ハッピーエンドを目指そう!!!
まずは王子ルートから。最初は甘甘から・・・一番残虐性には乏しいルートです。(もしクリスティーナが王子ルートを選んだら)
「嬉しいです。早くバルトロス様だけのものになりたいです」
私は満面の笑みでバルトロスに向かってそう言った。するとバルトロスは一瞬だけ素の表情を向けたかと思うと、私の腕を引いて抱き寄せた。ふわりと香る彼の香水は、まるで媚薬のように私を麻痺させる。
「嬉しいよクリスティーナ・・・私と同じ気持ちでいてくれるなんて。ああ、こんなに可愛い婚約者を誰にも見せたくはないよ。君の笑顔も怒った顔も泣いた顔も・・・勿論私に抱かれて喘ぐその姿も、1つたりとも見逃したくない。誰にも見せてなるものか」
無数のキスを私の顔に降り注がせるバルトロスは、今すぐ此処で私を抱いてしまいたいという顔をしていた。しかし私は腐っても公爵令嬢。体裁第一は当たり前です。怪しい手つきになり始めた彼の腕を止めて愛しいものに向ける笑顔を浮かべた。
「ふふっ、バルトロス様駄目ですよ?こういうことはきちんと夫婦になってからでないと、私とバルトロス様の貞操を疑われますわ。そうなれば私はバルトロス様から離されるでしょう・・・そんなの悲しいです」
「そうだな・・・夫婦になればいくらでも君を啼かせられる。暫くは我慢することにしよう」
とりあえず結婚式までは私の処女は無事だと思う。しかし王子ルートを選べばもれなくついてくるのが・・・
「クリスティーナ様・・・」
「・・・ごきげんようアーダルベルト様」
バルトロスに一番近く常に一緒にいる彼、アーダルベルトが王子ルートに入ればもれなく私達の邪魔をしてくる。この役目は本来なら私の役目だったはずだけど仕方ない、私がヒロインの場所にいるのだから・・・まあアーダルベルトも好きな人が主人であるバルトロスの隣に立つのはやはり嫌なんだろう。ただ想ってくれるだけなら良かったのだけどこれはヤンデレ乙女ゲーム。ヒロインに優しくないんだ。
「本日は私とバルトロス様の護衛をしてくださりありがとうございます。聖騎士隊長の貴方様に護られるなら、安心してこの身を任せることができますわ」
「いえ、王族であるバルトロス様とその婚約者であるクリスティーナ様をお守りするのは当然です。それに、美しいクリスティーナ様を間近で拝見できるなら、私は喜んでその任に就きましょう」
端整な顔で溶けるような笑みを浮かべれば、世の女性は皆さん虜になってしまうでしょうね。この若さで隊長まで上り詰めた実力と器量は、王子に続き人気があるらしい。前世ではこのアーダルベルトとバルトロスのCPが腐女子には大変好評だった。
「クリスティーナ様?」
「ごめんなさい、少し疲れてしまっていて・・・バルトロス様はまだお戻りにならないでしょうか」
つい先程、急な会議が入ったとかで名残惜しそうに去っていったバルトロスを思い出す。終わり次第戻るからと私は来賓用の客間に通されていたのだ。アーダルベルトは私の護衛として残ってくれた。つまり今此処には私とアーダルベルトの2人だけ・・・
「そうですね、王子の力量次第ですがさほど時間はかからないでしょう。クリスティーナ様は私といるのはお嫌でしょうか・・・」
「いいえ、ただあまり慣れない場所にいますから不安なだけですわ。私からすればアーダルベルト様のような立派な役職の方が私のようなもののためにその身を拘束させるのはとても申し訳ないです」
婚約者だからと言って聖騎士隊長に我が身を護らせるのはとても罪悪感が芽生える。優先して護られるのはこの国の王や未来の王であるバルトロスであるはずだ。それなのに彼が私から離れないのは簡単に言えば私との時間を共有したいから。ヒロインが次代の王妃のプレッシャーに押し潰されそうになったとき、バルトロスの次に多くの時間を共有したアーダルベルトへ気持ちが流れてしまうのも頷ける。大体、なぜみんな恋人になるまでは紳士的で徐々に本性を見せるのか・・・
「そんなことは気にする必要ありません。貴女は私にとってもとても大切な女性です。その大切な貴女をお守りできることは私にとって誇りです」
「ふふっ、アーダルベルト様のように素敵な方にそう言っていただけると心強いですわ」
獣のような鋭い瞳で私を射ぬくように見つめるアーダルベルトは私との距離を縮めるように近づいてくる。あと少しで伸ばされた手が私の髪に触れるところで、聞き知った声が扉の方から聞こえた。
「アーダルベルト、私の婚約者に触れることは赦さないよ」
「バルトロス様・・・」