彼の日常
お久しぶりです。
受験生です。
感想とかあったら、合格できるかも…なんて。
どちらにしろ頑張るんですけど。
ドゥーマイベストです。
みなさんもドゥーマイベストして生きてください。
「お、いたいた」
視界の向こうに1人の見慣れた背中がうつる。
「おーい!啓太ぁぁ!」
ビクッとその背中が震える。
親しい間柄だと言うのにこいつはいつも何かに怯えているようだ。
「…大志と愛華か、どうしたの?」
気弱そうな顔つきに眼鏡がよく似合う。
もちろん悪い意味で、だ。
「なんでケータイ出ないのよ。お陰で手間がかかったじゃない」
そうなのだ。
ケータイにかけても出なかったので、少し探していた。
もうここにいなかったら帰ろうというところで見つけることができた。
「あぁ…、ケータイ…落としちゃってさ…」
うつむきながらぼそぼそとしゃべる。
「もっとシャキッと話せってば。お前結構イケメンなんだからさ」
「ま、そのわりに私の周りでは啓太の話題はほとんどあがらないけどね」
容赦なくけなしているように聞こえるが、なんやかんやで啓太がイケメンだというのには反論しないところが愛華らしい。
「ありがとう。それより、どうしたの?」
「今日がなんの日か、啓太も忘れたの?」
「……あぁ。パーティーだっけ?」
こいつも俺と同じく忘れていたようだ。
「まったく、あんた達は…。まぁいいわ、早く帰りましょう。お父さん達が準備してるはずだから」
「あ、いや、うん…。まぁいいか…」
啓太がぼそぼそと何かを呟いている。
「なんか用でもあんのか?」
「いや、大丈夫。たいしたことじゃないし」
夕日がつくる影のせいで啓太の顔ははっきりと見えない。
「はやく〜」
愛華が俺たちの10メートルほど先で後ろを振り返る。
「…行くか!」
「あぁ…」
そうして3人は同じ道を同じ様に進んだ。
それが偽りだとは知らないで。
※※※※※※※
「ところでさぁ、啓太は何してたの?」
愛華が何気なく質問した。
「うーん、探し物?見つかんなかったら見つかんないでいいんだけどね」
「おいおい、探し物なら俺を呼べよ。結婚指輪から浮気相手の毛髪まで、なんでも見つけます!ってのが俺のキャッチフレーズなんだから」
「大志は何をキャッチするつもりなんだよ…」
両隣からCO2の排出を確認。
多量の呆れ成分も含まれているようだ。
「バカをキャッチするんじゃないの?「バカ王に、俺はなる!」みたいな?」
「あぁ、『探せぃ!この世のバカをそこに置いてきた』的な流れか」
「お前ら俺をバカにし過ぎた。バカだけど」
バカがゲスタルト崩壊してるようだ。
「ちなみにゲシュタルトな。なんだゲスタルトって。ゲスなタルトみたいで非常に不快だ」
「心を読むな」
俺と愛華の知らないうちに読心術でも身につけたのだろうか。
「大志は単純バカなくせして難しい単語を使おうとするからな。読みやすい」
「マジかよ…、やべぇよ…、俺の親友が知らないうちに最近流行りのメンタリストに…」
「ハハッ、ジョークだよ。たまたまあたっただけ」
それはそれですごいと思うのだが。
「まったく…みんな昔から変わらないわね」
「「それはない」」
俺と啓太が考えていることは同じだろう。
いちばん変わったのはーーー
「変わったのは愛華だよ」
「変わってないのは僕だけだ」
「???」
愛華がハテナマークを頭に浮かべてる。
「あれ、てっきり同じことかんがえてんのかと」
「僕もだよ。というか、変わったのは大志も同じじゃないか」
「いやいや、確かに変わったけど、そんな変わらないだろ?」
たしかに俺は啓太は変わってないとは思うけど、俺も言うほど変わってないはずだ。
「ここは第三者に聞くのがいちばんだな」
「ああ、そうしよう」
2人の視線が1人のもとへ。
「えぇー、私?」
コクコクと頷く。
「そうねー、たしかに啓太は変わってないわね」
「よっしゃ!」
喜んでいいのか、親友よ。
「大志は…、変なところは変わってないけど、男として変わっちゃいけないところが変わったわね」
うんうんと啓太が頷く。
「まてまて、なんだそれは。俺がモテないのはそのせいなのか!?」
だとしたら死活問題だ!
至急改善しなくては!
