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ブラインドワールド  作者: だかずお
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『多村来たる』

誰だ?

何者かが、ドアの外に立っているのに気付き、光堂は玄関に向かった。

まだ寝っ転がっていたマサも、身体を起こし身構えている

「開けるの?」

「一応覗いてからな」

光堂は玄関を開けずに、中から外を覗いた。

身体は勝手に身構えている、何故ならここに来客など滅多に来ないからだ。

外を覗くと、すぐさま光堂は玄関を開けた。

「久しぶり何だ居るじゃないか」

安心した様に多村が言った。


「たっ、多村?」マサも驚き立ち上がる


「久しぶりじゃないか、一体どうしたんだ?」光堂は多村を見て驚きを隠せなかった、そして、なにより、あちらの世界と同じ感じの多村に安堵し、嬉しかった。

学生時代 仲が良かったと言っても、多村とは最後に会ってから五年以上は経っていた。


「いや、何だか連絡とれないから心配で会いに来たんだ」


「本当に奇遇だな、今日お前の実家に行こうと思ってたんだ まあ、あがれよ」

光堂は久しぶりの再会に思う、多村はやはり多村だ。


「マサじゃないか、久しぶり」

多村は久しぶりのマサを見て喜んでいた。

そう俺たちは学生時代、本当に仲良く、よく遊んでいた。

多村は情に熱く友達を大切にする男だ。

今日こうして五年も会っていなかったのに、連絡とれず心配してここまで会いに来てくれた行為が変わらぬ多村の性格をあらわしていた。


「久しぶり 元気だった?」

マサも長らく会っていなかった、多村の突然の訪問に驚き、嬉しい様子

そうは言っても、まだ、二人は多村の様子を伺っていた。

多村もまた、この世界が当たり前の様に生きてる人間なのか?それとも俺たちみたいに?

光堂はそれを知る為に、遠回りで確認してみることにする

「何だか今日の空おかしいよな 真っ暗で」


「何言ってるんだ、別におかしくはないよ」と言い多村は笑った。

「そんなこと言う、お前のほうがおかしいんじゃないか?」


光堂とマサは顔を見合わせて、少し落胆した表情を浮かべる。

やはり、多村も、こちらの世界の住人?

みなテーブルを囲む様に座り、会話が始まる。

「なあ多村、変な事聞くようだけど前はこんな世界じゃなかったよな?動物は喋らないだろ普通」


「おい、どうしたんだよ光堂、お前らしくもない 動物が喋らないなんておかしいだろ、それとも何か冗談を言ってるのか?」


光堂とマサはまた顔を見合わせ、二、三秒の沈黙の後、光堂は喋り出す。

「おかしいと思わないできいてくれ、頼れる奴がお前しかいないんだ」


「分かった」多村は、ただならぬ様子の光堂を見て真剣に頷いた。


「実は、俺ら二人は全く違う世界に居たんだ それがある日突然こんな世界に」


「違う世界? それはどういう世界なんだ?」多村はキョトンとした顔で言った。

だが、光堂が、こんな真顔で、冗談を言う様な人間ではないことを知っていたので、疑いながらも、話は聞いていた。

説明に困った光堂を見てマサが

「そうだ昔、学生時代に三人で旅行に行ったよね、確か新潟 覚えてる?」


「確かに行ったよ、だがな、行ったのは四人だ 猿のペレーもいたじゃないか」


「さっ、猿のペレー?」

光堂はあまりに違いすぎる過去の体験と、洒落た猿の名前に吹き出してしまう。

猿と旅行だと そんな馬鹿な・・


「こんな感じなんだ、過去の体験すら違っている 俺ら二人の中じゃ、三人で旅行に行ったんだ 猿はいなかったよ」マサが言った。


ここが多村の良い所だった、彼は、大方信じられないような突飛な話も、真っ向から否定せずに、一度真剣に考えてみてくれる。

多村は二人の話を馬鹿にしないで黙り込み、暫く考えてる様子でいる。


「うーん二人の様子を見てると、嘘をついてる様に見えないし、それが本当だとしたら、君らは一体何処から来て、また元の世界に戻れるのか?」多村もまた光堂と言う男を良く知っていた。

光堂もマサも、こんな表情をして、嘘をつくはずがない性格だと言うことも、何より、こんな嘘を、何のためにつくかも分からない。

しかし、もしこれが、ふざけてるのではなく、本当だとしたら。


「それなら、俺が知ってる光堂とマサは、じゃあ、この世界に別に居るって事になるのか?」

二人は多村の言葉を聞いてハッとする、自分が二人?

