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ずっとサムエのターン

今回は一樹ふるぼっこ

「やっぱりこの店の料理はうまいな!」


そんな一樹の声が響く店内。

一樹は、以前にもミミと一緒に来た飯屋で食事を摂っていた。


「ここの料理は美味しいわ。」


「はい、とても美味しいです。」


ミミと櫛名も、この店の料理を絶賛している。

しかし、店には客がポツポツとしかいない。


「こんなに美味しい店なのに、お客さんが全然いないな。

 前は、お昼過ぎだからお客が少ないと思ったんだけど、

 何か原因があるんかね?」


一樹は、ハルケの物価をよく知らないが、

ミミ曰く、この店は良心的な値段で商売をようだし、

こんなに美味い店なら、大繁盛してもおかしくない筈だ。

するとミミが、


「それはね。今のハイネで、

 お店で食事が出来る程お金を持っている平民がほとんどいないからよ。」


「よくそんなんで店を開いてるね・・・

 あれか、ハルクさんが言ってた街の修繕で税の負担が増えたって奴の所為か。」


そんな開店休業状態で、よく店が続くもんだと一樹は感心したが、


「一樹さん、それは違います。

 長く続く街の修繕で、街の平民の税負担が増えたのは事実です。

 ですが、何とか生活することは出来ていたんです。

 しかし、去年はそこに凶作が重なってしまったんです。

 その所為で、多くの平民が貧民街へ居住を移したと聞きます。

 税の軽減などがあれば、

 ここまでひどい状態にはならなかったのでしょうが。」


「つまり、今は生きてくだけで精いっぱいで、

 外食なんかに余分なお金を使えないってことか?」


「そうなります。」


櫛名は、悲しそうに呟いた。

亜人達は、狩りで食料の確保を行っている。

その為、去年の凶作の被害はほとんど受けなかった。

しかし、それは亜人だから出来ることで、

普通選人の森で狩りを行なったら、魔獣の餌になるのがオチだそうだ。

現在凶作により、小麦や芋の値段が高騰。

深刻な食糧難に陥っているようだ。


(そんな事になってたのか。

 こりゃ、砂糖や胡椒なんて売ってる場合じゃないかもしれないな。

 でも、砂糖や胡椒を買うのは貴族だろうから、

 実は、あんまり関係ない?)


「この街の状態は何となくわかった。

 飯を食ったら、ちょっと市場調査しに行こう。」


「一樹、この街の食糧難までどうにかしようと思ってるの?」


ミミはそんなのほっといて、私たちの事をもっと考えてほしいと、

目で訴えていた。


「違うよ。

 砂糖や胡椒を売るよりも、もっと儲かる物がないか調べにいくんだよ。

 そうすれば、ミミの考えをもっと早く実行出来るようになるかもしれない。」


どうにかしてやりたいとは思っているが、

一人では、どうする事も出来ない。

お金儲けのついでに、少しでも食糧難が解決出来るのであれば頑張るつもりだが、

率先してどうにかしようとは思っていない。


「サムエさんが買い取った砂糖と胡椒の売値も気になるし、

 こっちでは安く手に入るものでも、

 俺の村では高価なものがあるかもしれないからね。

 という訳で、午後からは市場調査をすることに決定。

 まずは、サムエさんの店によってから、

 色々巡ってみよう。」


その後食事を食べ終えた一樹達は、

ミミの案内で、サムエ商会を目指した。

サムエが言っていた通り、この街でかなり有名なんだそうだ。

店に入ると、ここでも店員がミミに対して露骨に嫌な顔をしていた。

しかし、サムエに渡された木札を見せると急に態度を変え、

慌てて奥の部屋に案内された。

店員の話では、サムエは今店を開けているので、

この部屋でお待ちくださいとのことだ。

30分ほど部屋で待っていると、

サムエが笑顔で部屋に入ってきた。


「いや~お待たせしてしまって申し訳ないです。」


「いえいえ、こちらこそ連絡もせずに来てしまいましてどうもすいません。

 私は、商人の一樹といいます。

 こちらは、付き人のミミと櫛名です。」


そう言って一樹は頭を下げる。

そのまま、当たり障りのない話を続け、


「そういえば、あの時は有難うございました。

 サムエさんが買い取ってくれたおかげで、

 あの商人Aに買い叩かれないで済みましたよ。」


「いえいえ、こちらもあれは随分と酷い値段だと思っただけですから、

 ところで、今日はどういった要件でしょうか?」


先ほどまでにこやかな笑みを浮かべていたサムエだが、

急に顔が厳しくなった。

さすがに、商売の話となると真剣な顔になるようだ。


(う~んどうすっかな・・・

 店先には胡椒も砂糖も置いてなかったから、

 値段がわからなかったんだよな。

 かと言って、ストレートにいくらで売れましたなんて聞けないし。)


商品の値段とは、

売値=原価+経費+利益などを計算して決められている。

しかし、一樹の場合には、

売値=利益となってしまっているので、

今の値段のままでも、十分利益がでているのだ。

しかし、なるべくなら高く買い取って欲しいと思うのは、

人の性というものだろうか。


「その顔は、前回の値段よりも、

 どうすれば高く買い取って貰えるかと悩んでる顔ですね。」


図星をつかれて焦る一樹。


「どうやら、一樹さんはまだ駆け出しの商人のようですね。

 例の売買方法は、

 物の適正価格が分らない為に起こした苦肉の策と言ったところでしょうか?

 あんな事、胡椒や砂糖なんて高価な物扱う商人がすることではないですからね。」


(やばい、完全にこっちの状態を読まれてる。)


完全にこちらの状態を読まれて更に焦る一樹と櫛名。

ミミは、サムエをかなり警戒しているようだ。


「ミミさん、そんなに警戒しなくてもよろしいですよ。

 我が商会が儲かるのであれば、亜人であっても取引させて頂きます。

 それと、胡椒と砂糖に関してですが、

 私の商会以外には、卸さないほうがいいと思いますよ。」


何故、そんなことを言うのかといった表情の一樹。

しかし、続くサムエの話を聞いて納得してしまった。


「砂糖や胡椒といった高級品ですが、

 貴族や王族といった上流階級の方々と取引のある商会でないと、

 扱い切れない商品です。

 他の商会が、そういった方々と取引がないとはいいませんが、

 私の商会以上の規模ではないでしょう。

 それに、一樹さんは例の件で目立っていますからね。

 これ以上変に目立っては、敵を作るだけです。

 そうなっては困るでしょうから、これからも私の商会に取引頂けるなら、

 私が、一樹さんの後ろ盾となり、

 そういったことから、お守りしようと思っているんですよ。

 決して、悪い話ではないと思うのですが。」


サムエの話を聞いて、一樹は悟った。


(やっぱり、海千山千の本物の商人には勝てないorz)



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