表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/24

第十四話

 白い雲の浮かんだ青空を一羽のカラスが高く飛んでいた。カラスは大きく羽ばたきながら、街の中心に位置する壮大な城の方へと向かって行く。そして、城の中心まで来ると、ゆっくりその上空を旋回した。

(予想以上に警備が厳重だな…)

 城の正面へ続く堀の対岸から、ダリルはそびえ立つ城を眺めた。堀に架かる橋の向こうは、堅く門が閉ざされていた。門の前には二人の厳つい門番が、微動だにせず見張っている。ダリルは正面を避け、大きな堀の回りを歩いた。高くて頑丈な塀からは、城の中の様子は全く見えない。だが、多分塀の内側には等間隔で兵士が見張っているはずだ。 ダリルはふと立ち止まり、神経を集中させて呪文を唱えた。しばらく目をつぶりじっとたたずむ。

(…ダメか。何も見えてこない)

 城の内部の様子を探ろうとしたが、頭の中には何の情景も浮かんでこなかった。ダリルは、フーと息を吐く。

「認めたくはないが、まだまだ修行が足りないようだな…」

 ダリルは空を見上げ、ピューッと指笛を鳴らした。城の上を旋回していたカラスが、ゆっくりとダリルの元に舞い降りて来る。そして、カァと小さく鳴くとダリルの肩にとまった。

「カラス君、後でじっくり城の様子を教えておくれ。どうもここでは魔法に集中出来ない。魔法の力を抑えられているようだ」

 カラスはダリルを見て、二、三度頷いた。

「本当にこの国には魔法使いはいないのか?…何か大きな力を感じるんだが…」


 その日の夜遅く、エリーは厨房のかまどで薬草を煮込んでいた。店は閉店し、叔母夫婦も部屋に引き上げていた。ぐつぐつ煮える鍋をゆっくりとかき混ぜる。

(見た目は気持ち悪いけど、効き目は最高よ。でも、酷い匂いね…)

 エリーは思わずせき込んだ。緑色のドロドロした液体が、きつい匂いを放っている。

と、厨房の中にヒューッと風が吹き込んできた。

(おかしいわね。ドアも窓も閉めたはずなのに)

 エリーが後ろを振り向くと、そこにカラスを連れたダリルが立っていた。

「ビックリした…どうやって入って来たの?」

「僕が魔法使いだということをお忘れかい?」

 ダリルはフッと笑う。

「泥棒の真似はしないでね」

 エリーはまた薬草作りに戻る。

「それにしてもすごい匂いだな」

「良薬は口に苦いの。あなたの魔法よりずっとよく効くから、これを飲めば一晩で元気になるわ」

「ふーん、今日はやけに疲れたから試してみたい気分だな…」

 ダリルはぐつぐつと煮えたぎる鍋を覗き込む。

「ダメよ、これはジョージの薬だから。だいたい、こんな遅くまで何してたのよ」

「まあ、色々とね…やっぱりやめておこう。僕にはとても飲む勇気はないね。カラス君はどうだい?」

 カラスはクビを傾げる。

「それにしても、鍋をかき混ぜる君の姿は魔女のようだね」

 ダリルは大きくあくびをする。

「お休み、未来の魔女さん」

「それは誉め言葉なの?…」

 エリーが後ろを見た時には、もうダリルの姿はなく、奥の階段を上がる音がした。

(本当にお疲れのようだわ…私も早く作りあげなきゃ )

 エリーは鍋を一混ぜした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