そうだ、この世界にも自分は居るはずなんだ。

三人は考えれば考える程、訳が分からなくなってきた。

だが、この状況の最中でも、自分達の状況を理解してくれた人が出来た事が、二人を少し安心させた。


「俺達はどうすれば良いんだ?」


「分からない ただ君たち二人がもしこの世界に居たとしたら、会うのはマズイんじゃないのか?」


「どうして?」


「昔本で読んだ事があるんだ、違うパラドックスの世界に住む同じ人間がはちあわせたら、宇宙が崩壊するって」


二人は息を飲んだ。

だが暫くして光堂は笑った。

「まあ、もしそれでも面白いじゃないか、どうせなら自分と記念撮影でもしたいもんだね」


「あれっ?」


突然の多村の言葉に二人は驚く


「何だよ?」


「お前らの世界では、俺に最後に会ったのはいつだ?」


「五年くらい前だ」


「こっちでは二年前なんだよ」


「えっ?」


「すっかり忘れてたが、今思い出した、そん時お前、ここに住んでて もう引っ越すって言ってたんだ 」


「でもここはどうするのかって聞いたら、ここは借りっぱなしにしとくんだって言ってた。おかしいと思ったよ 金があるわけではないお前が、そんな事するなんて 何の為か聞いたら 笑って答えないんだよ」


「って事は、この世界の俺は何か知ってるのかも知れないな」


「で連絡しても、全く返事がないから、心配して今日ここを訪ねてみたんだよ」


「案内してくれないか?俺の所に」

マサ、多村は、その光堂の言葉に驚いたが


「まあそれしか手掛かりはないか」


「引っ越し先を知ってるであろう奴に聞いてみる」


「ありがとう 誰だ?」


「猿のペレーだよ」


「こっちの世界じゃ、お前らは親友なんだ」


光堂とマサは笑った、あはは 猿のペレーとはな「猿のくせに洒落た名前をつけてるな」


「馬鹿、光堂 お前またペレーとケンカしたいのか」多村も笑う。


前に喧嘩したのか?

まあ、とにかく二人は向かうべき所も分からない未来が、何だか前に進んだ様で安心した。

多村はペレーに、さっそく電話をかけはじめる、相手はどうやら電話に、出たようだ。


多村が話し始める

「もしもし聞きたい事があるんだ光堂の事で」


「えっ?やっぱりか 分かった事情は後で話す 前に光堂が住んでたアパート来れるか?」


電話を切ると、多村が言った。

「それが、ペレーも光堂と長らく連絡がとれないでいたらしい 今、光堂のアパートに居ると知って、驚いてたよ」


そんな馬鹿な、猿と自分達が親友だなんて。

とりあえずペレーが来るのを待つしかない。

「多村お前は俺の番号知らないのか?」


「最後に会った以来 俺もしばらく忙しくて連絡してなかったんだ。けどここ最近どうしてるか気になり、電話して繋がらなくて心配で、今日ここに来たんだ」


「そうだったのか、て事は、誰も知らないのか」


「そういえば俺は?」マサが言った


「ああ、俺もさっき思い浮かんだんだけど、少し展開を待ってからマサに連絡した方が良いと思うんだ」多村が言う。


「そうか、マサもいるんだよな」安心する光堂


「確かにそうだね」


まずはペレーを待とう、彼から光堂の話を聞いてそれからだ。

カーテンの外の空は、依然として真っ暗闇

三人はペレーを部屋で待つ事に。

なんだか落ち着かない、ペレーに会ってみたい、これから一体どうなるのか?そんな奇妙な心持ちが、入り混じり、光堂達の中を動いていた。



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