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第110話:厄神様はかく捕らえり

はいどうもこんにちはー!

お笑い風に登場してみましたガラスの靴でーす!


ここのところずっとハイテンションですねー!

ナチュラルに喋り方が辻さんみたいになっている気がしますが気にせずガンガン突き進みましょう!


さて、前回現れた謎の声!

その正体に迫る第110話、どうぞー!

 


 

「さて、まさかボクを捕まえようとしているとは思えないけど、そんな低い所で何をやってるのかな?」

 頭上から声。

 見上げてみると、一際高い杉の木の頂上に、小柄な人影があった。

 太陽を背にしているせいで細かな姿は判別できない。

 しかしここからでも分かることがあった。それは、そいつが高笑いしていること。

 それから、人間にはまず間違いなくついていない、鳥のような翼を備えていることだった。

「……本当にいたんだ……」

 自分の見ているものを自分に信じさせるように呟く藤阪。

「葵君、今はそこを気にしていても仕方がないのではないかね!」

「それもそうか。あんたが天狗ね! 降りて来なさい!」

「そんなこと言われてホイホイ降りて行く訳ないじゃん。バカじゃないの?」

 隣で血管が切れた音がした。

「……大人しく降りて来れば命だけた助けてあげるつもりだったけど、そう……。この世に未練はないのね?」

 ヤバい。

「おいお前! いいから降りて来い! 死ぬぞ!」

「だからー、人間なんかがここまで来れるはずないって。脅しにもならないから、やめなよ」

 行く必要はない。届けばいい(・・・・・)

「……だりゃあぁっっ!!」

 藤阪は地面に落ちていた石を掴むと、掛け声と共に全力で投擲した。

「へ――?」

――バヒュン!!

 瞬きするのとどちらが速かっただろうか、石は天狗の顔面すれすれを切り裂いていった。

「……ちっ、外したわね……」

「――って、なに今の!? 絶対反則でしょ!?」

「煩いわね。飛ぶ鳥が落とされるのは自然の摂理よ」

 喋りながら尚も石を拾う藤阪を見た天狗がひっと小さく悲鳴をあげる。

「そのくらいにしておけ。これ以上はやりすぎだ」

「何よ。あんたこいつにされたこと忘れたわけ?」

 あの天狗がやったとは限らないだろ。

「そうだね! 疑わしきは罰せずだよ葵君! 君もとりあえずは降りて来たまえ!」

 神楽がどこまで神としての強制力を持っているのか定かではないが、天狗は嫌々ながらも俺達から5mほど離れた岩の上に降りてきた。

 姿は12〜13くらいの少年に見える。身長は辻くらいか、だいぶ小さく、生意気そうな態度からワルガキという単語が連想できた。

「その翼は本物なのか?」

「当たり前でしょ。こんなの飾りでつけるヤツなんていないよ」

 鴉みたいな漆黒の翼はいかにも飛べますといった風だが、どうも玉藻を見ているせいか見かけ倒しに思えてならなかった。

「それより、人間が何の用? もし本当にボクを捕まえるつもりだったら無駄だよ」

 随分自信があるみたいだな。

「何が無駄よ。痛い目に遭いたくなかったらさっさと捕まりなさい」

「……いい加減、差を自覚した方がいいよ」

 そう言った天狗が消えた。

「――!?」

「だってさ、」

 背後から声。慌てて振り向くがそこには何もない。

「キミタチ、ついてこれてないでしょ?」

 背中にチクリと痛みが走る。

「直樹さん!!」

「直樹!?」

 天狗が、短刀を俺の背中に突きつけていた。少しでも動けば命はないと無言の圧力がかかる。

「おーい!」

 空気が読めていない神様が呼んでいる。天狗もそちらを見た。

「流石は天狗といったところだね! しかしいくらなんでもそれで人を刺すのは難しくはないかな!?」

 何を言ってるんだお前は。人を刺せない刀があるか。

「ホント、バカばっかり。それなら刺して確かめてみようか?」

「お、おい!! ……って、おや?」

「な……っ!?」

 背中に力が入るが、痛みはない。振り返ると、天狗が持っていたのはただのスプーンだ。

「な、なんで!? ボクは確かに……!!」

「やれやれ、いきなり随分と物騒ではないかね? これでは僕も困るよ」

 呆れたように呟く神楽がクルクルと回しているのは、間違いなくさっきまで俺の背中で存在感を放っていた短刀だった。

「なっ、なんだオマエ!? 困るってどういうことだよ! ボクの刀を返せ!!」

「……なに? 今、龍一なにしたの?」

 俺もまったく分からなかった。

 短刀が勝手にスプーンに変わったとしか思えない。

「くそっ! こうなったら!」

「あっ!? こら待ちなさい!!」

 思わぬ事態に動揺したのか、天狗は一目散に逃げ出した。

 ちょうどその時、天狗の進行方向に碧海が現れた。天狗は構わず直進する。

「凛さん! 捕まえてください!」

 小夜の声を受けて戦闘態勢に入る碧海。

「……ジャマだよ! 死んじゃえ!」

「危ないっ――!!」

 

 

