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第101話:厄神様はかく旅立ち

人気投票に参加してくださった皆様、ありがとうございます。

思った以上にたくさんのメッセージを頂き驚天動地でございます。


ですがまぁ人の欲望とは限りないもので(以下略)

というわけで、まだまだ人気投票は続いております!


今まで感想を送ったことがない貴方も!

キャラクターに並々ならない愛情を抱く貴女も!

最近肩がこったなぁと感じているそこの人も!

よろしくお願いします。


では、またしても最終回で使えそうなサブタイトルを食いつぶしつつ第102話です。

 温泉宿までは、電車で約3時間。

 世の中には少しでも早く迅速に行動して見るべきものは全て見てしまおうという考え方をする人々もいるようだが、俺は無理せずのんびりと移動するのが趣味だ。

 何故かと言えば折角旅行をしている以上普段の生活は忘れるべきであり、それこそ心を亡くすほど忙しい現代人はそういうときこそ心安らかにゆとりを持って行動すべきなのだ。

 少なくとも俺はそう考えており、今回も父さんがレンタカーを借りて行こうというのを敢えて断りガタンゴトンと揺られている訳だ。

 ところがそんな理想と言ってもいい状況下で俺は精神を現在進行形ですり減らしている。

 何故か? 答えは簡単だ。

「確か狭山の持つ券は有効人数が5人だった筈だ。このままでは人数が多すぎるな」

「あら? じゃああんたが行くの止めればいいんじゃないかしら?」

 ……席の後ろからこんな会話が延々30分続いていれば誰だって逃げたくなるわ。

 

 

 3連休の初日だというのに席がガラガラで経営状態を心配してしまうような鈍行列車に乗ったのはだいたい9時頃。この調子なら昼頃には到着するだろう。

 そしてその列車は座席が全て進行方向を向いた2人掛けであり、小夜を除いた6人がどのように座るかで一悶着あった。いや、これは後ろの2人とは関係なく、

「では葵さん、座ろうか」

「何言ってんのエロオヤジ」

「凛さんはどうかね」

「私も遠慮させてもらいます」

「ならば君しかいない! 玉藻さ――」

「近寄るなばかものーーー!!」

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ……とまぁこのようにどこかの他人がおかしなことをほざき始めて玉藻に全力で引っ掛かれ、結局気絶している間に死神とペアにした。

 で、これはどう考えても俺の判断ミスだったわけだが、玉藻を放っておくと何をしでかすか分からないと他の懸案事項を全て失念して俺が玉藻とペアになったため、残る2人が同じ席を共有することとなってしまった。

