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ブラインドワールド  作者: だかずお
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『異様な世界』

俺の名前は光堂、歳は30になる、仕事は社会の決まりの様な縦社会の付き合いが面倒くさい為、長い間してない、現在無職である。

働きたくないが為、無駄な金は使わずに手元にある少ない貯金を毎日うまくやりくりして生活している。

今日も住んでるマンションの三階からぼんやり外を眺めている、「ふぅー」半ば呆れ顔で軽く小さなため息をついた。

空には犬が飛んでいる。

そう、文字通り犬が空を飛んでいるのだ。

ウィスキーのロックをぐびっと口に含み外に出る。

目の前から、頭が人間の頭ではなく、女性器がそのまま頭になっている女とおぼしき人間?が歩いて来る。

えっ?何だって?普通じゃない?

オカシイ? そうおかしいよな?

こないだまでは普通だった、一般的に言う普通の世界なら、犬は空も飛ばないし、女性器の顔の人間なんて見たこともない。

俺はいたって普通だ。

そう俺は・・・

すべては普通だったんだ、何もかも、そう三週間前までは…

想像つくだろう?

普通だったんだ

普通の人間が住んでる世界

当たり前の社会、常識、人々

それが気付いたらこんな世界に……

俺は正直犬は空を飛べないし、女性器の顔した人間がこの世に、居るはずないと思っている、ここは異様な世界だ。

まあ、元からここに住む人間に、こんな事言ったって伝わるわけがないのだが、奴らにして見ればこれが常識で普通なのだから。

しかし、いまや、そんな事はどうでも良かった。

少しは暇つぶしになるかな、それくらいの感覚だった。

毎日、同じように繰り返される現実的日常にほとほと飽き始めていたからだ。

これと言って、したいこともなかったし、そうありふれた日常が退屈になってしまっていたのかもしれない。

こっちの世界の方がいくらか楽しめる。

そんな事を考えてる時だった、光堂の携帯電話が鳴り響く。

電話に出ると、相手は中学からの知り合いのマサだった

マサも、急なこの世界の変化に驚いていたが楽しんでもいた。

一体世界はどうなっているのか?

