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第六話

エリーは乱暴に客室のドアを開けた。ベッドにはダリルがごろんと横になっていた。口には棒つきキャンディをくわえ、棒の部分だけ口から出して口をもぐもぐさせていた。エリーはダリルを無視し、掃除用具を抱えるとつかつかと中に入って行った。ダリルは半分身を起こし、エリーの様子を目で追った。

(君はいつもノックせずに部屋に入って来るのかい?)

 ダリルの声がエリーの心の中に響いた。エリーはビクッとしてダリルを振り返った。ダリルはキャンディをくわえたまま、呑気に微笑んでいる。

「私は耳が聞こえるの。言いたいことは口で言って!」

「君は部屋に忍び込むのが好きだね」

「私は部屋の掃除に来ただけ。昼間はみんな出て行っていないの。部屋にいるのはあなただけだわ」

「部屋に連れ戻したのは君なんだけどね」

「!……」

 エリーはプイとダリルから顔をそむけ、部屋の掃除に取りかかった。

「魔法の本はもう読んだかい?あれは初心者向けだから、君にも分かると思うよ」

 エリーは床を拭くモップの手を止めた。

「あの本は後で返すわ。私には必要ないから」

「本当に?…君にあげようと思っていたんだがね。君は随分魔法に興味があるようだし」

「き、興味なんかないわ!…それと、サムには近づかないで。あの子は魔法の存在さえ知らないんだから、絶対あの子の前で魔法は使わないで」

「何故、そんなに魔法を嫌うんだろうね?魔法を使えば掃除もあっという間に終わってしまうんだよ」

 エリーはダリルを警戒して、モップを握りしめた。

「魔法は不幸を呼ぶわ。ずっと昔、この国で魔法使いどおしの争いがあったのよ。権力をめぐって魔法を使った戦いが始まった。魔法の攻撃で多くの人が犠牲になったらしいわ。だからそれ以来この国では魔法を使うことを禁止されるようになったの。魔法使いは国を滅ぼすことになるから」

「それは悪い魔法使いのせいさ。君は時々思っていることの反対のことを言うんだね」

 ダリルはフフッと笑った。

「私は魔法使いが嫌い!人の心を読むなんて失礼だわ」

 エリーは頬を膨らませ、掃除を再開した。その時羽音がして、窓からカラスが入って来た。

「カラス君のお帰りだ。キャンディを食べるかい?サムのキャンディは僕には少し甘すぎるな」

 ダリルは食べていたキャンディを、カラスに向かってふわっと投げあげた。 キャンディはスローモーションでカラスの元まで飛んでいき、カラスは足で上手くキャッチした。 カァと鳴くと、カラスは足にキャンディを持ってなめ始めた。

「……」

(魔法は悪いこと。魔法使いは嫌い…)

 その光景を眺めながら、エリーは自分に言い聞かせた。

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