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現在の私

おにいたまのターンがだいぶ長かった。ここからまたクリスティーナのターンになります。

引きこもり生活脱却後の久々の夜会はやはり居心地が良いものではなかった。何故なら同情心隠った視線半分とあわよくば自分がバルトロスの後釜にと考える独身貴族の視線半分が終始私と義兄に纏わりついていたのだから。義兄はさらに結婚適齢期の令嬢の視線も集めていたが、一切を無視して私だけを見ていた。本当なら一曲踊れば別の誰かとなんだけど、私は今のところ誰かと踊りたくはないし、義兄も私を離さないし、結局2曲目も続けて義兄と踊ることとなった。



そうして2曲目もなんなく済ませたとき、会場の大扉が音をたてて開かれた。誰かが、しかも身分の高い人が入ってきたのだろうと入室した人物を確認するためにそちらに視線を向けると、誰でもないバルトロスが噂の婚約者を連れてやって来たところだった。挨拶は・・・した方がいいのかしら?とぼんやり思っていると、私の腰を支えていた義兄がごくごく自然にバルトロスのもとへ歩き出すではないか。これは真面目な顔をしておかなければとすっと表情を引き締めた。



「お久しぶりですバルトロス王子。おや、此方のご令嬢が王子のお心を射止めたという女性ですか」

「メリオロス・ミハエルか。それに・・・クリスティーナ」


貴公子の笑みを浮かべてバルトロスを迎える義兄と、苦々しそうに顔を歪めるバルトロス。その表情は、とても結婚が決まって喜んでいるというものではない。だけどきっと気のせいだろう。公爵家の私よりも伯爵家の彼女を選んだのなら、やはり本当に惹かれたのだろうし。私も義兄のように公爵家の令嬢の仮面を被り2人に接することにした。


「お久しぶりでございますバルトロス様。それと、ご婚約おめでとうございます。バルトロス様がお選びになった方だけあって、とても愛らしい方ですわ」

「まあ、ありがとうございます。クリスティーナ様のようなお美しい方に褒めていただき、嬉しいですわ」


本当に彼女は可愛らしいと思う。内面は知らないけれど、この外見ならばバルトロスの目に留まることも頷ける。私はよく美人だと言われるから、バルトロスは可愛いほうが良かったのかもしれない。そういえばヒロインもこんな感じの可愛い顔だったし。なら私が選ばれなかったのにも納得だ。


「本当にお似合いですよ。王子、もしクリスティーナのことを気になさっているのでしたらどうぞお気になさらずに。彼女も立ち直り既に次を考えておりますゆえ・・・ご婚約者様のことだけを大切になさってください」

「っ・・・」



義兄の踏襲が凄まじい。これでもかと言わんばかりにバルトロスは私にとって過去の産物なんだと知らしめるように言葉を紡ぐ。なんだかバルトロスが不憫に思えてならない。


バルトロス達が会場の中心へと消えていく姿を見つめながら、私は義兄に話しかけた。



「お義兄様、先程のは少しばかり意地悪ではありませんでしたか?」



意地悪な笑みでバルトロス達が去っていった方を見る義兄を諌めるように睨むと、義兄は肩を竦めて饒舌に口を動かした。



「ふふっ、クリスティーナの心を傷つけた報いだよ。あれくらい、心の広いバルトロス王子ならすぐに忘れてくれるさ」


きっとそんなことは思っていないだろうこの義兄は変わらぬ笑みで私を出口へ促した。


「さあ、長居は体に悪い。邸へ戻ろうか」














そういえばバルトロスとの婚約話がなくなったからたぶん近い内に新しい婚約者候補が出てくるはずよね。誰でも構わないけど、優しい・・・普通の人がいいわね。



なんて夢見ていた私は、次の日に義兄の婚約者になっていることを知りあまりの衝撃で丸1日寝込むことになるとは知りもしない。

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