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ブラインドワールド  作者: だかずお
19/27

『ピラミッドの主』




紫のピラミッドは、まるで口を大きく開き、不気味に待ち構えてる様に見えている。


「しかし一体、何者なんだ、その神ってやつは?」多村が言った


「さあな!ただ者じゃないのと、むかつく奴ってのは間違いなさそうだ」光堂は残りのペットボトルの水を一気に口にふくむと、力強く歩き出した。


ピラミッドはもう、すぐ目の前


「いっ、いくウキよ」


五人は息をのんだ。

何故なら、近くで見て分かったことは、入り口の扉の上に、石で形づくられた、不気味な鬼の様な顔がこちらを睨んでいたからだ。


石の階段をあがり、中に入って行く


コッ コッ カッ カツッ

足音が石全体で作られた通路の中に不気味に響き渡る。

見るところ中は薄暗く、細くて、気味の悪い通路が、先の見えない程、何処までも長く、まっすぐ続いているようだった。

両の壁には不気味な絵が描かれている。人が怪物に食べられてる絵やら、黄金色の顔した人間、見たことない怪物の様な絵。

何やら文字も描かれていたが、全く読めなかった。


「これがお化け屋敷なら、まだ良かったんだけど」とマサが苦笑いして呟く


「お化け屋敷なら絶対に無事に帰れるウキもんね」


マナは、壁の絵をじっと見ては何か考えたりしているようだった。

しばらくの沈黙の後、マナが言った。


「この絵は何を表してるんでしょうか?」


「分からないウキ、ただ不気味なのは間違いないウキ」


薄暗く、長い不気味な通路

恐怖感のせいか、暗さのせいか、実際に経過してる時間以上に、長い間、そのまっすぐな道を歩いてる気がする。

一体何処まで続いてるのか?

まるで終わりの見えないジェットコースターにでも、乗ったような気分でもあった。

いや、ジェットコースターと言うアトラクションだったのなら、終われば無事に帰れると言う、存在の根底から揺るがされる恐怖感は無い、前提として、無事に生きては帰れるのだ。

しかし、今の現状は違う、ここは何処かの遊園地では無い。

そして、この先に待ち受けるのは得体の知れない存在

これから、実際に対面しなければならない。

いつ何処で襲われるかも知れない不安

光堂達の緊張感、恐怖感は凄まじいものになっていた。

マサの言った通り、これが本当に遊園地などのアトラクションだったら、そんなことを思う。


光堂は自分に落ち着くんだと、言い聞かせるよう、呼吸を必死に整えていた。

ちょっとした物音ひとつでも、心臓がはち切れてしまうんじゃないかと言う程の緊張感、恐怖感。

それは真っ暗な道を、前に進めば進む程、増大してるようにも感じられた。

ここに入る前の憤りは、今や恐怖や不安によって飲み込まれている様だった。

もう今や、前も後ろもほとんど見えないくらいの暗闇になっている

「さっきまでは、まだ薄っすら見えたけど、これくらい暗いと歩けないな、誰かライト持ってないか?」多村がみんなに聞く


「私、持ってます」マナがライトを、カバンから取り出した。


「俺も持ってる」と光堂


二つのライトを灯しながら、五人は更に奥に進む

先頭を歩いていた光堂が、突如叫ぶ

何故なら沢山の人骨が、辺りに散らばってるのを見たからだ


「ウキー 人の骨ウキ」

ペレーは、腰を抜かし地面に座りこんだ。


「あー戻りたいウキ。正直、朝の小屋に戻りたいウキ」

ペレーの額からは大粒の汗が流れ出ている


五人は落ち着きを取り戻し、再び歩き続けた

その細い通路の中は、五人が歩くことによって、潰れ、砕ける骨の音だけが無惨にも鳴り響いていた。


するとマナが

「みなさん、前見て光が」


その光は薄暗い通路の終わりを告げていた。

五人の足どりは、自然と速くなり、光のもとに向かって行く

明かりを見て、五人の不安と恐怖は、少しは、やわらいだ気がした。

明かりがこれ程自分に安心を与える物なんだと、この時初めて光堂は思う。


光の先の通路は、さっきまでとはうって変わり、広々としている

そして壁一面は、全て天井まで、輝く程まぶしい金でできていた。

目の前には階段、そして、その階段のテッペンの上に人影があるのを皆は見逃さなかった。


「ようこそ、わが住まいへ」


「お前は何者なんだ?」光堂が男に向かって叫ぶ


「お前達はこの世界の者じゃないのだろう?」


「お前は何を知ってるんだ?」光堂はつづける


「ああ、まだ何も知らない者たちか」


「ここは、遥か昔の過去の世界とでも言おうか、人々は狩をして暮らす、そんな時代の世界だ、見るところ貴お前達は、少し文明が発達した、ところからやってきたようだな、私は遥か未来からここに来た」


