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湧き上がる思怨

拐われたクリスティーナ視点の前におにいたま視点を。おにいたまの推理が始まるぜ!!

「クリスティーナ?」


急ぎのものだけを終わらせ最愛なるクリスティーナの待つ貴賓室へ戻るも、あの涼やかな声は聞こえない。


「クリスティーナ?」


隣の寝室や浴室、念のためクローゼットの中も確認するが、姿を見つけることはできなかった。彼女がいない、それだけで湧き上がる不安と恐怖。そしてまさか、という言葉も浮かんでくる。まさか俺との結婚が嫌で逃げ出したのでは・・・まさかまだあの王子のことを好きでいるのではないか・・・考えれば考えるほど悪い方へ向かってしまう。そして同時に生まれる殺意にも似た感情。


「体調が良くないとでも言って断ればよかった。それが出来ないならいっそ、俺なしでは移動すらできないように足の腱でも切っていれば、彼女は大人しくここで俺の帰りを待っていたのに」


あの綺麗な足に傷があるのは惜しいけど、こうして居なくなられるよりはずっとましだなと思い、見つけ次第そうしてしまおうと短剣を懐にしまう。


「さて、俺のお姫様はどこに隠れてしまったのかな?ふふっ、ちゃんと見つけてあげるから、心配しないで待っててね」


まずは彼女に付いていた侍女でも探そうと、部屋の扉をゆっくりと開いた。









「君、クリスティーナに付いていた侍女だよね?その後ろは護衛の騎士かな?」

「ミハエル公爵様!!」


長い廊下を進んでいくと、慌てた様子の侍女らしき女と騎士が二人、此方に向かって走っていた。俺は女の顔に覚えがあり誰だったか記憶を探る。そしてこの女がクリスティーナに付いていた侍女だったと思い出したのだ。


「良かった。部屋に戻っても誰もいなかったから探していたんだよ。・・・ところで、クリスティーナは何処かな?一緒にいるはずだよね?」


笑顔の仮面を被り相手を安心させる。今の俺の心情を表面化してしまったら、きっと彼等は恐怖してしまうだろうから。


「それが、少し前から行方が分からないのです!クリスティーナ様はお庭に散歩に出られたのですが・・・そちらはすでに隅までお探し致したのですが見つけられず・・・」

「一緒にいたのだろう?それで見失ったと?」


だとすれば職務怠慢も甚だしい。処分されても文句は言えないだろう。公爵家の姫と一介の侍女の命じゃあ、重さが違いすぎるからね。


「確かにお側にいたのですが・・・その、・・・」

「言ってごらん?大丈夫、誰にも告げ口したりしないから」


城使えの侍女が口をつぐむのは雇い主が関係しているから。王と王妃は除外だな。彼等は明日になれば顔を会わせるのだから無理矢理拐ったりはしないだろう。となると考えられるのは・・・


「バルトロス王子かな?彼が関わっているのではないか?」


瞳孔の開いた眼と落ち着きのない指先、もう少し平静を保てるようにならなければ侍女失格だろう。まあ今はそんなことどうでもいいか。


「もし、クリスティーナになにかあれば・・・私は君達を訴え処罰してもらうこともできるのだけど。勿論、城使えを辞めさせたり騎士の資格を剥奪するだけじゃ許されない。その命を捧げてもらう」


その言葉にカタカタと震え出す侍女。騎士の方は僅かに動揺を見せる程度。そこはさすがだと誉めてみるも内心は焦っているだろうな。侍女の方は、この震えようだとそろそろ耐えられないだろう。人間、自分の命と天秤にかけられるものなんかないのだから。


「・・・っ、実は、バルトロス殿下が少しだけクリスティーナ様と二人きりにしてほしいと・・・ちゃんと護衛もついているから安心してほしいと仰られたので私達は、席を外しました。ですが私達が戻った時にはもう、クリスティーナ様はいらっしゃいませんでした!!もしかしたら庭で迷われているのではと捜索したのですがいらっしゃらず、お一人でお戻りになられたかもしれないと、急いで部屋に向かう途中でした」

「そうか・・・」


後ろの騎士が口を出さないということは、侍女の言っていることは概ね正しいのだろう。しかしあの男は未練がましいな。なにをしても手に入るわけがないというのに。


「では、君達には道案内をしてもらおうか。王太子の部屋までね。それができたら、この件はなかったことにしよう。それと、クリスティーナが居なくなったこととそれにバルトロス王子が関わっているかもしれないこと、そして私が王太子の部屋に入ることは他言無用だよ。守らなければ、分かるよね?」
















