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一樹の反撃 1

一樹とサムエの交渉は決裂してしまった。

一樹的には、サムエと取引することによって、

安全を確保出来るというメリットがあった為、

サムエとの取引には積極的だった。

継続的に売買を行うので、

多少なら値引き交渉にも応じる姿勢だった。

しかし、サムエは一樹を駆け出しの商人だと下に見過ぎた。

物の価値もわからないような商人だと思い、

かなり値引いた値段での取引を持ちかけたのだ。

サムエが最初に提示した取引金額は、


砂糖一貫 281イェン   一斤 45イェン


胡椒一貫 431イェン   一斤 69イェン


これが、サムエの提示した取引金額だ。

オストでは、江戸時代の一貫、一斤が重量の目安となっているようだ。

一樹は、一貫、一斤という重量に戸惑ったが、

携帯の辞書機能を隠れて使うことにより、

正確な重量を確認したところ、

前回よりも、約1200イェンの値引きを提示されていた。

確かに、一樹はこの世界では駆け出しの商人だ。

この世界の知識がかなり不足している。

しかし、馬鹿ではない。

さすがに、これには応じられないと、

一樹が提示した金額は、


砂糖一貫 419イェン   一斤65イェン50セェン


胡椒一貫 629イェン   一斤98イェン


これは、前回の値段よりも約1割値引いた金額だ。

継続売買と安全料を考えれば、

これくらいの値引きに応じるのがいいだろうと考えたからだ。

それに、値段交渉では最初に大幅に値引いた金額を提示し、

そこから駆け引きで互いの妥協点に持っていくものだと思っていたからだ。

しかし、サムエは首を縦に振らなかった。

なので一樹は、前回よりも2割引いた値段を提示したが、

頑なに首を縦に振らないサムエ。

ここで、サムエが一樹の提示した金額が

前回の値段から、1割引き、2割引きと値引かれることに気がつけば、

計算能力の高い商人だと認識を改めたのだろう。

しかし一度、駆け出しの坊やだと思い込んだサムエは、


砂糖一貫 281イェン   一斤 45イェン


胡椒一貫 431イェン   一斤 69イェン


この値段でなければ、取引には応じないと答えた。

その瞬間一樹は切れた。

完全に舐められてると。

商人Aの時は感謝したが、こいつもあの商人Aと同じだと。

その場で、今回はご縁がなかったようです。

と言ってミミと櫛名を連れて部屋を出て行った。

残ったのは、唖然とした顔のサムエのみ。


「ふざけんな!あの商人

 前の取引では、世話になったが、

 あそこまで、舐めた値段を提示されて取引出来るかっての!」


ミミと櫛名も同調している。


「そうよ!そうよ!

 何が、亜人でも取引するよ!

 取引はするかもしれないけど、あからさまな値段での取引じゃないかしら。」


「あそこまで、露骨な値段を提示するとは思いもよりませんでした。

 ところで、一樹さん。

 これから、どうするですか?

 サムエ商会が後ろ盾になる件はもう無理でしょうし、

 確かに、一樹さんには敵が多いかもしれません。」


駆け出しの商人が、砂糖や胡椒を扱うのが気に食わない同業者などもいるだろうし、

それらを狙っている人間もいるだろう。

確かに、護衛には強力な人物が付いているが、

絶対とは言い切れない。


「それについては、考えがある。

 早い話が、サムエ商会以外に後ろ盾になって貰えばいいだけの話だよ。」


「「ん?」」


ミミと櫛名は同じように首を傾げる。

どうやら、サムエの話から推察することは出来なかったようだ。


「サムエの話を聞いてて思ったんだけど、

 貴族と王族の取引はサムエ商会が一番多いんだろ?

 でも、他の商会も取引がない訳じゃない。」


「確かに、そう言ってましたね。」


「逆を言えば、

 目の上のたんこぶであるサムエ商会から、

 そういった、上流階級との取引を奪って、

 商会の拡大を狙ってる商会がいると思うんだ。」


そう、サムエ商会が上流階級との取引が多いなら、

そのサムエ商会の取引を邪魔だと思ってる商会もいるはずなのだ。


「そういった商会と取引をしようと思ってるんだ。

 ミミは聞いてただろ?あのオークションの時、

 これなら、王族に献上出来る。

 そう言ってた商人がいたんだ。

 つまり、砂糖と胡椒は献上するほど希少価値があるもんなんだ。

 それを、安定的に販売できる商会があったら、

 その商会の覚えも良くなると思わないか?

 さらに、サムエ商会が前回買った砂糖と胡椒で同じ事をしていたとしても、

 サムエ商会は、もう砂糖も胡椒も手に入れることは出来ない。

 出来たとしても、量は極僅かなはずだ。

 俺は、絶対にサムエ商会には売らないからな。」


つまり、現在ハイネでのNo1商会はサムエ商会で間違いないだろう。

そこに、敵対している商会に砂糖と胡椒を売り、

サムエ商会の地盤を根こそぎ奪ってやろうという作戦なのだ。


(砂糖と胡椒以外にも、

 王族に献上出来そうなものは、

 まだまだ、いくらでもあるんだ。

 経済大国日本を舐めるな。

 サムエの野郎に吠え面かかせてやる。)


一樹の信条は、受けた恩は倍返し、受けた仇は10倍返しなのだ。

さすがに、命まで奪ってしまった商人Aに対しては、

とてつもない罪悪感を感じてしまったが、

元々、あの商人A達も、ボコボコにするくらいはやっていただろう。

義理や人情にあつい一樹だが、意外と短気なのだ。


「ミミと櫛名は、

 サムエ商会と敵対関係になりそうな商会を調べてくれ。

 それが、わからないようなら、

 サムエ商会と同等の規模の商会を調べてくれ。」


そう告げる一樹の顔は、ものすごくいい笑顔だった。

それを見てミミと櫛名は、


((一樹を敵に回さなくて、本当によかった。))


と心の中で呟いた。


一貫=3.75kg

一斤=600g 


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