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第117話:厄神様はかく決着し

どどんと3日連続の更新。

かつてないハイペースでお送りする感動のスペクタクル。


どうもこんにちは、ガラスの靴です。

やっぱり休めると執筆もはかどりますね。

そんなわけで久々の毎日更新、もう少し頑張りたいと思います。

ではでは、たぶん誰も期待していなかったバトルのクライマックス、どうぞー!

 天狗が非常識にも小型爆弾をばら撒いたおかげで、いい具合に意識が飛んできた。

 一応殺人レベルの火薬は使っていないらしい。人を殺す気の爆弾を投下するほど終わっている思考回路ではないようだ。

 それにしても、他の連中は無事だろうか。気付けば周りの音が聞こえなくなっている。それともいかれたのは俺の耳か?

 まぁ死神や神楽がいるから大丈夫だろう。そう信じたい。じゃなきゃ化けてでもあの天狗を殺してやる。

 ああマズイ、結構本格的に体中が痛い。

 ……そもそも、なんでこんな無茶苦茶な闘い始めたんだっけな。

 

 

 俺は自分で言うのもなんだが暴力が嫌いな平和主義者だ。この際ありとあらゆるツッコミは無視させてもらう。

 そんな俺がなんでこんな勝てるかどうかは置いておいて喧嘩を始めたかといえば、まぁ天狗がムカついたというのも間違いなく理由の一つにあげることができるだろう。

 だが、もっと強く、俺を行動に駆り立てたのは他にある。

 

――……私は……自分がわからない。

 

 碧海のあの言葉。

 退魔士という自分の境遇に、苦しむ姿を見ていたくなかった。

 退魔士だから妖怪を退治しなくてはならないというのなら、一般市民だって妖怪を退治してやる。それくらいの気持ちだった。

 とにかく、碧海が、碧海凛が、悩んでる姿をこれ以上見たくなかった、それだけだ。

 

 ただ。

 

「流石に……妖怪様だわなぁ……」

 視界の隅では天狗が再びレーザーチャージを終えようとしている。この状態で撃たれたら間違いなく死ぬな。さっきは彼岸とか言ったが、無宗教の場合はどうなるのかね。太陽神信仰なんかしてたらやっぱり羽根と心臓を天秤に掛けられるのだろうか。

 ……っていかん。思考が関係ない方向に飛んで行きそうだ。今はそんなことを考えている場合ではない。

 こんな化け物みたいな連中と年がら年中渡り合っているんだから、退魔士ってのも相当な修行を積むんだろう。

 俺は、別に退魔士が嫌いなわけじゃない。

 勿論、碧海が嫌いなわけでもない。どちらかといえば、まぁ、好きな方だとさえ言える事も無きにしも非ずと言ったところで決して否定はされないレベルではあるのだろう。

 だから、碧海が退魔士だって、本当はなんの問題もないのだ。

 

――なら、なぜあんな感情的に退魔士を否定したのか?

 

 心の中で違う自分が問いかける。

 ……俺は。

 

「……さて、そろそろお別れの時間といこうか。思い残すことはある? ボクは慈悲深いからね、聞くだけ聞いてあげるよ……って、なんだ、意識ないのか? じゃあいっか。バイバイ」

 

 俺は、碧海が『退魔士』という壁を作ってしまうのに耐えられなかった。

 退魔士だから、退魔士として、そんな言葉で俺達と自分を分けているのに納得できなかった。

 例えば走るのがとても得意な同級生がいたとする。

 そいつにリレーのアンカーを務めさせるのは当然のことだろう。だが、放課後に一緒に遊ぶ時にそれが関係するだろうか。

 『走るのが得意だから一緒には遊べない』なんて台詞を言う奴がいたら、俺だったらとりあえず殴る。殴って、そんでもって窓から突き落とす。なに? やり過ぎ? 構うものか。

 そう、退魔士なんてそんなものだ、と思う。

 そいつだって速く走るのに無茶苦茶な努力をしているのかもしれない。だが、それとこれとは話が別なのだ。

 退魔士は、碧海凛という人間の中の、たかが一ステータスに過ぎない。

 それを、俺は、

「喰らえ、ヤツデビーム!!」

 あいつに納得させるためにここにいるんだ。

――バサッ!!

「って、くっ……!?」

 地面に転がっていた枝を思い切り天狗にぶん投げる。

「鬱陶しいなぁ、いいからとっとと消えちゃ……あれ、いない――」

 その隙に相手の右斜め後ろに回りこみ、がら空きになったそのわき腹めがけて木刀を――

「――しまっ……!!」

「……でりゃああああああああ!!」

 ――薙ぎ払う!!

――ドスン!!

 木刀は天狗のわき腹へ綺麗に食い込み、天狗はそのまま吹っ飛んで動かなくなった。

「う〜む……。よし、勝負あり! 直樹氏の一本勝ちとしよう!」

「……はあ」

「直樹さん!」

 思わず地面にへたり込む。すぐに小夜が駆け寄ってきた。いや、駆け寄ってきたというのは正確な表現じゃないな。飛んできた。

「だ、大丈夫ですか!? お怪我は――」

「あぁ、まぁなんとか」

「……狭山」

 そして、碧海もやって来た。微妙に重苦しい空気が漂う。

「……勝った」

「……心配、したんだぞ……」

 他の連中もほっとしたような顔をしている。ひとまずこれでなんとかなったかな。生きてるし。

「さて直樹氏! 勝者にはヒーローインタビューが待っているものだよ!」

「ヒーローインタビューって、野球チームじゃないんだから勝者サイドは俺しか――」

「今回のヒーローは途中見事な決断で試合続行を決めた神楽さんです」

「おいちょっと待て」

「うむ、アレを決断するのには正直勇気がいったね! 間違ってはいなかったようだ!」

「勝ったのは俺だっていってんだろうが! そこの夫婦漫才2人!」

 ダメだ、疲れた。今日はもう帰って寝よう。

「直樹さん、本当に今度からああいう危ないことをしてはいけませんよ?」

「あーハイハイ。分かった分かった」

 小夜の説教を適当に受け流しながら旅館へ向かおうとしたその時。

「……危ないっ!!」

「へ?」

――ドガッ!!

 ……何か、後頭部を思い切り殴られた。

「……ふふふ、あーっはっはっは! 見たか! 倒したと思って油断してるからこうなるんだ! この勝負ボクの勝ちだね! あーっはっはっ――!!」

「……言いたいことはそれだけか?」

「――は……?」

 意識を失う前に俺が見たのは、ふざけた不意打ちをしてくれた天狗と、

 

 

 その天狗を瞬殺する退魔士様の姿だった。

響「セコッ」

葵「卑怯」

死「姑息だな」

直「煩いんだよお前らは! 文句あるか!」

満「いーんじゃないですかー? 勝てば官軍ですよー」

直「お前に誉められても何となく嬉しくないんだが……」

 

 

というわけで、割とあっけなく終わってしまった決闘でした。

もともと2話で終わらせる予定でしたし。

なぜ3話に延びたかというと、当初の流れだとあまりにも天狗に見せ場がないことに気付き、急遽付け加えてみました。

葉団扇とか爆弾とか最初はなかったので。


というわけで、次回からようやくほのぼの(?)です。

それでは皆さん、また明日〜! ←凄い久しぶりに言えた

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厄神様とガラスの靴
こっそり開設。
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