表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/24

第四話

「ダリル!!」

「やあ、昨夜の夜這いのお嬢さん」

 ダリルは店先の箒を数本、手に持ち上げて振った。

「エリーの知り合いなの?…」

 リリィは目を丸くしてエリーを見つめた。

「ち、違うわよ!ただの宿屋のお客よ…」

(なんでまだここにいるの?!しかも魔法使いが箒だなんて、あやしすぎるじゃない)エリーは、今にもダリルが箒に乗って空を飛ぶんじゃないかと思い冷や冷やした。

「カラス!」

 サムが空を指さして言った。空を旋回していたカラスが、ゆっくりとダリルの肩に降りてきた。不気味な声で鳴くカラスに、リリィは小さく悲鳴を上げた。エリーは手綱を引くと、ダリルの元まで馬車をつけた。

「お客様!今朝出発されるんじゃなかったですか?」エリーは皮肉を込めて言った。

「この国が気に入ってね。もうしばらくいることにするよ。良い箒もたくさんあるようだ」

 ダリルは両手に持った箒を持ち上げてウィンクした。

「でも!…」

(なんて呑気なの。状況がまるで分かってないわ。立て札の文字までイタズラして)エリーはダリルの態度に苛立ちを覚えた。

 サムは荷馬車から身を乗り出して、ダリルの肩にとまっているカラスを見つめていた。カラスをこんなにも近くで見るのは初めてだった。

「名前はカラスだよ」

 サムは驚いてダリルを見た。ダリルは微笑んでサムを見つめ返した。

(今、名前を聞こうとしたんだ)

「だから教えてあげたんだよ」

(え??僕何も喋ってない)

「口で話すより簡単だろ?」

(思ってることが分かるの!?)

 エリーは一人で喋っているダリルを怪訝な顔で見つめた。

(お兄さん、すごいや!唇の動きを見なくても話が出きるのって便利だな)

 サムは満面に笑みを浮かべた。

「エリー、彼変わっているけどとてもハンサムね」

 リリィはエリーの耳元で囁いた。

「え?…」

「送ってくれてありがとう。エリーに素敵な彼が出来たなんて知らなかった。今度ゆっくり話を聞かせて」

 リリィはエリーの顔を見て微笑むと荷馬車を降りた。

「あ、ちょっとリリィ。違うわよ…」

 リリィは手を振ると仕立屋の方に駆けていった。

「彼女、綺麗だね。ま、結婚相手から奪ってしまっては相手が可愛そうだな」

 エリーは軽くため息をつく。

「お客様、宿にお連れしますわ」

「まだ買い物が終わっていないんだ。もう少し待ってくれるかい?」

「もう時間です。どうぞお乗り下さい!」

 エリーはダリルを睨んで、ぴしゃりと言った。

「やれやれ、せっかちなお嬢さんだな」

 ダリルは箒を店先に置くと、ゆっくりと荷馬車のサムの隣りの席に座った。サムは尊敬の眼差しでダリルをみている。

「ダリル、ともだちになって」

 エリーの心配をよそに、サムは心の読めるダリルがすっかり気に入っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