「――だから危ないって言っただろ」

「ボクに言ったなんて聞いてないよ!?」

「藤阪たちの叫び声が聞こえたので慌てて駆け付けたが、大事に至らなくてよかった」

 天狗は岩に縛りつけられていた。碧海が襲いかかる天狗にカウンターで当て身をくらわせ、そのまま地面に叩き付けたところで相手は気絶したのだ。

「何よ、あんた全然弱いじゃない」

「うるさい! ボクだって調子がよければ負けないよ!」

「天狗っていうから山伏みたいにゴツいおじさんだと思ってましたけど、完全に子供ですねー」

「本当にこの子が悪戯したのかしら」

 合流した辻と松崎が怪訝な顔をする。他のメンバーも神楽が呼びに行った。

「わたしももっと怖い方だと思ってました」

「うるさいうるさいうるさい! 天狗をバカにするなー!」

 小夜にまで言われた天狗が手足をばたつかせるが、岩はビクともしない。

「まぁともかく、そんなことはどうでもいいのよ。これでじっくりと憂さ晴らしできるわ」

「た……たすけてー!!」

 サディスティックな笑みを浮かべた藤阪に本能的な恐怖を覚えたのか、今までの強がりも捨てて喚いている。

「……あ、あの、なんだかやりすぎだと思います……」

「どうしてだ?」

 小夜がおずおずと意見を口にした。

「もしかしたら天狗さんがイタズラしたわけではないかもしれませんし……、それに……」

 ちらりと藤阪の方を見る。

「よし、まずは火あぶりにでもしてみましょうか。満月、その辺から燃やせそうな枯れ枝集めてきて」

「はーい」

「待って待ってちょっと待ってーーー!?」

「……あれはさすがに……」

「……いやまあ……そうだな……」

 それなら藤阪に直接、と言いたいところだが、生憎それは出来ないので俺が代弁してやることにした。

「……なあ藤阪、流石にやり過ぎじゃないか?」

「何よ。文句あるの?」

 強いて言えば何倍返しだと訊きたい。

「そいつももうここまでやれば反省してるだろ。そろそろ放してやってもいいんじゃないか?」

 チラリと天狗を見ると、懸命に頷いている。

「……でも……」

「お前の気が済まないなら止めないけどな。とりあえず女将さんに引き渡してみないか?」

 俺の提案に藤阪は暫し考えていたが、やがて、

「……そうね。あたしもそれでいいわ」

 そう言って縄を解き始めた。

「ゆ、許してくれるの?」

「あたしはね。旅館の人にはきちんと謝りなさいよ」

 そうして岩から解放してやる。

「……お……」

「ん?」

「お人好しで助かったよ! やっぱりボクを捕まえるなんて百年早かったね!」

 なんと逃げやがった。

「…………直樹」

「な、なんだ?」

「あんたが余計なこと言うから……」

 いやまてそれは濡衣だ。大体お前だって納得しただろ。

「ていうか凛! あんた止めなさいよ!」

「――確かに、私が止めた方がよかったかもしれない」

「え?」

――バゴオォォォン……!!

「きゃ!? な、何よ今のは!?」

 突如、謎の轟音が辺りに響き渡った。

「めちゃめちゃな音がしましたねー……」

「……あら? ネーベルさん?」

 やがて轟音のした方角からネーベルが現れた。

 ……何かを引きずりながら。

「……あ、あの、ネーベルさん……それは一体……?」

「なんだ、貴様らは捕まえられなかったのか? こいつがいきなり出てきたからとりあえず行動不能にしてみた」

 真っ黒な灰となって生死さえ危うげな天狗を見ていると、改めて妖怪と人間の認識の違いを思い知らされた。

 つーか『してみた』というレベルではない。

「……とりあえず、旅館に戻るか……」

「……そうね……」

 こうして俺達は、何とも居心地の悪い沈黙の中、旅館へと引き返していった。

 

 

「……あの、直樹さん、なにか忘れてしまっていることがあるような……」

「うん?」

 

 

「うにゃー! ここはどこなのじゃー!?」

「心配するな玉藻君! ここを右に曲がればすぐに旅館さ!」

「『右に曲がれば』ってそれじゃ1周するだけだろう! ホントに君は大丈夫か!?」

「……朝までに帰れればいいが、な」

 


 

直「ああ、お前達か」

神「それはないだろう直樹氏! 僕らが決死の思いで生還しようとしているというのに!」

智「もともと君が来なければ何の障害も無く戻れたのだが」

玉「うむ、そうじゃの」

死「心配は無用だ。仮に食料が尽きても3人が3日過ごせるだけの肉は取れる」

神「なんと!? 黄泉君それはどこから取るというのだね!?」



というわけで天狗(♂)のお話でしたー!

前回の振りで少しでも『女の子かな?』って思った人はちょっとそこに座りなさい。


実を言うと男でも女でもどっちでもよかったという適当なキャラクター設定なのですが、『まぁ女の子いっぱいいるしたまには男でいいか〜』という適当な理由でめでたく性別が決定した彼でございます。


ちなみに本名はもう少しだけ秘密。

別に秘密にする大した理由があるわけではありませんが。ここでいうのも味気ないので。


さて次回は、いよいよ本腰を入れて真相解明に乗り出す感じです。

別に暴くだけの謎もありませんけどね。


ではではー!

 


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