しかし、奇妙な事に光堂とマサ以外の人間は最初からこの世界が当たり前の様で、何事もなかった様に生活している。

今は周りの人間で唯一、俺達だけが、この世界はオカシイ、普通と違うと思う人間であった。

俺の知ってる中で、当たり前であるはずの、あの地球を知ってる唯一の人間だ。

「光堂、今日街を歩かないかい?」

二人はいつも行く地下のバーで待ち合わせした。

この世界がこんな風になる前から通ってる行きつけの店。

人間や、お店は大体、以前暮らしてた世界と同じ様に変わらずあるのだ、と言っても少しの変化はあるのだが。

その店は、元の世界でも毎日昼間からやってるバーであった。

ここは常連で今までは田中という人当たりの良い男が店長をやっていたが、三週間前の世界の変化と同時に変わり、今では身長二メートル程の猿が店長をしている。

光堂はバーに着いた。

マサはまだ来てない様だ。とりあえずカウンターに座り、ビールを頼む。

猿は無表情で愛想笑いも浮かべず光堂にビールを差し出した。

泡が八割 ビールが二割

全くこんなの飲めねぇよと思ったが、文句を言えばあの猿が何をしでかすか分からず黙って飲んでいた。

暫くするとマサが店内に入って来る。


「やあコードー」

マサもビールを頼もうと思ったのだが、光堂のビールの比率を見てはジントニックをオーダーした。

「今日もこの世界を楽しめそうだね」マサが言った。

「ああ、飽きさせはしないな」すぐに、マサのジントニックが出て来る。

しかし、良く見るとバナナであった。

怪訝な顔を浮かべながらも、マサは仕方なくバナナを食っている

「全くどうしようもないバーテンだ」光堂は小声でマサに囁いた。

すると、入り口の階段の上から若々しい女の声が。

どうやら店に入って来るみたいだ。

普段女性とあまり関わることのない生活を送っている二人は、嬉しくなり顔を見合わせた。

入って来たのは二匹のギャルの猿、二人はそれを見て幻滅する。

「ふぅーやれやれ」

バーテンの猿は、ギャルの猿を見て発情したらしくウホウホ吠え始めている。

二匹のギャルは、すぐさまカウンターに座りはじめて満足気な笑みを浮かべた、座った席は光堂の隣だ。

ギャル猿は、バーテンの猿には見向きもせず光堂に夢中の様。

ギャルの猿は、ウホウホ言いながらビールを頼む、すぐに出て来たビールを見ると、泡二割 ビール八割だった。

あのクソ猿 光堂は一瞬腹ただしくなる、俺にはわざとか。

すると、ギャル猿の一匹が光堂に話かけてくる。

「あなたウホッ、良い雄ねウキっ、私とこの後、木に登らない?ウキャ」

光堂は無視して

ウィスキーストレートを頼んだ。

今回はきちんと頼んだものが出てきて安心した。

酒を飲んでいると、このおかしな現実も受け入れられる様な、少しホロ酔いの良い気分になってきて心地良かった。

ギャル猿がまた話かけてくる

適当に頷いていると

「ウキャキャーキャーキャキャ」何やら興奮してる

見るとカウンターから、次々とテキーラのショットが。どうやらギャル猿が奢ってくれたらしい。

「中々良いとこあるじゃないか」

しかしこれは一人じゃ飲めないな。

マサにも頼んだ、マサは大の酒好きで、並べられたショットグラスを見てはご機嫌な笑みを浮かべていた。

「飲むぞ」

次々に注がれたテキーラのショットを二人で飲み続けた、五杯、十杯、その数は一人二十杯程だった。

さすがにこれは効いた。目の前がグルグル回り始めている。

二人は余りの酔いに店を出る事にした、ギャル猿には何の未練もなくすぐさま店を後に。

バーテンの猿も、二人の飲みっぷりに驚いた顔して感動したのか?お代は受け取らなかった。

二匹のギャル猿は二人の勇姿を見て興奮し、床にひっくり返って腰を振っている。

「さすがに酔った 大丈夫かマサ」

マサはうつろな瞳で「あっ、ああ」と言っている。

目の前はグルグル回り、気がつくとマサは道の真ん中で既に寝ていた。

それを見た人々は、道端に落ちる邪魔な石を避ける様に、一様にそこを避けて歩き始める。

「大丈夫ですか?」

突然、誰かが俺の肩を揺さぶる、見ると頭が男性器の人間だった。

大丈夫です、とだけ言い、すぐに目をそらした。

さすがに酔った時、いきなり目の前であれを直視しなきゃいけないのはきつい、前住んでた場所じゃ、あの姿で歩いたらわいせつ罪で逮捕されるぜ、と言っても顔があれじゃあ仕方ないが。

そんな事を考えていた様な気がしてるうちに眠ってしまい、次に目を覚ました時には夜だった。

一体あれから何日後の夜だったのかは、良く分からなかったが、酔いはさめていた。

頭はまだズキズキする、夜空を眺め、良い人生だぜと小さなため息をもらした。

そう言えばマサは?

マサは、今まさに警察官の車に乗せられている所であった。

そして連行され、何処かに連れて行かれてしまった。

光堂はすぐに追いかける為タクシーに乗りこむ。

「前のパトカー追いかけてくれ」

運転手はギターだった。そうだよな、ギターがどう運転するんだよな?俺の知ってる地球に住んでる人間には想像つかないことだ。

説明するとギターから手足が生えているのだ。

こいつで大丈夫か?と、一瞬戸惑ったが直ぐに後を追わせる事に。しばらく後を追って走っていると、突然前のパトカーは止まった。

警察署にでも行くのかと思えばそこは、ボロボロのデカイ屋敷であった。

一体どうするんだ?

光堂はギターに金を払い、屋敷に入り、警察官とマサの後をすぐさま追った。

一体なんだって言うんだ?何をするつもりだ?

それは異様な世界に来て初めて身の危険を感じる事態だった。



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