『ある地球の現状』
光堂は目を覚まし、得体の知れない今の状況と、外の者達に対する好奇心に駆られ、すぐさま部屋から出た。
凄い事に、眠る前までに残っていた身体に溜まった疲れや、痛み、怪我などは綺麗さっぱり消えていた。
あのベッドに仕掛けがあるのか?
肉体の回復機能でもついてたのか?どちらにせよ凄い技術だ。
ずいぶん寝て時間はたったはずなのに、宇宙人と思われる存在達は誰一人眠らず、皆起きていた。
宇宙船の窓の外には沢山の星々や惑星が見える。
そのリアルな光景に、これは夢でも幻でもなく、やはり現実なんだと、妙に納得した。
「君たちは眠らないのか?」
光堂は目の前にいる、頭が異様に長い存在に話かけてみた。
「これは、光堂さん起きましたか、我々はほとんど眠りません、精神と肉体が常に癒された状態でいるので、眠る必要がないんですよ」
「君たちは、テレパシーや色んな能力を持ってるみたいだけど、俺たち人間とは違って何か特別なのか?」
その存在は微笑んだ
「いいえ、同じソウルです、あなたがたにも同じ事が出来ますよ、長い間 地球人はたくさんの制限をつけて、自分たちが何者かを忘れ、自分の能力も忘れたんです」
光堂はその存在の言ってる意味がよく分からなかったが、礼を言い その場を後にした。
「起きたの?」
振り向くとピピが立っていた。
「ああ、正直夢の世界にいるようだ。と言っても、ここに来るまで、今更驚く事もないほど色々見てきたけど」
「あなたはこれから普段の現実こそ、夢の中にいたんだとハッキリ思い出していくわ、永らくあなたがたの地球は」
「ああ聞いたよ」
「私達は同じ家族の地球人と一緒に遊んだりしたい、彼らに私達の存在を思い出して欲しいと本当は思ってるわ」
「それなら、どうして地球人の前に姿をあらわして、我々はここにいるとやらないんだ」
「そこにあなた達の自由意思はある?」
「えっ?」
「あなた達地球の人達の意思を無視して、そんな事しないわ、私達はテレパシーに似た能力で地球の人達の今の意識状態も分かるの。
地球人にその意思があればそうなるでしょうけど、無いのに勝手にあなた達の自由意志に反してそんなことは、何一つ出来ないわ それに急に姿を見せたらあなた達は怖がってしまうでしょ」
「恐れを基盤にして成り立つ社会の人々は、私たちを見て、自分達の想像を越えるものに遭遇した時、恐れから、ありのままを観察出来ずに、攻撃してくる人達がいるんじゃないかしら?」
「そうかも知れないな」光堂は言った。
もし、彼らみたいな優しい存在でも、どっかの誰かがテレビで危険な存在だ、などとでも情報を流せば、自分で考えもせずに、すぐにそれを鵜呑みにする人達もいるだろう。
確かにそんな時、人々はありのままを観察出来ないかも知れない。
恐れからの反応は攻撃…多いに考えられる事でもある。
「みなさん起きてきたようね」ピピは後ろを振り向きもせずに言った
すると、扉が開き
「光堂起きるの、はやいウキ」
「抜けがけウキか!」
「みんな自由に見て回っていいわよ」ピピは言った
すると一人の男が多村の肩を叩く。
地球の白人と同じような見た目だ。
宇宙人というと、自分達の住んでいた地球のテレビなどのイメージからだと、銀色の髪の毛も無い、グレイと呼ばれるイメージが定着していたが、人間と変わらないものもいれば、全く人間とは姿形も異なる者もいた。
「ぼくはトンプス、君は多村だね、君が大好きなものがあるよ来て」
多村はその言葉と、トンプスと言う存在に何処か惹かれて、ついて行く事に。
「それより、こっちの世界の俺は何処にいるんだ」
光堂はずっと探し続けてきた、彼らがコードーと呼ぶ自分の居所をきいた。
「じきに来るから少し待っていて」
多村はありとあらゆる乗り物が大好きだったが、特に空を飛ぶ乗り物の操縦という事には自分でも信じられないくらいの興味があり、飛行機などの操縦を昔から独学で学んでいた。
トンプスは言った「君にUFOの操縦を教えてあげよう」
その言葉に、多村の目が輝く「本当か?」
その頃、マナは一人の女性らしき存在に、ヒールと言う、肉体や魂を癒す技術を教わっていた。
「こんなこと私に出来るんですね、知らなかった」
「どんどん能力は開花していきますよ、人間は自分達の能力の三パーセントも使ってないのです、脳のほとんどを使っていません」