「……下心が丸見えの人に教えても良いことなさそうね…」
「同意するよ、こいつはモテたら調子にのる」
二人して俺をいじめにかかるなんて…。
「まぁいいんだけどネ。いつか俺の魅力に気づいてくれる女神があらわれてくれるさ」
「あぁ、メデューサとかね」
「そうそう、一目見たときから視線がはずせない…って石にされるよ!」
「…灯台もと暗し…」
「なんか言ったか?」
愛華が何かいったような気がしたのだが。
「なんでもないわ。はやく行きましょ」
愛華が歩を速める。
「はぁ…まったく大志は」
「???」
啓太までなぜか呆れ顔になっている。
「変なやつら」
「「お前だよ!」」
ツッコミが鋭い!
※※※※※
家まであと1キロというところ。
「…めて…くだ…い」
誰かの声がする。
「おい、止まれ」
「なに、次はどんなボケをかますの?」
「静かに」
俺の表情をみて、啓太の顔がこわばる。
「…やめて……さい」
確かに誰かの声がする。
しかもそれは。
『助け』を求めてる。
「はぁ…やっぱり変わってないのは大志もなのかしら」
「そういうことだ。行くぞ」
俺を先頭に声がした方向へ進む。
声がしたのは俺たちがいた道につながる路地裏からだった。
※※※※※
「やめてください。僕は見ての通り男ですよう」
路地裏の少し広めにあいてるスペースに6人。
1人を5人が囲んでる
「いやいや、こんな可愛い子が男なわけないっしょ。男装が趣味でもぜんぜんオッケーだけどオレ」
囲まれているのは身長が低めの男用のブレザーを着た…。
「たけちゃん?」
「え…大志君?」
知り合いだった…。
よくみたらうちの学校の制服だし。
囲んでる方は近くの不良校の生徒のようだ。
「あんだてめぇら?今ナンパ途中ナンデスケド」
「たけちゃん…、やっぱり女の子にしかみえねーもんな…」
ピンクの髪留めで頭の右側に小さなおさげをつくっており、その童顔と小さな肩幅は乙女のそれとなんら遜色はない。
「無視ってんじゃねーぞコラ」
「せめて髪留め外したら?」
「こ、これはお婆ちゃんからもらった大事なお守りなんですよう。外せません…」
まったく可愛すぎるぜ。
「だから…無視んなよ!」
不良の1人が殴りかかってくる、が。
「ハッ!と」
軽くみぞおちを殴るだけでも、相手から来てくれるので威力は倍増だ。
ヴッ、といううめき声をあげ沈んでいく。
「て、てめぇ!」
「まてよ、今確認するから」
「確認?」
そうしてカバンからあるものを取り出す。
「なにそれ?手帳?」
たけちゃんが興味深そうにみてくる。
「うん、分かりやすくいうなら…『大志の六法全書』みたいな?」
そう言うと後ろからため息が。
「はぁ…長くなりそうだよ。愛華」
「電話しとくわ」
愛華は路地裏から出ていく。
「大志、やばくなったら加勢するからね」
「あぁ助かる。お前は俺にとっての『法の支配』だからな」
ニヒルに笑いあう俺たち。
「こいつら2人でオレらとやりあうつもりだぜ」
「さっきのはオレらの中で一番のしたっぱだってことを知らねぇんだよ」
「あいつは俺たちの本気の3割ほどの強さだってのによ」
下卑た笑いが響く。
たいへん不快だ。
「その四天王が1人倒された時みたいな言い方やめてくれ。ゲームやってるみたいな脱力感湧くから」
ため息がこぼれてしまう。
「あと、勘違いするな。俺はお前たちに加勢するんだよ」
啓太は呆れたような手振りで不良たちの間違いを正す。
「は?」
「えーと、あった。『誰かが困った人に絡まれてたら』」
ペラペラとページをめくると、目当てのページを発見したので、朗読する。
「『その困った人が不良のようなら、諭すことを諦め、絡まれている人をつれて逃げる』」
「はぁ?何いってんだこいつ」
「『しかし、絡まれている人が友人ならーーー』」
手帳をパタンと閉じる。
「『相手が2度と馬鹿な真似をしないように体罰を与える』」
「ま、一番多いパターンだよね」
拳を鳴らし、調子をみる。
絶好調だ。
「さぁ、てめぇら。俺の友達にちょっかいだすなんて良い度胸してんじゃねーか。俺の名前をよく覚えてから気絶しろよ?テストにはでねーけど、夢枕にはでるかもしんないからよ」
一息いれて、言い放つ。
「月川大志、俺の名だ」
「てめぇみたいなもやしに何ができんだよ!」
早速殴りかかろうとしてきた。
「もやしなめんな」
その相手の襟をつかんで、回転。
遠心力にのっとり、相手の集団の方向へ投げ返す。
「グッ!」
「痛ぇな!こっちくんなよ!」
「それなりに強いっぽいな。囲むぞ!」
たけちゃんから離れ、俺を囲む。
「大志君!」
「大丈夫だ。ちょっとそこ動くな」
釘をさしてまず正面の相手に向かい合う。
「リンチされそうになったらどうするかしってるか?」
「知るか!」
「まずは1人を集中的にぼこぼこにして、威嚇するんだよ。てなわけでゴメンな」
「……は?」
襟首をつかんでおもいっきりこちらに引き寄せ、ヘッドバットをかます。
それを何度も何度も何度も。
「て、てめぇ!」
5秒ほど眺めていた不良が状況を理解し、動き始めた。
その5秒で1人気絶してるのだが。
「あと二人」
「黙ってみてりゃ調子のりやがって!」
その言い方だとさも自分が状況を理解した上でうごかなかったようにきこえるんだが?
