ハッピーエンドを目指そう!!!その2
バルトロスはアーダルベルトの横を通り過ぎると、私を隠すように立ち止まった。私を射ぬくその瞳は一見優しげに見える。しかし奥の方で嫉妬の炎が揺らめいているのが分かった。
「君がどういうつもりでクリスティーナに触れようとしたのかは追求しないよ・・・聞いてしまったら、次の瞬間には聖騎士隊長の席は空になっているだろうからね」
どこまでも低い声色で私の頬を撫でながらバルトロスは背後に立つアーダルベルトへと淡々と言葉を放つ。実力ではアーダルベルトの方が上のはずなのに、持って生まれた覇王の気でその実力さえ凌駕してしまいそうだ。事実、アーダルベルトの手は帯剣に伸ばされている。その顔は、死を直面したときのそれに近い。
「君には期待しているんだ。その若さで隊長にまで上り詰めた実力を、私事で手放すなんて・・・してほしくはないんだよ」
先程よりは優しい、言い聞かせるような話し方なのに反論する余地がどこにもない。ただの人なら疑問も持たず素直に従ってしまいたくなるだろう。その力をバルトロスは持っている。
「いくら私のクリスティーナが魅力的でもね・・・」
「・・・・申し訳ありませんでした。以後、気を付けます」
王になるバルトロスへの忠誠と私への恋慕、彼が選んだのは前者だった。それはそうだ。バルトロスに逆らえばこの国で生きるのは愚か、命さえも失いかねない。彼の選択は正しいのだ。
「まったく、私の愛しい人は目を離すとすぐに虫を引き寄せるんだから・・・お仕置きが必要だね?」
アーダルベルトが部屋から出ると、標的は私に移った。国中の女性が惚れるだろう王子様の笑顔で天蓋付ベッドへ押し倒された私は、先程確保したはずの処女が再び危機を迎えたことに焦りを感じたのだった。