「此方がバルトロス殿下のお部屋です」


部屋へ突入する前に扉の前で見張りをしている騎士と連れてきた騎士を交代させる。こうすれば中でなにがあっても邪魔が入ることはない。侍女ももう用済みだから貴賓室へ戻るよう命令した。


「さてと、まあ、素直に部屋に閉じ込めているわけはないか」


あの王子のことだ。クリスティーナがいなくなれば一番に自分が疑われるだろうことは分かりきっているはず。だが自室から遠くに隠すことはないだろう。彼の婚約者がいつ部屋を訪れるか分からないし、俺が彼の立場ならいつでも会いに行ける距離に繋いでおくだろう。となれば考えられることはただひとつ。


「隠し部屋があるはずだ。多くの城には王族の脱出用の隠し通路があるんだ。その延長で部屋くらい作ってあっても可笑しくはない」


あるとすれば寝室のほうか?俺は華美な応接室から寝室へ移動した。中へ入ったが造りが豪華なだけで他となんら変わりはない。念のため壁に細工がないか調べるも特に変なところはない。考えられる残りの可能性はやはり・・・


「クローゼットの壁か?」


物置ほどある広いクロ―ゼットなら隠し扉があっても不思議ではない。壁と同じく白い扉の鈍く光る取っ手に手をかけると、音を立てないように手前に引いた。さすが王子様の衣装だけあり見る服全てが貴族のそれより上質である。それらを避けながら無駄に細工の施された壁に違和感がないか調べると、よくよく確かめないと分からない亀裂のある場所を見つける。本当にほんの僅かなものだから手練れの騎士ですら気付かないだろう。しっかりと閉ざされているから風すら通らないし。


「ふむ、あとはこれの開き方だけど・・・さすがに押したりして開くものではないか」


試しに軽く押すもなんの反応も示さない。ということはどこかに扉を開くスイッチのようなものがあるはず。執事や侍女が中で作業をしてもなんら不思議に思わないもの・・・目立たず、しかしそこにあっても誰も違和感を抱かないもの・・・俺はじろりとクロ―ゼット内を見渡した。


「怪しいのは、壁に取り付けられているフックだけど・・・」


左右の壁に数個取り付けられたフックに視線をやる。念のため引っ張ってみるもびくともせず予想は外れる。


「まあ、明ら様過ぎるか。となれば・・・残るはこの収納棚くらい・・・」


ほとんどがポールに掛けられている中、式典行事のみに使うもの

は丁寧に梱包され木箱に入れられ保管されている。それらを置くための小さな収納棚が奥の壁際にちょこんと存在しているのだ。引き出しもあるものの小さく、入れるものといえば装飾品のみなので持ち上げようと思えば簡単に移動させることができる。実際にさほど鍛えていない俺が出来たのだ。護身のために稽古をしている王子なら楽々だろう。それに何度か移動させたことがあるらしく、棚のあった場所の床は僅かに擦れ跡が残っていた。でもそれも実際に動かしてみないと気付かない程度だ。俺は床に膝をつき不審なところはないか眼を凝らして見た。すると、壁の隅、ちょうど角の所が少しだけ欠けていることに気づいた。これはなにかあると、懐に収めていた短剣を鞘から抜き、その欠けた部分に突き刺した。そして梃子の原理で短剣を奥に傾けると、かぽっという音とともに床の一部が外れたのだ。


「なるほど、壁のフックは囮か。人間、探し物をするさい自分の目につきやすい場所を重点的に探す癖があるからね」


外れた床板の下には取っ手のようなものがあり、それを手前に引いてみると、あの亀裂のあった場所ががこっと音を立てて開いた。直ぐ様中を覗いてみると壁に沿って階段が上に延びており、それを照らすように壁に掛かったランプが煌々と灯していた。それはつまり誰かが、この場合はバルトロス王子とクリスティーナがここを通ったことになる。俺は逸る気持ちを押さえつけて、彼女の待つ階段の先へ足を進めた。



物置ほどあるクロ―ゼット羨ましい。ただ私の中のでお城の物置程度の解釈は約4畳半以上と考えているので書きながら「もう部屋じゃん」と自分に突っ込みを入れる始末です。ちなみに床の仕掛けは真実はいつもひとつのあの眼鏡の少年の劇場版で使われたものを参考にしております。どの作品か分かる人はお友達になれそうです!!

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