マサはサイキック能力を教えてくれるという存在と一緒に色々指導を受けていた。
みんな その日は一日、宇宙存在達と、今まで知りもしなかった体験をしては、楽しく過ごした。
その夜みんなは再び集まり
沢山の異星人達と同じ部屋でリラックスしていた。
彼らはとても友好的で、自分たちを家族のように愛してくれているのが分かった。
この場所に居ると感じる、一体感の感覚は、自分達の気持ちを癒してくれる何とも言えない調和のとれた空間だった。
彼等とは初めて会うにも関わらず、遥か昔から知っている、何処か、仲の良い旧友のように感じていた。
もしかしたら、本当に自分は彼らの事を忘れているだけで、実は前から知っていたのかも、そんなことを思った。
暫くすると 扉が開き、一人の存在が部屋に入ってきた。
その瞬間、光堂達はその存在の、あまりのエネルギーに圧倒される、明らかにこの存在のエネルギーは他とはまた違ったもののようにも感じられた。
それは優しく、慈愛に満ち溢れているかの様なエネルギー。
「いらっしゃい」
その男は微笑む、白髪の鼻立ちの通った、男だった。
身体全体からは溢れるばかりの光が放出されている
光堂達はすぐさま分かった
「彼は、この船のリーダーか?」
ピピは答えた「うん、地球のリーダーとは意味がちょっと違うけど、そんなものね」
「よく、来てくれたね嬉しいよ、私はこの船の長老とでも言っておこうか、リターナル よろしく」
「君たちはずっと昔、私達と約束をしたんだ、今こうして出会う事をね、今は忘れているだろうが、さて私はあたた達に今一度きこう、我々の話を聞きたいか?それとも、もう帰りたいか?自分たちの意志で決めてくれ我々は何も強要はしない」
みんなは答える
「話を聞きたい」
「嬉しいだけの話じゃなくてもか?」
その言葉に一瞬ためらいはしたが、今更何も聞かずに帰るのはあり得ないし、嫌だった。
「ああ、聞かせてくれ」
宇宙存在達は顔を見合わす
「知る覚悟はあるか?」
みなは真剣な表情で、すぐに頷いた。
「よろしい話を始めよう」
「あなた達はある約束のもと、今こうして我々と出会い、一緒にいる、ここまでの道のりも何一つとして偶然ではなかった。我々の話を聞いた後も、あたがたがたがどうするかは自由だ、まずは話をしよう あなた達はまず知らなければならない」
一人の動物の象の顔した存在が両手を広げる、次の瞬間、目の前に立体的な映像が映しだされる、それは映写機に映し出されるスクリーンの様なものだった。
そのスクリーンには、見慣れた景色が広がっている
それもそのはず、そのスクリーンに映し出されているのは、まさしく地球であった。
次の瞬間
映像を見て、ペレーは声をあげた。
トカゲ?ワニの様な顔した異星人達が映し出されたからだ
身長は二メーターくらいから、六メーターくらいになるまでの大きさの者もいた体重は600キロはあるだろうか?
「何だこいつらは?」多村が質問する。
「光堂君、マサ君達の住むパラダイムの地球を影で支配している存在達です」
「何だって?」
「言っておこう地球は無限に存在する、君たちの世界ではパラレルワールドと呼ばれてる」
「パラレルワールド?」ペレーは頭をかいた
「簡単に言うと、今日ペレーが朝起きてバナナを食べたけど、食べてない地球もある、並行して並んでる別の世界ってことだろう?」多村が言った。
「そう、あなたがたのパラダイムの地球では、彼らが地球の政治家達を操り、地球を思うがままに裏で動かし、人々に本来の自分を思いださせないよう、永きに渡り地球を操っていた存在でもある」
「地球人はこの広大な宇宙で、まだ自分たちだけが唯一の存在だと信じこまされて生きている、それもその筈、全ての情報は隠され、コントロールされ、何も知らされていない状態となっていますから」
光堂は笑った
「見た事ないぜ、地球でこんな生き物、それに操ってるって?人間は普通に生活してるじゃないか」
「あなた達は、他の宇宙に存在する多種多様の存在を知らされておらず、自分が何者かも分からず、一生を終えます。
地球上には問題が山積みになっていて、人類始まって以来、戦争のない世界を知らず、ずっと同じ状態を繰り返しています、自然は破壊され続け、大量の殺戮兵器は生みだされる一方、人々は恐怖や不安のない生き方など信じられない状態となっています。一体何故なんでしょう?
