第二十一話
夕暮れ近くになり、エリーは居酒屋の仕事を手伝いに部屋から下りてきた。今日は一日部屋に籠もっていたが、気持ちはだいぶ楽になってきた。
「エリー、具合は良くなったかい?」
叔母は心配そうにエリーに声をかけた。
「うん、もう大丈夫。心配かけてごめんなさい」
「それなら良かった。最近また良くない流行病が広がってるようだから心配したよ。元気なエリーまで病気になったかと思った」
「元気だけが私のとりえだから」
エリーは笑顔で答えた。
「今日はサムも手伝ってくれたんでしょう?」
「ああ、それとあの黒い服着たお客さんも手伝ってくれたよ」
「……」(ダリル?)
「なんかうさんくさいお客さんだねぇ。旅人にしちゃ長いこと泊まってるから、手伝った代わりに宿代払わないつもりかと思ったよ」
「そんなことはないと思うけど…」
「ま、後二、三日で旅立つつもりだって言ってたから、構わないがね」
「…そう」
(ようやく出ていく決心をしたのね…この国は早く出ていった方がいいわ)そう思いながらも、一抹の寂しさがエリーの心をよぎった。
「あ、サムがね、変なことを言うんだよ。横笛の音楽を聴いたって」
「横笛の音楽?」
「そうさ。聞こえるわけないのにね、えらく嬉しそうに話していたよ」
「……」
おかしなバラの花が演奏していた横笛の曲を思い出し、エリーは微笑んだ。何か心が癒されるような楽しげな曲だった。
「サムはきっと心の中で聴いたのよ」
心の中でなら、どんな音楽もどんな言葉も聞こえる。話すのも随分楽になる。いつかサムと心で話がしたいとエリーは願った。魔法に対する関心が一層募っていく。
いつも読んで下さってありがとうございます!今回短いです。(^^;)ラストに向けての展開は頭の中で出来てきましたが、なかなか文章が追いつきません。^^;長く書いてると愛着わいてきて、書き終えたら寂しいだろうなぁなんて考えてます。