とある音大生達の会話
『三題創作バトン』
ルール!
1,20あるお題から3つ選択、絵or文で消化
2,使用したお題は消して新しく3つ付け足す
3,3人に回しましょう
【お題群】
椿/テディベア/ブランコ/白い布/アイス/落ち葉/向日葵/海水浴/俄雨/天の川/電車/熱帯夜/梅雨/夢/珈琲/鍵盤/ハーブティー/紅茶/楽園/嵐
【選択お題】梅雨、ハーブティー、鍵盤
後書きに改めて“追加お題”等の回す側の全文を載せています
音楽大学の練習室は基本的に防音設備が整っている為、学生達にとっては邪魔する雑音も少なく楽器を奏でたいだけ奏でられる
分厚い壁と扉で形成された室内は基本的に乾燥しており、窓越しに見る梅雨の風景も別世界に思える程に静かであった。
……私立音楽大学の音楽学部声楽学科に在籍する私は、今日もD棟にある練習室でピアノの鍵盤を叩きながら譜面上で躍る音符と歌詞を口ずさんでいた!
しかし中々に納得出来る音(声)が出せず、もう2時間近くも同じ歌詞だけが室内を流れ消えていた!
「何でこうも上手くいかないのよっ!」
長時間歌い続けた証なのか……、微かに掠れた声で独り小さく愚痴る!
歌えば歌う程に苛々として、余計に上手く歌えなくなる!
そんな自分に自己嫌悪は更に募り……
こんな歌では、声楽の実技試験での伴奏を頼んでいるピアノ科の彼にさえ聴かせられない!
最終的に専門ではない彼にさえ酷く耳障りな歌になるだろうと、解りすぎる程に……!
「もう……」
「……って言ったら牛になるっ……てか?」
“イヤだ”と言いかけた私にからかう様に割り込む低いバリトンの声。
驚き顔を上げると声の主が蜂蜜入りの温いハーブティーを差し出してくる。
どうやら重い防音扉が開く音にさえ気付かないくらい私は練習に集中していたらしい……。
「それが次の試験曲か?」
「……最有力候補……。
でも……まだホン決まりの曲じゃないから……」
私は差し出されたハーブティーで喉を潤いつつ否定でも肯定でもない返答を返した……
「俺にとっては伴奏法の練習になる!
1個や2個……試験曲の候補が増えたくらい、お前が気にする事じゃ無いだろ?」
「えっ、でも……ホン決まりの曲じゃないと貴方の試験とかの練習時間が無駄になるし……」
グダグダと言う私の前で、伴奏者の彼は私を鍵盤の前から追い払って自身が椅子に座った。
彼は私の様々な書き込み入りの譜面を見ながらニヤリと笑みを浮かべ……
「3小節前のフェルマータ直前から行くぞ!」
そう言うと鍵盤を叩き始めた!
『E amore un ladroncello, un serpentello e amor.①』
流れる伴奏に乗って自然と自身の口から溢れる『COSI FAN TUTTE(コシ ファン トゥッテ)』のアリアに呆然となった……
……あれほど頑張っていた2時間は何だったのだろうか……
「なんだ、出来るじゃねぇか!」
歌い終わり余韻に浸っていた私に、彼はチャチャを入れてきた!
右手に持ったままだった紙コップを見下ろし……後れ馳せながらある事に気が付いた
「ねぇ……、何時から聴いていたの?」
「ん〜……それ渡す20分くらい前?」
私は溜め息を吐く
「……練習聴いていたんなら気付かせろ、バカ(伴)奏者」
「やかましい、お前こそバカだろ!
……声楽家は全身が楽器なんだと自覚しろ!
声楽科のヤツが歌を楽しめなくなったら終わりだ!
その時は俺もお前の伴奏者を辞めるからな!!」
言いたい事を全て吐き出しスッキリしたのか彼は私の頭を軽く小突くと、そのまま練習室を出て行ってしまった……
『fa tutto quel ch'ei chiede che anch'io faro cosi.②』
「……次の実技試験は、未熟なまでも心のまま歌ってみるよ!
……誰がアンタの伴奏を辞めさせるもんですか!」
私も自然に浮かんだ笑みをそのままに呟いた!
①E amore un ladroncello, un serpentello e amor.
恋は手癖の悪い、悪戯っ子、恋は腕白小僧
②fa tutto quel ch'ei chiede che anch'io faro cosi.
恋の思うままにしておけば私も自由に振る舞えるわ
『三題創作バトン』
ルール!
1,20あるお題から3つ選択、絵or文で消化
2,使用したお題は消して新しく3つ付け足す
3,3人に回しましょう
【新お題群】
椿/テディベア/ブランコ/アイス/落ち葉/向日葵/海水浴/俄雨/天の川/電車/熱帯夜/夢/珈琲/白い布/楽園/紅茶/嵐/着物/帳簿/水晶
【回す人】
……誰もいないんでやってみたい方はご自由にブン獲って行って下さいませ(爆)
ちなみに上記の【追加お題】は『着物/帳簿/水晶』でした