櫛名と一樹・・・・おまけでミミ
「櫛名さん、
俺にも、服従の契約が効果があることはわかりました。
何故、俺にも効果があるのかはわかりませんが、
それは、おいおい調べて行きましょう。
ところで、封印物の変更って出来るんですよね?」
封印物が小物であれば、日本に持ち帰りさえすれば、
誰かに操られる心配はないからだ。
亜人達を信頼してない訳ではないが、
やはり、心配の種は無いほうがいい。
「はい、一時的に椅子へ封印しましたが、
持ち運び出来るようなものに、再封印します。
封印する物に何か希望がありますか?
服従の契約に使うものは、指輪や首飾りが多いですけど」
「そうですか、
ちょっと待ってください。」
一樹は、そう言うと
持ってきた鞄をガサガサと探り出した。
そして、小さな箱を取り出してこういった。
「この指輪に、再度封印をお願いできますか?」
これは、雪江に渡せなかった婚約指輪だ。
(返品する訳にも、捨てるわけにもいかなかったからなこれは。
資金不足になったら、こっちで売り飛ばそうと思って持ってきたけど
こんな事に使うことになるとは、思わなかったよ)
櫛名に、指輪を渡し再度封印をお願いする。
「ところで、封印物の変更ってどうやるんですか?」
一樹が疑問に思い尋ねると。
櫛名が答えてくれた。
「封印者が解除を行うか、封印物を破壊すれば
服従の契約が解除されます。
今、解除を行いますね」
櫛名は椅子に向かって
「我、契約をここに破棄し、
汝の名を今解き放つ」
すると椅子が光輝き、一樹も光に包まれた。
(契約の時は、何も起こらなかったのに
解除の時は、光るのか
どうせなら、両方とも光ったりすればいいのに)
一樹がどうでもいいことを考えていると、
光は、徐々に弱まり消えていった。
「これで解除完了です。
では、再度服従の契約を行いますね。
我、汝に命名する。
汝の名は、一樹。
汝、契約にしたがい我に使えよ。
汝の名を、今ここに封じる」
(やっぱり、封印時は光らないんだな)
一樹が、更にどうでもいいことを考えているうちに、
服従の契約は完了したようだ。
「一樹さん、これで契約は終了しました」
「どうもありがとうございます。
これで、心配の種が一つ減りました」
すると、いままで口を挟まなかったミミが一樹を見つめて、
「そうね、確かに櫛名が気づかなかったら、
とんでもないことなった可能性はあるわね。
まぁ、一樹に服従の契約を使う人間がいるとは思わないけど」
(確かに、人間である俺に対して、
服従の契約を使う奴なんて、いるとは思わないけど。
確立は、0%じゃないからな。
もしかして、過去こっちに来た人が、
服従させられたとか、記録に残ってたら危ないしな)
かなり慎重になっている一樹だが、
過去フランク王国では、
人間に対して、服従の契約認められた記録はない。
「契約の件もそうですけど、
足の件も再度お礼をいいます。
ありがとうございました」
すると櫛名は、
「いえいえ、そんなお礼なんて言わないでください。
妻として当然の事をしただけですから」
櫛名が笑顔で爆弾発言をする。
一樹が固まり、時間が止まる。
すると、ミミが櫛名に詰め寄り叫んだ。
「一樹の妻どうゆうことよ!」
「どうゆうことと言われましても。
お父様から、一樹さんへ嫁いでもらえないかと言われまして、
私も、一樹さんでしたら構いませんと返事をしたのです。
私達亜人を、服従の契約から解放して下さった方ですから」
櫛名の話を聞いて、一樹の時間がようやく動き出したようだ。
一樹は、櫛名に突っかかるミミを押さえ込んで、
「櫛名さん、俺まったく聞いてないんですけど
詳しい話を聞かせてもらえませんか?