「ただビビって動けなかっただけだろ?」
「ぶっ殺す!!!」
またもや殴りかかる。
「なんだお前ら。殴るしか能がないのか?最初の三匹だって二つ以上は技があるってのに」
ポケモンのことだが通じないだろうか?
「んじゃ、俺は『地球投げ』!…なんつってね!」
軽くパンチをいなして襟首をつかむ。
そして背負い投げの要領で投げ飛ばす。
「ふぅ…、あと1人は……っと!」
ガチン!
さっきまで立っていたところに鉄パイプが落ちてくる。
「糞が!」
「1人だけ武器持ちか。でも、それで罪を重くしたりはしないけどな」
最後の不良は鉄パイプをむやみに振り回している。
「ただ全員殴り飛ばすだけで終わらせんのもなんだしなぁ…。アレやるか!」
「大志、無駄にケガさせたら面倒だから。『やりすぎるな』」
啓太が目を細め言う。
どうやら通りに待たせている愛華が退屈してないか心配らしい。
「…ちぇ、まぁいいけどさ」
「オラァァァァ!」
突進してくる不良。
鉄パイプは高く振りかざされている。
「オラァ!」
相手の顔めがけてストレートをきめる。
ドサッ、と不良が崩れ落ちるこを見て振り返る。
「ケガはねぇか?たけちゃん」
「う、うん。だけど大志君、どうして…」
「あ、ちょっと待って。今後片付けするから」
頭にハテナマークを浮かべる男の娘、いやさたけちゃん。
「啓太、こいつらどこ校?」
「たぶん南ヶ原高校だね。あそこのアタマは…、二頭くんだっけ?」
「OK、あと少し待ってて」
そうして携帯のアドレス帳からお目当ての名前をさがす。
「あぁもしもし?うん、そう。ちゃんと下にも言ってる?あんまやんちゃすんなって。……まぁいいよ。四人、縦岩2丁目の路地裏で寝てるから、教育よろしく〜」
一方的に言って一方的に切る。
オレ流交渉術だ。
「んでたけちゃん、どうしてってのは何?どうして助けたか?どうして強いか?どうして他校に詳しいか?どうして…どうした?」
「…どうして…。いや、あの噂は本当だったってだけの話かな。なんでもないよ、大志君」
にっこり微笑む顔はやっぱり乙女だ。
「『この町には正義の味方がいる』ってね。まさかそれが大志君だとは思わなかったけど」
「そんなたいした者じゃないよ。自分のルールに従う自己チュー野郎だ」
啓太が隣からヤジをとばす。
否定はできないのだが。
「ちょっと!遅いわよ!」
愛華が怒りながら路地裏に入ってくる。
「悪い、じゃあねたけちゃん。夜道には気をつけて、また明日」
「うん、ありがとう。また明日」
そうしてたけちゃんとは別れる。
これが俺の日常で、非奇跡的な世界だ。
そしてあの奇跡から5年後の今日。
奇跡は再び起こる。
彼はとても強いです。
そして彼のまわりも強い方ばかりです。
でも強さにもいろいろあります。
力の強さ
意思の強さ
知能の強さ
彼らはどんな強さを、或いは弱さを持っているのでしょう。
次回へ続きます




