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第八話

 翌日もダリルはノースウィンドウを去らなかった。

 エリーの心配をよそに、穏やかな日差しの中ふらりと街の探索へ出かけていった。『あんな魔法使いのことなんか知らない。どうなろうと私には関係ない』エリーはそう思うようにして、普段通りの一日を始めることにした。だが、『君は思っていることの反対のことを言う』と言ったダリルの言葉が、ずっと頭から離れなかった。否定すれば否定するほど大きく膨らんでいく魔法の魅力…その気持ちを必死で押さえている自分にも気づいていた。

 

 エリーがいつも通り客室の掃除をしている間、サムは一人で宿屋の外に出ていた。宿屋前の石畳に、チョークで夢中になって絵を描いていた。

(ダリルはカッコイイなぁ。大人になったら僕もあんな格好がしたい!カラスの友達もほしいや)

 白いチョークでダリルを描き、その肩にはカラスを付け足した。自分の描いた絵を眺めてうっとりしていると、突然コツンッと頭に石が飛んできた。

「いたっ!」

 サムが頭に手をやって振り返ると、サムと同じ年くらいの少年達がサムを見て笑っていた。

「何やってんだサム?」

 少年達はサムの回りに集まってきた。

「また変な絵描いてるよ。気味悪ぃ」

「ヘンテコな格好、カラスまで描いてるよ」

「へんじゃない!ぼくのともだち!」

 サムはムッとして立ち上がった。

「へんじゃない!ぼくのともだち!」

 少年達はサムのたどたどしい言葉を真似て笑い合った。

「まあ、のろまなお前にはカラスの友達がちょうどいいよな 」

「かしな!」

「あっ!」

 少年の一人がサムの手から無理矢理チョークを取り上げた。そして、サムの描いた絵をチョークでめちゃめちゃに塗りつぶし、その横に『バカ』と大きく書いた。 サムは悔しくて泣きそう になり、宿屋に戻ろうと駆けだした。と、すかさず足を蹴られ、サムは前につんのめってドサッと倒れた。

「ドジな奴!」

「またエリーに言いつけに行くのか」

「いつもエリー姉ちゃんにくっついてるもんな」

「一人じゃ何も出来ない弱虫サム!」

 少年達は声を上げて笑った。

 石畳の上にうつぶせに倒れたまま、サムは体を震わせた。少年達の顔が見えないから、何を言っているのか分からない。けれど、自分をバカにしてからかっているのは分かる。

(耳が聞こえるようになりたい!もっと強くなってみんなをやっつけてやる!)

 サムの目から大粒の涙が流れた。

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