「……はっ! 葵さんは!? 凛さんは!? 玉藻さんは!?」

「起きたか父君」

「なんてことだ! おい直樹これはどういうことだ!」

 ……なんでだろう、本当に放っておくと何をしでかすか分からないのは俺の隣にいる奴ではない気がする。

「ねぇ直樹、本当にあんたどうすんの?」

「このままでは誰か1人が泊まれなくなってしまうかもしれないぞ」

 後ろからもっともな指摘を受け、どうしようかと考える。

「なんじゃ? それならわらわが小さく――」

「お前は黙っとけ」

「……ていうか、その子誰?」

 俺は藤阪にも以前辻に対してしたのと同じ説明をし、以前の辻と同様に怪しむ藤阪に碧海が援護射撃をすることでようやく納得してもらえた。

「あたしは藤阪葵。玉藻、でいいのね?」

「うむ! よかろう!」

「……なんかすっごい偉そうね……」

 さて、真剣に対策を練らないとまずい気がしてきた。

 とりあえず死神から預かったサービス券をよく見ると、その旅館の電話番号が載っていた。

「それじゃ、向こうの旅館に電話で訊いてみる。適当に待っていてくれ」

「ん、わかった」

 鈍行列車が駅に止まっているうちにホームに降りて旅館に電話をする。列車内で通話しないのは最低限のマナーだしな。

『――はい、もしもし』

「あ、もしもし。昨日連絡した狭山なんですが」

『はい、承っております。どのようなご用件でしょうか?』

 俺は人数が増えたこと、その場合たとえサービスは受けられなくても泊まること自体は可能なのかを尋ねた。

『……少々お待ち下さい。只今検討してまいりますので、またこちらから折り返しお電話させていただきます。ただ、恐らくご宿泊はできるかと』

「すみません。ありがとうございます」

「直樹さーん! もうすぐ電車が出発してしまいますよー!」

 電話を切り、腕を大きく振って急かしている列車に戻る。まだ断言はできないが、なんとかなりそうだ。

「あとは向こうに行って確認かな……」

「まーきっと大部屋になってるでしょうから、今さら1人や2人増えたところで変わらないんじゃないですかねー」

「そうだな……って」

「うーん、やっぱり急いでセットしたからちょっと髪の毛はねちゃってるなー。寝坊しなきゃよかった」

 ……待て。

「なんでお前がここにいる」

「え? おー! センパイじゃないですかー!」

 わざとらしすぎるんだよ。質問に答えろ。

「いやーこの辻満月、たまたま駅前を歩いていたらセンパイたちの姿を発見したもので、思わずついてきてしまいましたー」

「そうか、思わずついてきたのか」

「はいー、思わずついてきたんですー」

 ならばその大荷物についても説明してもらおうか。

 辻は下手したら自分よりでかいんじゃないかというくらいの馬鹿でかいリュックを抱えていた。しかもパンパンになっている。明らかに『たまたま駅前を歩いていた』時に持つべき荷物ではない。

「まー細かいことは気にせずに。あんま神経質になってるとハゲますよ?」

「やかましい! いいからお前はとっとと帰れ!」

「きゃー!! 痴漢ー!!」

「お前は馬鹿かーーー!?」

「いたぞ! 痴漢だ!」

「こんなときだけ対応早いなこんちくしょー!!」

 

 

 で。

「……なにやってんの? あんたは……」

「俺は無実だ」

「あ、皆さんこんにちはー! ん? 今はおはようですかね? それじゃ皆さんおはようございますー!」

「……お、おはよう……」

 駅員に有無を言わさず連行されそうになり、車内に知り合いがいるからと何とか踏みとどまり、というかそもそも冤罪もいいところなのだからこんなことをされる筋合いはないのだが、それでも何故か列車の1車両を使って尋問まがいのことが行われている間に他の奴らがやってきた。

「あの、その女の子もあたしたちの知り合いでただのイタズラですから、相手にしないでください」

「なるほど。では私はこれで」

「……謝罪の1つもなしで帰っていったし……」

 相手が相手なら訴えられてもおかしくない状態で勝手に退場した駅員を呆然と見送る俺の後ろで、また別件の尋問が行われていた。

「で? あんたはなんなの?」

「やだなー、藤阪センパイたちだけ温泉旅行なんて不公平じゃないですかー」

「答えになっていないぞ……」

「まぁただ単にこの前のセンパイたちのやりとりを盗み聞――偶然聞いてしまったからなんですけどねー」

 容疑者に反省の色はないようだ。あったらとっくに帰ってるか。

「直樹さん、結局温泉宿の方は……?」

「たぶんなんとかなるだろ……」

「随分と疲労が溜まっているな。温泉で疲れを癒すといい」

 そうなるといいな、本当に。

 

 

「うわーーー!! なんじゃお主はーーー!?」

「あ、この前の従姉妹さんじゃないですかー。まだ帰ってなかったんですかー?」

 列車内に俺達しかいなくて良かった。こんな騒いでいたら確実に顰蹙を買ってるところだ。

「……なんだ、随分騒がしいな」

 辻と玉藻がぎゃーぎゃーやっている内に、横が女の子じゃないからと眠り始めた父さんが目を覚ましてしまった。そういえば辻は……

「……あれ? センパイ、その人誰ですか?」

 ……父さんに会ったことがない!

「辻、離れろ! そいつは危険人物だ!」

「やぁ、うちの直樹がいつも世話になっているね。父親の智和だ」

「あ、お父さんですかー」

 早いなあのオヤジは。

「私は普段海外で仕事をしていてね、直樹がどんな生活を送っているかあまり把握していないんだ。よければ聞かせてもらえないかな?」

 呆れるほど人をだしに使って隣の席を確保しようとする父さん。

 さりげなさを装って辻の肩に手を回し――

「――あだだだだだだだだっだっだっだあぁぁぁぁ!?」

「あー、駄目ですよー? あんまり迂闊に人の体に触っちゃー」

「す、すまない、いやごめんなさい!! いやちょっとそれ以上捻ると――!!」

「えい」

 合掌。

 誰一人として口を開かない車内、1人増えたメンバーを乗せた列車は目的地へとひた走るのであった。

満「センパイのお父さんって変わった人ですね〜」

直「俺にはお前の方が変わってるように見えるよ」

葵「……あたしもこのくらいやってよかったのか」

凛「いや、これ以上は危険だと思うが……」



というわけで辻さん襲来。

ファンの皆様、お待たせいたしました。

流石にこの作品のパワーバランスの一角を担うラブコメ要因を置き去りにはできないので登場してもらいました。

我ながら無茶苦茶な登場の仕方だと思いますが、それでも『辻ならなぁ』と心のどこかで思ってしまうのは何故でしょう?


さて、宿の方は既に経営意識を忘れておりますがきっと大丈夫でしょう。

そんなこんなで次回に続きます。


ではでは!

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厄神様とガラスの靴
こっそり開設。
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