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ブラインドワールド  作者: だかずお
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『猿のペレー』



三人はペレーが来る間、光堂とマサが居た地球の話で盛り上がっていた。


「何だ、お前等が居た地球じゃ動物も喋らないとは、奇妙な世界だな」


「喋るほうがおかしいんだよ」

食い違う常識に、三人は可笑しくなり、声を出し笑ってしまった。


「おいっ、ビールでも飲むか?」


「そうだな、飲もう」

三人は冷蔵庫から、ビールを取り出し、手にとった。

「んじゃあ、まあ変だけど、はじめましてって所だな」多村が言った。


「変な感じだな」


「乾杯」


「昼のビールのはずなのに、外は真っ暗だから夜に飲んでるみたいだ、まったく訳の分からない世界だ」光堂は外を見てつぶやく。

外は曇っているから暗いとか言うレベルではなく、夜の様な暗闇なのだ。

マサは、大好きな酒を嬉しそうに飲んでいる、マサにとっては朝から飲むのも夜に飲むのも、いつもの日課なので、同じだった。

しかし、いつぶりだろう?

何だか、久しぶりに心から、ホッとした感じがした。

それは、今こうして二人の状況を理解してくれた友達のおかげであった。

もし自分が逆の立場なら、こいつは頭がおかしくなったのかと、笑い飛ばしているだけだったろうなと光堂は思った。


すると ピンポーン


「多分ペレーだ」多村が言った。


玄関越しに外を覗くと、一匹の猿が立っている

本当にこの猿が俺の親友なのか?光堂には全く信じられない話であった。

玄関を開けると、いきなり、その猿は光堂に飛びついて来た。

「良かったウキーっ 連絡がとれないから、心配してたんだキッキー」何とも甲高い声だったが、光堂は自分の事をこんなにも心配してくれている、見知らぬ友がなんだか嬉しかった。

