ずっと一樹のターン
「お待ちしておりましたぜぇ~旦那」
奴隷商人の男は、ハルクとは違い卑しそうな顔で一樹に挨拶をした。
一樹は、何かとか笑顔を作り返事をした。
「待たせてしまって申し訳なかった。
それにしても随分早いな、まだ時間に余裕はあったと思ったんだがね」
「当たり前ですよ
商談では、相手より早く出向くのは鉄則ですぜ」
(こっちでも15分前行動は当たり前なのか
まぁ今回はあまり関係ないと思うんだがね)
「かまわないさ、今回はすでに商談を済ませているんだからな」
「手間賃のほうは、まだ決めてなかったと思いますがねぇ」
「本当にちゃっかりした奴だなお前は」
そんな挨拶をすませ、一樹は胡椒と砂糖が入った袋を相手に見せた。
「ほら、こっちの袋には胡椒がこちらの袋には砂糖が入っている。
確認してもらえるかな?」
辺りが少しざわめいていたが、
奴隷商人の男は、すぐさま袋の中身を確認しだした。
勿論ちょろまかされない様に、一樹は横でずっと男の手を見ていた。
(変なことしやがったら、ただじゃおかないからな)
そんな一樹の目が気になったのか
奴隷商人の男は、一樹をチラチラと見ながら確認していた。
「確かに確認しました。
そうですね、今の胡椒と砂糖の価格ですと
このふたつの袋全部でこの奴隷と交換ってとこですかね」
「この袋の中身全部だと?」
「ええそうです、今の胡椒と砂糖の価格ですと
この2つの袋でも届くかという感じですぜぇ旦那
そうだろうみんなぁ~」
そう叫ぶと周りの野次馬もそうだ、そうだと頷いていた。
しかし、一樹は違和感を感じていた。
(胡椒と砂糖の重さも量らず、
この量で、300イェンが妥当なんてなんでわかるんだ。
しかも、こいつは砂糖と胡椒の品質がわかるほど胡椒と砂糖に詳しいっていうか?
ここが中世なら上白糖なんて無いはずなんだがな)
「勿論、足りなかったとしても足りない分を後から請求したりはしませんから
安心してください旦那」
一樹はこの卑しい顔をみて確信した。
(間違いない。
こいつこっちを田舎物だと思って値段誤魔化して騙そうとしてやがる。
なら、こっちもそれ相応の手段にでるまでだ)
「ところで、胡椒と砂糖の交換だとこちらから持ちかけておいてなんなんだが
300イェンを現金で支払うってのはありなのか?」
「現金でですかねぇ、あっしは一向に構いませんが
旦那は、今お金をお持ちでないのでは?」
あいも変わらず卑しそうな笑みを浮かべる奴隷商人の男
お前は金がないだろとそう言ってるようだ。
(言質を取った、ここからはずっと俺のターン)
「さぁ、お集まりの皆さん、この2つの袋には大量の砂糖と胡椒が入ってます。
そこの男が、確認済みですのでご安心ください。
今この場にて、この2つの商品のオークションを始めたいと思います。」
「旦那ぁ~行き成り何を言ってるんですか?」
「おいおい、ニーちゃんおくしょんってのはなんだい?」
周りの野次馬が騒いでいる。
「ええ、オークションとはですね。
私の故郷の言葉なんですが
早い話が、この胡椒と砂糖に一番高い値段をつけた人が買い取るって手法ですよ」
「旦那、ですからこの胡椒と砂糖じゃ300イェンいくかいかないかって価格ですよ。
こっちとしても破格の値段だと思いますがねぇ~」
奴隷商の男は、少し焦ったような顔で一樹に喋りかける。
そんな男は無視して袋から砂糖と胡椒を周りの野次馬に少量ずつ配りだす。
品質を確かめて貰うためだ。
(この場で砂糖と胡椒の品質を確かめてもらえば
ここにいる人達もこれの価値に気づくはずだ。
そうすれば、この男だけに儲けさす訳にはいかないと思ってくれる)
「今お配りした、胡椒と砂糖はそのまま食べてもらって結構です。
どうですかいい品でしょう。
いいんですか皆さん、このままだとこの男だけが儲けますよ。
皆さんが儲ける機会が失われるんですよ。
はい、300イェンから開始します。
さぁさぁ、300イェンより上はいないかぁ300イェンより上はいないかぁ」
奴隷商の男は周りの野次馬を睨んでいるが、ふと野次馬から声が上がった。
「330イェンで買うぞぉ~」
(キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!)
