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籠の鳥からの半卒業

出戻ったクリスティーナは再び軟禁状態へ。

白亜の王宮、花咲き誇る宮の奥に私は軟禁状態で滞在している。侍女はたった一人、バルトロスが一番信用している彼の乳母のカリーだけ。護衛というか守衛に近しい人もバルトロス自ら厳選した有能な兵士だ。アーダルベルトは公式の場では私とバルトロスの傍にいるけれど、バルトロスがいない場所では近付けないようになっていた。


「暇だわ・・・」


私のために誂えたというふかふかのベロア素材の椅子に深く腰を降ろし、カリーが淹れてくれた薔薇の香りがする紅茶を一口含む。喉を流れるたびに鼻に抜ける薔薇の豊かな匂いが荒みそうな私の心を落ち着かせた。



「カリー、私外へ出たいのだけれど・・・」

「バルトロス様の許可がないと出られませんよ?」


カリーは私付きだけれどバルトロスの命令を優先するからこういったお願いをしてもだいたいは聞いてもらえない。せっかく外は晴れていて庭の花も咲き誇っているのに・・・少しくらいバルトロスも私を信じてくれればいいのに。


「夕刻になればバルトロス様もいらっしゃいますから、その時にでも仰ってみては?」

「そうですね・・・お願いしてみます」



私がそう言えば、カリーはニコリと母のような慈愛の笑みを浮かべた。






「バルトロス様、私外へ出たいのです」



夜の帷が降り始めた頃、いつものように花を背負ってバルトロスが部屋へやって来た。そうすれば夕食の時間となり王様と王妃様、バルトロスと私で食卓を囲むことになる。今日も楽しい一時の後、バルトロスは私の部屋で私に膝枕をさせて疲れを癒している。そこを狙って私はお願いをしてみた。



「この部屋では不満なの?」



むくりと起き上がり明らかに不機嫌な顔で私を見る。



「いえ、不満などないですよ?ただ、ずっと部屋に籠っていたら病気なのではと疑われますし、そうなれば私との婚約も考え直さなければと思う者も出てくるのではないですか?」



反感を買わないように言葉を選んで口にする。その際は笑顔を忘れず、バルトロスを愛していますよとアピールする。



「今更だろう。もうクリスティーナと私の結婚式は来年に迫っているのだ。この期に及んで新たに候補を見繕うのも時間の無駄だし、第一私はクリスティーナ以外を愛するつもりは更々ない」

「ふふっ、私もバルトロス様を愛していますわ。だからこそ、私を外に出してほしいのです。貴方に愛され美しくなる私を、皆に見せびらかしたいのです」


頬に添えられた手に自らのそれを重ねれば、情欲の増した瞳で私を射抜くように見つめるバルトロス。始めの頃よりも執着が強くなった彼は惜しみない愛情を私に注ごうとする。言葉や贈り物ならまだいいのだけれど、我慢が効かなくなるとキスだけでは済まないから此方も試行錯誤して彼を甘やかさなければいけない。目指せ脱ヤンデレを目標にしているから出し惜しみはしないのだ。ツンなんて見せたら最期、私は生涯幽閉の身だ。



「見せなくてもいいよ。こんなに美しいクリスティーナは私だけが知っていればいい・・・こうやって私の口付けで頬を朱に染めることも、柔らかな肌も、全て私だけが・・・」

「大丈夫ですよ?私の全てを知っているのはバルトロス様だけですわ。ちゃんと傍にカリーを置きますし、行くのは人の少ない温室やお庭ですもの。もし心配でしたら会いに来てくださいませ」



必死だ。たかが外を歩く権利だと侮るなかれ。ここに戻ってきてからバルトロスなしで出歩いたことなど一度もないのだ。昼間に自由に外を歩ける。それだけだけど私にとっては心の安寧を保つ最後の砦なんだ。



「どうしても外に出たいの?」

「はい、私、ずっと部屋に押し込められて気持ちが沈んでいくのが分かるのです。バルトロス様がそうさせるのだと思うと・・・貴方を嫌いになりたくないのです。こんなに愛しているのに・・・」

「クリスティーナ・・・」



切なげに瞳を揺らせば、彼も少しばかり思うところがあるのか眉尻を下げた。


「分かったよ。君に嫌われるなんて耐えられない。そんなことになれば私は君から思考までも奪ってしまうだろう。意思のない人形なんかにしたくはないからね。嫌だけど、君に自由をあげる」

「バルトロス様!!やはりバルトロス様は私のことを分かってくださるのね!!嬉しいですわ!!」



本当に嬉しくて目の前の彼に抱きついた。はしたないと思うかもだけど今の私にはそんなことはどうでもいいのだ。自由という言葉がなによりも嬉しいのだ。



「こんなにも喜ぶなんて・・・可愛すぎるよクリスティーナ」



ぎゅっと強く抱き締め返したバルトロスに、嬉しいから好きにさせた。手つきが怪しくなって脱がせようとしているけれど・・・折角許可が降りたのにまた却下されたらたまらないから少しのセクハラも我慢だ私。











こうして私は少しの辱しめと引き換えに外出の権利を獲得したのだった。








「これ以上はいけませんからね?」

「うん、もうちょっとだけ」

クリスティーナは甘やかしと誘惑を覚えた。バルトロスはヤンデレを軟化させられた。その代わりにセクハラが強化した。

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