気づいたらもう、ペレーが気に入っていた。

すると、部屋の奥から多村が


「ペレー詳しい話は今話すから、こっちに来てくれ」と声をかける


一通り、話終えた後のペレーの反応は馬鹿にするなと怒っていた。

まあ、当然の反応かも知れない。

「ヒドイウキーっ みんなでペレーを騙してたんだなキーっ 」


「どうしたら分かってくれるんだ、本当の話なんだよ」多村もマサも困っている


「こっちは本気で心配してたんだキッキー」

こりゃダメだペレーには分からない、光堂は思った。

しかし、光堂は少し間をおいて一応聞いてみた。

「こっちの世界の俺は何処に居るか知らないか?」


ペレーは、その言葉に怒り、光堂に殴りかかる

「俺は何処にって、ここにいるウキ、いい加減にするウッキー」


「おいっ、よせ」多村とマサは止めに入る、すると不思議な事に、怒っていたペレーはキョトンとしていた。


「お前光堂ウキか?」


「えっ?」


「匂いが少し違う」まさか、そんな事で気がつくとは、意外だったが、やっと理解してくれたペレーに三人は胸を撫で下ろす。

ようやく、四人は落ち着いて話が出来る状態になった。

「何て事だウキーっ そんな事が」

ペレーはまだ少し半信半疑の様子ではあったが。


「光堂が何処に行ったか、手掛かりを知らないかペレー?」


ペレーも全く分からない様子だった。

もう最後の手段しかない、そう。


「次は、こっちの世界のマサに電話しよう」光堂が提案する。


「ペレー電話してみてくれ」

ペレーは、まだ疑ってる様子でこちらの世界のマサに電話をかけた。

すると


「もしもし」


ペレーは今、自分の目の前にマサが居るのに、電話口にマサが出た事で、ようやくみんなが嘘を言ってなかった事を理解した。


ペレーの手は震えている「信じられないウキ」


「光堂 知らないかウキっ?」

話の様子じゃ、ここの世界のマサも光堂の居場所を知らない様子だと思われた。

その時 ペレーの受け答えが変わる


「えっ? ウキっ ウキっ」


全く理解出来ない、相づちに光堂は少しイラッとした、と同時に、可笑しくなり、笑いも込み上げて来る。

ペレーは電話先にきこえない様に小声で三人に「どうするマサをここに呼ぶウキっ?」

三人は、先程の多村の話を思い出し、こっちの世界のマサとここに居るマサが出会うのを恐れ、それはまだ、避ける事にした。

とりあえず電話をきったペレーに電話で何を喋ったのか、聞く事にした。

「マサは何か知ってたのか?」


「マサも、光堂とは連絡がとれなくなってたみたいウキっ ただ、最後に会った時、光堂が黒楽町に行くって」


「黒楽町?」多村は息を飲んだ。


「何なのそれは?」マサが尋ねる


多村は深刻な顔をして答えはじめた。

「入ったら二度と帰って来れない、こっちの世界の超危険地帯だ 、警察すら近寄らない」


「そんな......」


「どうしてあんな所に、光堂は行ったんだ」多村がうつむく


ペレーも下を向いている。

二人の様子が、いかにそこが危険でヤバイ所かを物語っていた。


「もしそれが、本当なら光堂はもう生きてないウキっ」


多村は光堂とマサの顔を見つめた。

「お前等もとの場所に本当に帰りたいのか?この際、この場所で俺達もいる事だし、一緒に生きて行く、それでも良いんじゃないか?」


光堂とマサは顔を見合わせたが、言葉はなかった

どうして良いのか正直分からなかった。

自分たちがこれからどうすればいいのかも。

二人の沈黙を見ていたペレーが

「行くって事は、死にに行く、そう考えて良い ウキっ」と呟く。


光堂はマサにきいた


「マサはどう考えてる?」


マサは沈黙している

暫く重苦しい空気が流れていた。

すると暫く沈黙していたマサが


「俺行くよ」


三人は驚いた。

「このままここにいても良いかなって思ったけど、やっぱり、帰りたい」


「もう他に手掛かりもないし、そこに行って光堂を探すか、ここに居続けるか、それしかないなら、俺行くよ、光堂はどうする?」


返事は決まっていた。

「俺だって行くよ、マサが帰ったら、俺はここに一人ぼっちになってしまう気がする。それにマサを一人で、行かすはずないだろう」


二人は握手をした、決まりだ。「帰ろう」


「俺たちはどうしたら・・」下を向きながら、多村とペレーが声に出しつぶやいた。


「馬鹿野郎、お前達は、もともと、ここの住人じゃないか、来る必要はないんだ、ここにいろ」二人を危険な目に合わせる訳には行かない、光堂とマサの本音であった。

光堂とマサ、二人はもう行く覚悟を決めている。


「すっ、すまん」多村もペレーも、暗い顔をしていた。


「じゃ、マサ行くか」


「うん」


「おいっ、今日はやめろ」多村が言った。


「せめて明日にするんだ、こんな真っ暗な日は特にダメだ、せめて明日の朝は、明るいはずだから、明日出るんだ まだ少しはましだ」


分かった。 二人は明日、朝向かう事にした。

多村も、ペレーも、気持ちが暗くなっていた。二人が明日、死にに行くようなものだからだ。

そう、その場所はそれほど危険な場所だったのだ。

落ち込んでる二人の様子を見た光堂とマサは、冷蔵庫から酒をだし

「せっかく出会ったんだ、しみったれたお別れはごめんだ。 みんなで飲もう、今日出会って分かったけど、やっぱりお前達は最高の奴等だった」光堂が言った。


「そうだね、さすが僕達だ、最高の友達をこの世界でもつくってくれてたね」マサが言う。


多村とペレーの瞳に涙が溜まっていたのを、光堂もマサも知っていた。


四人は古くからの旧友の様に飲んだ


そう古くからの旧友なのだ


世界は違えど、本当に心から気を許せる暖かい奴等だと言う事は、すぐに分かっていた。

いつしか、酔っ払い、気がつけば 光堂もマサも横になって眠っている。

多村は二人が寝たのを確認して、何処かに電話をかけていた。

それは両親のところ。


「もしもし、どうしたのよ?あんたがこんな時間に電話してくるなんて、珍しいじゃない?驚いちゃったわよ」


「声を、聞きたくなってね」

ペレーは、その様子を見て分かっていた。

多村が二人だけを行かせないで、自分もついて行く覚悟を決めていた事を。


「ごめんウキっ まだペレーは死にたくないウキ」ペレーは電話を終えた多村につぶやいた。


「なぜ謝る?俺はただ途中まで道案内するだけだ、道案内は一人でたりる」

ペレーは田村が、もう戻って来るつもりがない事を知っていた。

こいつは二人を見捨てて、帰って来れない、そういう奴だ。

ペレーは涙をこらえられず、返事をせず多村に背中を向けた。

そのペレーの様子に、多村は少し困った顔をするが、すぐに笑みを浮かべ、小刻みに震えているペレーの背中を優しく見つめていた。


夜は明けはじめている


最愛の仲間達の別れ


出発は一刻 一刻近づいていた。


光堂とマサは、そこがいかに危険な場所なのかを、この時はまだ何も知らなかったのだ。そう、これから身に起こる恐ろしい出来事をまだ、なにも。


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