「俺は400イェンだ」
奴隷商の男は野次馬に向かってこう叫んだ。
「てめぇら、話を合わせろって言ってあったじゃねぇか!」
野次馬はそんなもん知るかといった感じでこう返す。
「てめぇだけ儲けよとしたってそうはいかねぇんだよ
これだけの品だ王家にだって献上できる。
それを300イェンで買い叩かせる訳にはいかねぇんだよ!」
「はいはい、やっぱりそうだったんですねぇ~
おかしいと思ったんですよ。
まぁそれは置いておいて、オークションを続けましょう。
400イェンより上はいないかぁ~、400イェンより上はいないかぁ~」
「435イェン」
「520イェン」
最終的には3032イェン82セェン62リンという金額が付いた。
これだけの金額が付いた理由だが
変わった服装の男が、胡椒と砂糖を持ってくると噂を聞いた商人が、広場に集まっていたこと。
奴隷商の男が、胡椒と砂糖の交換の場で
自分に有利な状態を作る為に
知り合いの商人を集めていたのが裏目に出た形だ。
落札した男は、サムエと名乗り
さすがに、3000イェンもの金額を現金で支払うのはムリなので
支払いはギルド手形で構わないかと言ってきた。
一樹は、先に奴隷商人の男と話をつけたいので待っててくれと返事を保留した。
がっくりとした奴隷商人の男に向かって一樹はこう言った。
「さて、この獣人だが、300イェンでよかったんだよな
まぁ、手間賃もいれて、400イェンで買い取ろうと思うがどうだろう?」
男は驚いた顔している。
当然、自分を騙そうとした相手だ買い叩かれてもおかしくはずなのに
一樹は手間賃として、もう100イェン余分に払うと言っているのだから驚くのは当然だ。
しかし、一樹としては
ここでよけいな恨みを買う必要はないわけでこの金額を提示したのだ。
「旦那、本当にその値段でいいんですか?」
「かまわんさ、手間賃を払うといっただろ?
ところで支払いだが、ギルド手形でも構わないか?」
「ギルド手形ですか、こちらとしては支払って頂ければ
どんな形でもかまいませんよ」
奴隷商の男は、気持ち悪いくらい良い笑顔でそういった。
「だそうです。
サムエさん先ほどの話ですが、ギルド手形での支払いで構いません。
ですが、こちらの男に400イェン分のギルド手形を渡してください。
残りの2600イェン分をギルド手形で
残りの32イェン82セェン62リンを現金でいただけますか?」
サムエは
「今用意してきますので暫くここでお待ちください」
そう言って去っていった。
15分ほどで戻ってきたサムエは、奴隷商の男に100イェンの手形4枚を渡す。
続いて、一樹に100イェンの手形26枚とお金の入った袋を渡してこう言った。
「次も、胡椒と砂糖が手に入りましたら、
ぜひとも、私の商会に卸して頂きたいものです。
場所は、この街でサムエ商会と言えば誰でも知っていると思います。
それと、これをお持ち頂ければすぐにでも私へ取り次がせますので。
では、これで失礼します」
そういって、サムエは木札を渡し
砂糖と胡椒を抱えてホクホク顔で帰っていった。
(これは、名刺のようなものかな?
しかし、あの顔だとあの値段でも買い叩かれたっぽいな
まぁ10分の1で買われなかっただけでも十分だけどな)
次に、奴隷商人の男から獣人の女の子と
指輪を受け取る。
「その指輪がこのメスの契約の証でさ
それじゃあ、あっしはこの辺で
次のもまた頼みますぜ旦那ぁ」
そう言って男は去っていった。
女の子と一樹の二人だけが残されている。
(さて、あらかた片付いたな。
この指輪が契約書のかわりなのか?
そんなことより、一つ大きな問題が残ってるけどうやって解決するべきか・・・)
そう、一樹に買われた獣人の女の子は、
一樹に親の敵かと思うほどの
恨みの視線をぶつけてきているのだった。
1イェン=日本円で約1万円
1セェン=日本円で約100円
1リン =日本円で約1円
1月24日修正しました。
と考えていただければいいと思います。