「どういう事だ?」多村が言った


「黒楽町、あそこは特別な磁場の場所でね、あそこは色々な時空間に繋がっている場所なのさ、まだあまり知られてないようだがな」


「お前は何のために、ここに来たんだ?」光堂は再び質問した。


「私のいる時代はずいぶんと意識が進んでいてね、人々はなんでもできてしまうのさ、お前達も見ただろう、あの小屋を。あれは私がつくり、ここに来た当初住んでた場所だ。その後、時空間を迷い、この場所に来た者も暮らしていたみたいだが。見ただろう、電気もないのに冷蔵庫つかえたろう?私の居た時代の技術さ、何でも出来てしまえて便利だろう 意識の力を知ってるのさ」


「何故ここに来たって?私は自分の生まれた場所にいる頃から、ひとつの願望があったのさ、人々を恐怖で支配し、私が王となる事を」


「だが無論、誰もが己の力を知っている、私が住む時代にはそんな統率は出来るはずがなかった。ある時、私は黒楽町の謎を調べ、探しあて、ついに黒楽町のある世界にワープを成功させた。

そして、そこから、ここに住み、この場所で王をやっているというわけだ」


「楽しいぞ、人間を恐怖で支配するのは」


「それで好き勝手、あの部族の人達を殺したウキか」


「そうだ、実に愚かな存在だ、科学力も無ければ、頭脳もない、支配するのはとても容易かった。私にとっては虫けらのような者達だ、何の価値もない 」


「あの人達は、最後には自分達の命を引き換えに、俺達のいのちを助けようとしてくれていた」


「本当に愚かなのはお前のほうだ」光堂が叫ぶ


「今の言葉は聞かなかったことにしてやる、私の部下になれ」


五人の声は重なり合い、辺りに響き渡る


「ふざけるな」


「明日、生贄の儀式をやる、貴様らを生贄にしよう」男は呟き、不気味に笑う。


「貴様らにいい事を教えてやろう、実はあの小屋のすぐ裏に、他の次元に繋がる道があるのだよ、どうやらお前達の意識をテレパシーで読む限り、元の場所に帰りたいようだな、それなら、そこを通るのが良き道に繋がるのは間違いない」


「教えるだけ教えて、すんなり、そんな事させる気は、さんさらないんだろう」光堂は言った。


男はほくそ笑む。

「私は貴様らの喋る、綺麗ごとが、どんなものか興味が出たぞ」男は指を鳴らす、すると男の後ろに沢山の道が開いたのだ。


「全ての道は、このピラミッドの出口につながっている、小屋までの、光の橋も、私が今出しておいた、さあはやく帰るがいい」


言い終えると、もう一度指をならした。

何やら後ろから、もの凄い音がきこえる

ガシャガシャ ガシャガシャ

まるで硬いものが擦り合って鳴っている様な音


「なっ、なんだ?」


振り返ると、先程の道に落ちていた無数の骨がくっつき身体となり、動いてこちらに向かって来ている。数は五十体にはなるだろうか。


「やばいウキ」


「みんな逃げろ」


「絶対に死ぬな」光堂は叫んだ


「分かった」


骸骨達は武器を持ち、すぐ後ろに来ていた。

みんなは、とっさにそれぞれの近くにある道に逃げ込む

すぐ後ろには骸骨達

骸骨は、五人を追っかける為、すべての道に、バラバラに散って行く。


「ふっふっふ、貴様らの綺麗ごととやらを見せてもらうとするか」

男は呟き、不気味に笑っていた。

さあ、私に、人間の本性を見せておくれ


フッフッフッ フッフッフッ 。




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