ミミも落ち着いて話を聞いてくれ」
かなり興奮しているミミを座らせて、
詳しく話を聞かせてもらう事にしたのだ。
「お話します。
竜人族としましては、
これから先、一樹さんとの関係の強化が大切になると考えたのです。
故に、私の嫁入りが決定しました」
櫛名さんの話を聞いて分かったことは、
山猫族ばかりが恩恵を受けるのは、ズルイという話だ。
一樹の護衛でも、山猫族が4名、山犬族1名が選ばれている。
危険な仕事であるが、報酬月50イェンと破格だ。
山猫族だけでなく、竜人族にも、
美味しい仕事を回して欲しいという訳だ。
何より、山猫族主導での、亜人の村建設を防ぐことが出来る。
現在一樹は、ミミ、ラステ、ミラーノ以外の亜人を頼ることは無い。
一樹が、それ以外の亜人をよく知らないので当然なのだが。
このまま、村の建設が始まった場合、山猫族主導での村の建設になる。
村が完成すれば、当然村の中枢が山猫族ばかりになるだろう。
そうなってくると、山猫族に有利な法を作ることも可能になる。
それを危惧した竜人族が、考えたのが櫛名の嫁入りなのだ。
「それって、私が竜人族に信用されてないってこと?
確かに、山猫族が村の中枢を占めるかも知れないけど、
それは、今も同じでしょ。
村が出来ても、そんな馬鹿みたいな法を作ったりはしないわよ」
櫛名の発言に、ミミは怒りを露にする。
この発言は、ミミ達山猫族を信用していないと言っているようなものだ。
「確かに、そうなのですが、
私達竜人族は、亜人の中でも特に数が少ないのです。
族長会議においての発言権も弱いですし、
村が出来た際に、これまで以上に弱い立場には立ちたくないとゆう
竜人族の考えも分かってください」
竜人族の数はとても少ない。
この区画では、20人ほどしか生活していない。
やはり、奴隷商人達に目を付けられやすいという点はあるが、
一番の原因は、他の亜人に比べて、竜人族は繁殖力が弱いのだ。
繁殖力が弱いというのは、語弊がある。
竜人族の生涯出産数は、約3人と決して低くはない。
しかし、竜人族は他の亜人よりも寿命が長く、成長が遅いのだ。
竜人族の寿命は約200年、成人するまでに4.50年かかる。
故に、竜人族の数はなかなか増えることがない。
逆に山猫族は、亜人の中で最大数を誇る。
生涯出産数も約5人多く、成人までは約10年と成長も早い。
寿命のほうも、約50年と人間と殆ど変わらない。
(現在は、区画内の人数調整が行われている為、
出産量の調整が行われています)
亜人の生活は、狩猟を得意とする山猫族や山犬族で持っている。
故に、亜人内での発言権も強いのだ。
竜人族も、薬師などでお金を稼ぎはいるが、
人に見つかる危険があるので、特に魔力が高いもの意外は、
人に混じって仕事をすることが出来ない。
しかも、人に混じって仕事をすることに、亜人は劣等感を感じる為、
竜人族は、現状肩身の狭い思いをしていたのだ。
しかし、ここで一樹と櫛名が結婚すれば、
今までの、竜人族の立場が一変するだろう。
だが、そうは問屋が卸さない。
「でもだからって、一樹と結婚っていうのは話が飛びすぎよ。
それに、一樹と結婚するのは私よ!」
ミミとしても、山猫族の将来を考えればここは譲れないのだ。
何より、ミミは一樹のことが好きなのだ。
絶対に譲るわけにはいかない。
「それは、ミミさんが勝手に言っているだけですよね?
一樹さんは了承してないと聞きましたよ。
でしたら、私が結婚を申し込んでも構わないと思います」
確かに、一樹はミミとの結婚の話を聞かされているが、
ラステから、時間をかけてじっくりと事を進めればいいと言われている。
というか、そんな話のことはすっかり忘れていたのだ。
「そそそ…それはそうだけど
でも、私は一樹とくくくくくく…口付けまでしたのよ!」
確かに、一樹とミミは口付けを交わした。
しかし、櫛名はあっさりと反論してみせる。
「ミミさんが、一樹さんに口付けをしたとの情報もありましたが、
それも、強引にミミさんがした事だと聞いています。
それでしたら、私も」
そういって、櫛名は一樹に近き、
一樹の頬に手を添えて、
「一樹さん、不束者ですがどうぞよろしくお願いします」
そういって、一樹に口付けをしたのだ。
この状態で一樹が考えたことは、
(もしかして、第二のモテ期に入った?)