも苦労するほどの力が湧き出てくる。その衝動のままに暴れてもいいんだが、まぁ貴様たちもそれは望むまい」

 当たり前だ。そんな力で暴れられてたまるか。

「……だから、その力を押さえ込むために何かと体力を使うんだよ。言ってる意味が分かるかい?」

 分かった、が、分かりたくはなかった。

「だから、吸わせろ」

「やっぱりそうきたかーーー!?」

 あぁそもそもネーベルが俺に用なんてそれくらいしかないよな! 俺は回れ右して逃げ出す体勢に入った。

「逃げられると思っているのかい?」

 既に目の前には体が半分霧になったネーベルが。

「だ、だあぁ!? さ、小夜、なんとかしてくれ!!」

「……か……」

 はい? なんて?

 

 

「少しくらい血を抜いてもらった方がさっきみたいなことしなくて済むんじゃないですか?」

「お前やっぱり怒ってたのかぁぁぁぁぁ!?」

 

 

「……センパイ、今度はどうしたんですか? 顔が青いですよ?」

「……まぁ、ちょっとした献血活動を……」

 教訓。小夜は根に持つ。

直「……そういえばさ、お前って随分と昔から日本に住んでるんだよな」

天「……? そうだよ。それがどうかしたの?」

直「いや、なんで技の名前がカタカナなんだ? もっとこう、『龍ナントカ〜』とか、『ナントカ流〜砲』とかあるんじゃないか?」

天「え? だって、カタカナのほうが強そうじゃん」

直「……それだけ?」

天「うん、それだけ」

直「…………」



そんな理由。


というわけで直樹に若干痛い目にあってもらった第119話。

当初は碧海も一緒に連れて行って、覚醒したネーベルと闘ってもらおうかと思ったのですが、いい加減バトルはやめろという貴重なご意見によりボツ。

直樹いじめにしてみました。

まぁ本来こんなほのぼのした関係だよ、ということを自分でも再認識させるためのお話。


次回は荒れます。

すっかり忘れ去られたあの方も登場。

ではでは〜!

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厄神様とガラスの靴
こっそり開設。
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