今の地球こそが本来のあなたがたの住む最良のシステムの基盤だと本当にそう思いますか?」
「仮にこいつらが本当に居たとしよう、でもあんたらは言ったよな、誰も俺達の自由意志に反して何も出来ないと、何故彼らは地球を支配できる?」光堂は言った
「そう、光堂さん達がもとに住んでいたパラダイムの地球では、あなたがたは自分の力を外に明け渡して生きている。
自分に力があるなんて信じられない人ばかりになっていて、その意識に彼らは入っていったのです。
後は簡単な事でした、現代で言うならまず、彼らはあなたがたの世界のトップの前に顔を出した、彼らのテクノロジーはあなたがたより遥かに進んでいる、それをちらつかせ、世界の政治家、国を操ってる人間達は一時的な名声と権力、進んだテクノロジーと引き換えに地球を売ったのです」
「何だって?」
「彼らは人間の負のエネルギーを好み食するのです」
「彼らは、地球の至る所に基地をつくり住んでいる、あなたがた人類を奴隷として永遠に縛っておきたいのです」
「彼らの痕跡は至るところで発見出来る筈です、過去の文明、残されてる物、それらを調べればすぐに彼らの姿が至る所に残され記されてるのが分かるでしょう」
「もちろん宇宙に住む者達全てが、彼らのような存在じゃなくて、優しく愛情にあふれてる者も沢山居るわ、う~ん、地球の言葉で言うのなら、彼らは荒くれ者ってところね」ピピが言った。
「しかし、我々が言いたいのは、地球人の意識状態こそが自らを、この状況下に置いていると言う事なのだ」
突如映像は切り替わった。
地下から、トカゲのような異星人が出てきた、子供を連れ去り、また戻っていった
「まさか?」
「そう、年間 原因不明の行方不明の子供達も彼らとの契約のもと差し出されている、政府了解のもとにね」
「人間が人間を売ってるのか?」
「そうだ」
「彼らはどうなる?」多村が質問する
答えを聞くまえに光堂はリターナルの襟元をつかみかかった
「やめろ、光堂」みんなが止めにはいる
「お前等もあの仲間か?何故何もしない、地球の人間を家族だとか都合の良い事いいやがって、何故助けてくれないんだ」
「光堂君もし、我々がいきなり出て行って止めたら、それでOKなのか?
そしたら、我々はあなたがたの自由の意志を邪魔して、あなた達には自分達で何も出来ない事を証明することになる。
本当は我々だって、いくらでも力を貸したい、だが、その為には地球人自身が自分の意志で、どうしたいか決めなければいけないんだ。
真実は、あなた達の同意なしに彼らも本当は何一つ手出しは出来ないんだ。
それが宇宙のルールでもある。
無意識にでも、あなたがたのパラダイムの地球の人間は、その現実を選んで受け入れている。
己の力を忘れ、外に自分自身の力を明け渡しているんだよ。
その意識そのものが、彼らを生み出してる事に気付かずにね。
物事は表裏一体、どちらかが在るなら、それは存在しなければならない。
仮に我々が行って解決するとしよう、しかし根本的な意識は変わらずまま、そして結局、同じものを再創造する事になる可能性の方が高い。
そして、次何かあったら、彼らはまた我々に何とかして下さいと助けを乞うだろう。それが本当に救済かな?」
「あいつらは、何処にいるんだ?」
「君が今、彼らの住む星に行っても何も意味はない、これからあなた達に出来る事がある、その為に今こうして出会っているんだよ」
リターナルは優しく微笑んだ。
「最高、最良の解決策があるのだよ」
「リターナル彼はダメだよ、聞きゃあしない、それは俺が一番分かっている」
一同は聞き覚えのあるこの声に驚いた
それはドアの向こうからだった
そうドアが開き入って来た男は
奇妙なマークの入った、白いロングコートの様な上着に身を包んだ光堂であった。
ずっと探していた男は今まさに姿を表したのだった




