第十一話
(魔法は戦いの手段だけじゃない。傷や病気の治療も出来る…)
その夜、部屋の鏡の前に座り髪をとかしながら、エリーは思った。
(あの時魔法が使えていたら、多くの人の命が助かったかもしれない。父さんや母さんも死なずにすんだ。サムの耳も聞こえてた。もし私が魔法を使えたら…)
エリーは髪をとく手を休め、ダリルが治した手の指を見た。傷跡は跡形もなく消えている。痛みも全くない。
(魔法は本当に悪いこと?魔法使いは悪者?…)
鏡の中の自分に問いかけてみる。答えはもうとっくに分かっている。
と、部屋の外から微かな音が聞こえ、コツコツとドアを叩く音がした。
「誰かしら?」
エリーは立ち上がると、警戒しながらそっとドアを開けた。
「!?……」
そこには「魔法の本」が浮いていた。正確には「魔法の本」に白い羽がはえ、パタパタと羽ばたいていた。
「何これ?」
「魔法の本」は、ドアの隙間をくぐり抜け、パタパタと浮き沈みしながら部屋に入って来た。そして、しばらくエリーの回りを飛び回った後、エリーの両手の中に着陸した。それと同時に白い羽は消え、表紙に赤い文字が浮かんできた。
『私は必要とされている人の元にまいりました。今日からあなたが私のご主人様です』
「え?…」
赤い文字はすぐに消えて、また別のメッセージが浮かんだ。
『手荒れにはオリーブオイルと僕のキスがよく効くーダリルー』
「?……」
(ダリルは変な魔法使い!…でも…)
赤い文字が本の中に消えていった後、エリーはそっと本を抱きしめた。何かがふっきれたような、温かな安らぎが胸の中に広がった。
(私は魔法が好き…)
エリーは「魔法の本」を胸に抱き、微笑んだ。
ようやく物語の前半が終わったような感じです。(^^;)これから最初は設定してなかった登場人物も出てきたりして^^;、物語が展開していくと思います。どうぞ、温かい目で見守っていてください。感想メッセージいただけると嬉しいです。(^-^)