『熱き仲間達』
一時間たったら見張りを交代の約束だったが、あまり眠くなかったので、光堂は三人を眠らせておいてあげることにした。
しかし、本当に綺麗な星だ。
住んでた所じゃ、街灯やら何やらで、こんな風に星を見れた事はなかった。
こんなに感動する事はあるんだなあ。
当たり前な事だが、感動する事、それは決して目で見える物だけから与えられる事じゃない、こういう状況、友が命をかけて自分達を手伝ってくれている、そこに星以上の輝きを見出す感動があるのも事実だった。
精神的な美
それは目に見えない、映らない、ものではあるけど、心で感じられる美しく輝く星の様なもの。
振り返ると、自分の人生で記憶に残ってる感動などは、そういう星達が多かった。
その時、マサが目を覚ます
「光堂、一時間過ぎてるじゃないか 変わるよ」
マサは光堂が自分の限界まで代わらないで起きつづけるんじゃないかと思い、なるべく自分から起きようと眠りについていた。
マサは光堂という人間を良く理解している。
「ああそうか、じゃ代わろう」
光堂は時間が過ぎていた事に、あえて気付いていなかった様に言い、眠る事にした。
勿論そんなものの言い方にもマサは気付いている。
マサも光堂と同じく辺りを警戒しつつ、夜空の星を眺めていた。
「ほんと綺麗だなぁ」
元の世界に帰ったら大好きな漫画を自分の部屋でゆっくりみよう、そして見慣れた町をお酒片手に散歩しよう。
マサは自分達が元の世界に戻った事を想像しては、嬉しくなった。
この世界も嫌いじゃないけど、やはり自分の住み慣れた場所がマサは恋しかった。
ポケットに持っていたウォークマンを出し、自分の好きな音楽を聴いて起きていた。
世界がどれだけ変わっても、自分の知ってる、好きなバンドや曲を聴ける事に、何とも言えない安堵感を覚える。
光堂もマサを知っていた。
マサがこのまま誰かに時間だよ、と言って代わる為に、人を起こす事が出来ない様な性格を。
暫らくしたら目を覚ますつもりで、光堂は眠りについた。
本当に静かな夜だ
今、聴こえるのはウォークマンから漏れるほんの微かな音
それとペレーのイビキだった
一時間が過ぎた頃
多村が声をかけた「おいっマサ 交代だ」
多村もまた、二人の性格を良くわかっている、全くこいつらは言わなきゃ代わらない、光堂はぐっすり眠りに落ちていた。
多村は今朝まで、自分がまさか黒楽町に行く事になるとは想像すらしてなかった。
自分が自ら、黒楽町に向かってる、そんな今の状況を思っては可笑しくなる、俺も物好きだよ。
しかし、こっちの世界の光堂は今無事なんだろうか?
黒楽町に何故行き、何を知ってるんだ?考えれば謎だらけだった。
この謎を何も分からず、ましてや二人だけをこの先に置いて戻る事を、多村は考えていなかった。
もう行ったら 帰れないだろうな。
両親の顔が不意に浮かぶ。
目の前に広がる道が真っ暗に見えた。
多村は今の状況下から、自分の人生が残り少ない事を悟る。
だが後悔はしない、これが今の自分の選択なのだ。
家族や仕事先の仲間を思った。
今は彼女がいなくてよかったな。
ウキ~~~~ッ、横からはペレーのイビキが可愛らしく鳴り響いている「全く」と呟いて、この状況でイビキをかいて眠るペレーを見て、何だか可笑しくなった。
多村もまた綺麗な星を静かに眺めていた。
時間がたち、多村は全く起きないであろうペレーを揺さぶり起こす
「交代だ」
「もうそんな時間?一人一時間起きてるなんて長いウキ、まだまだ眠れるウキっ」
実は多村は二時間見張りを続けた後だった。
こんぐらいしかしてやれない 本当は朝まで起きているつもりだったが、俺も少し眠くなっちまった。
多村も限界だった。
悪いなペレー、多村は心の中で思った。
ここで、自分が無理して起き、気づかない内に眠ってでもしまえば、本当に翌日、皆が無事に目を覚ませるか分からなかったから。
静寂が流れるかの様に時は流れる
光堂が目を覚ました頃には、星は消え、外は少し明るくなっていた。
見るとみんな寝ている
ペレーだな、寝ちゃったのは。すぐに分かった光堂。
まあみんな無事だし黙ってる事にした。
「おいっ、みんな起きろ」光堂はみんなを起こす
ペレーはハッとしたが、光堂の顔の合図で、皆が無事だったのを知りホッとした。
「俺とマサは、ここから歩いて行こうと思う」光堂が言った。
「馬鹿言え、まだ半分はあるんだぞ」多村はくらいつく
「それでもだ、これ以上二人を危険にさらさせる訳にはいかない」
マサも同感だった。
「車から降りよう光堂」マサが言う
「待て、俺たちは入り口まで行く 昨日ペレーとも決めたんだ」
ペレーは黙って外を見ている
「ダメだ、昨日だって危うく死にかけたんだぞ」光堂は譲らなかった。
「良いか、昨日もし歩いてたら、お前達は死んでいたんだぞ、このままじゃ着く前に死ぬ事になる」多村の確信をついた言葉だった。
「それでもだ」言い返す言葉は、思い浮かばなかったが、これ以上は巻き込めない。
車から降りようとした瞬間
「ウキーーーーッ」
ペレーが叫び、急にアクセルを全開にし車を走らせたのだ。
「ウルサイウキーッ 行くウキーッ」
多村が笑う、良いぞペレー
二人は、もう止まる気がなかった。
こうなったら、多村は絶対に何を言っても聞かない、光堂とマサも二人をここで帰らせる術がない事を知った。
例え車から降りても二人はついてくる
ちくしょう
光堂は諦め
「ありがとう」これくらいしか、お前達の行為のお返しに出来ることがない、光堂とマサは二人に礼を言った。
「それで良いんだ」微笑む多村
ペレーは、カッコつけどきだと言わんばかりに、サングラスをかけ親指を上にあげ、ポーズを決める、決まった。三人はそれを見て笑っていた。
「分かった、このまま黒楽町の入り口まで案内頼む」
「行くぞ」
「おーーーっ」
車は全速力で、道なき道を突き進む、そう黒楽町に向かって。