表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/24

第十話

ベッド脇のテーブルの上に、「魔法の本」はあった。

ダリルの客室の掃除に来たエリーだが、どうしてもその本に気を取られてしまう。

(私には関係のない本だわ…昨日返したばかりじゃない)

言い聞かせてベッドの下を箒で掃こうとした時、窓から風が吹いてきて、パラパラッと本のページをめくった。自然と本に目がいく。古代文字のような呪文の言葉が太字で書かれ、その説明と小さな挿し絵が見える。

旅の商人達から、魔法使いの噂はよく聞いていた。両親にはきつく禁止されていたが、内緒で魔法の話を聞かせて貰っていた。小さい頃、箒にまたがって空を飛ぶ真似もしたことがある。

『なぜ魔法使いは来ちゃいけないの?なぜ魔法を使っちゃいけないの?』

そんな質問をしては、両親を困らせていた。

「魔法か…私にも空が飛べるのかしら?…」

ふとエリーにイタズラ心がわき、ドレスの裾をめくって掃除用の箒にまたがってみた。

(空が飛べたらいいな…)

フフッと笑った時、いきなり部屋のドアが開いた。そこにはダリルとサムが立っいる。

「あっ、あの…」

エリーは足に箒を挟んだまま固まってしまう。ダリルはフッと笑った。

「もしかして空を飛ぶつもり?」

「ち、違うわよ!」

「何なら僕が力を貸そうか?」

「やめて!」

指を動かそうとするダリルを見て、エリーは慌てて箒を引き抜いた。箒を振り上げたひょうしに、箒がテーブルの上のガラスコップにあたり、コップが床に落ちてくだけた。割れて粉々になったコップを見て、気が動転しているエリーは素手で破片を拾おうとかがんだ。

「あいたっ…」

指が切れて血がにじむ。それを見てサムが駆け寄ってきた。

「エリー!だいじょうぶ?」

心配そうに顔を覗き込む。

「平気よ。ちょっと切っただけだから」

エリーはサムに笑顔を見せた。と、ダリルがつかつかと歩み寄ってきた。

「どれ、見せてごらん?」

「大丈夫よ!」

ダリルは強引にエリーの右手を取った。人差し指から血が流れている。

「結構傷口が深いな…」

エリーとサムが見守る中、ダリルは片手をエリーの指にかざし低く何か呟きながら、円を描くように手を動かした。と、みるみる傷口はふさがっていき、指の血は引いてい行った。

「……」

エリーとサムは驚いてその様子を見つめた。

「ダリルはてじなしみたいだね!?どんなトリック??」

サムは感心してダリルを見る。

「僕は手品師じゃないからね。トリックは、なしだ」

そう言うと、軽く握ったエリーの手を引きよせ、そっとキスした。

「ひゃっ!何すんのよ!」

エリーはドキッとして手を引っ込めた。

「君の手があまりに荒れてたもんで、きれいにするおまじないをしたのさ。左手もやっておこうか?」

「……」

エリーは自分の手を見つめ、おずおずと左手を差し出した。ダリルはニッと笑うと左手の甲にも軽くキスした。

「効果は明日でるよ」

エリーは不思議そうに両手を見ながら立ち上がった。

「ダリル、ぼくにもやって!」

サムは無邪気に両手を差し出す。

(このおまじないは女性限定なんだよ)

ダリルはサムの心に伝えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