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答え合わせ

『お義兄様・・・私達の婚約はなかったことにしましょう』





終わりの言葉を告げた後の沈黙はさほど長くはないはずなのに、とても重く永久に続くように感じた。私は、この誠実な義兄ならば私に申し訳ない気持ちになりながらも彼女をすぐに選ぶだろうと思っていたのに、俯いた義兄はなにも言わずただ肩を震わせていた。




泣いているのだろうか・・・


私に対する罪悪感から。彼女に対する申し訳なさから。そんなに気にしないでも私は許しているのに。知らなかったとはいえ義兄の気持ちについ最近まで気付かなかったのだ(彼の本来の想い人は正規ヒロインのはずだったから)。だから義兄の気持ちが私ではない彼女に向いたとしてもそれは仕方のないこと。人の気持ちは決して永遠ではないのだからいつどうなるかなんて本人でさえ分かるわけがない。だから一言『すまない』とだけ言って彼女のもとへ向かっていけばいい。いつかはこの胸の痛みもなくなって、私もいつか誰かを好きになれると思うから。


それでも義兄はなにも言わず体を震わせてなにかに耐えているようにも見えた。そしてやっと彼の顔が上がったと思った瞬間、私は硬直した。だって・・・




「ふふっ、クリスティーナ、とても面白いジョークだったよ。あんまりにもくだらなすぎて笑いが止まらなかった。ククッ・・・」


義兄は笑っていたのだ。瞳だけは冷たいまま、声を堪えて沸き上がる感情を抑えるようにして、義兄は体を震わせていた。これは怒りだ・・・恐らく収まりのつかない怒りをなんとか留めようとまったく別の感情で相殺しようとしているのだ。わからない・・・なにが、私のどの言葉がこの義兄を怒らせたのかが。


「俺が、クリスティーナ以外を、抱いたって?クリスティーナにしか反応を示さないこの体が、一体誰を抱いたっていうんだい?教えておくれクリスティーナ。一体、誰がそんな有りもしない嘘を君に吹き込んだ?」

「お義兄様・・・」


怖い。瞳だけを爛々と光らせて一歩、また一歩近付いてくる義兄が怖くて、私は無意識に後ずさってしまった。


「俺の可愛いクリスティーナに酷いことを言わせた女は処分しないと。さあ、教えておくれクリスティーナ。その可愛らしい唇にあのような残酷な言葉を言わせた物を・・・君に無理矢理言わせたくはないんだ。言えるね?」

「処分、とは・・・お義兄様、酷いことはされませんよね?口頭注意で済ませてくださいますよね?」


ゲームで私がされたことを思い出して身震いする。確か私ことクリスティーナは義兄の想い人のヒロインを事故に見せかけて殺害しようとした罪で表向きは修道院行き、でも実際は公爵となった義兄の手により闇でコレクターに売られ、美しい容姿のまま剥製にされ永遠を生きた(体だけ)はず・・・そんな片鱗をまったく見せなかったから安心していたのに!!確かに被害者は私でなくなったけれどやはり誰かが似たような未来を迎えるかもしれないのは夢見が悪い。できれば穏便に済ませていただきたい。結局私は破棄する前に真実を知り、義兄を諦めなくてよくなったのだから。


「・・・・・クリスティーナが俺のお願いを聞いてくれるならば、それで我慢してあげるよ。あ、お願いは婚約の破棄の撤回ではないからね?」

「分かりました。私のお願いを聞いてくださるのですから、私もお義兄・・メリオロス様のお願いを叶えますわ」


私が頷けば義兄は今までの凍えるような冷笑を引っ込め、いつも見せる優しい笑みに戻してくれた。そして私の手を取ると慣れた手つきでベッドに腰かけた。私はと言えば、ベッドに腰かけた義兄の膝に座らされ義兄の両腕で腰をがっしりと固定されてしまった為、そこから動けなくなった。そして義兄に促され、今日あったことを洗いざらい白状させられた。





「俺はその令嬢と面識はないよ。名前も初めて聞いたな・・・まあ、大方俺達の婚約を聞き付けた子爵?男爵?まあどちらでも構わないけどそこが横槍を入れてきたんだろう。大抵の貴族の男は結婚前に女性と関係をもつから俺もそうだと勝手に予想してその令嬢を相手役として送り込んできたのではないかな。一応、公爵家の人間だから醜聞を恐れて俺が君との婚約を破棄してその令嬢を妻にすれば、あちらの思惑通りになったんだろうけどねぇ。誤算は俺が君以外を抱く気になれないことだったね」


そういうと私のうなじを晒けてちゅっと口付けた。私はそれに反応を見せないように振舞い話の続きを急かした。


「俺と君を結婚させたくない人がいたってことだよ。愚かだねぇ、こんな無意味なことをしても俺達を引き裂くことなんて出来やしないのに。だけどこんな茶番でも、クリスティーナが俺のお願い聞いてくれることになったんだから、すこしは役に立ったのかもね」


私達のことを良く思っていない人が・・・一瞬、バルトロスが頭を過ったけれど、彼が王族の権威を汚してまでそんなことをするとは思えなかった。彼はもうすぐ国王となるのだもの。己の気持ちだけで国を揺るがすことをするはずがないのだ。では誰が?義兄は予想がついているようだけれどなにも教えてくれないのは、私が知る必要がないということなのだろう。


「さて・・・お願いなんだけどね、もう決めてあったんだ」


弾んだ声が聞こえ振り向くと、心底楽しそうな顔の義兄がそこにいた。なんだか嫌な予感しかしないのは気のせいだろうか。


「そう、ですの?私にできることでしょうか」


言葉の裏にたいしたことは出来ませんよアピールをしてみれば、「大丈夫、とても簡単なことだから」といい笑顔つきで返ってきた。いえ、その笑顔になんの説得力もないのだから心配なのだよ。


「俺達が婚約してからまだ口付けをしていないよね?どうせなら初めてはクリスティーナからしてほしいんだ」


嫌な予感が的中!!やっぱり難題を吹っ掛けてきたよこの人は!!


「ただ唇を寄せるだけだ。簡単だろう?」


口付けさえ初めてな私に、自分からしろと・・・これ、なんて拷問なの?




次回は15禁を目指して・・・頑張るぞ!!その次の回はおにいたまによる制裁の予定です。

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