一樹の秘密
足が治った一樹君
勿論サッカー選手にはなれません。
つか、そうなったら物語が終わってしまう・・・
ミミと櫛名のバチバチは次回に持ち越しとなりました。
櫛名は、一樹の膝に手を添えて、治癒魔法を唱える。
膝に、なんとも言えない温かさを感じる一樹。
ホットパック治療を受けているような感じだ。
(なんだか、膝が軽くなってきた感じがする。
なのに、櫛名さんはなんだか難しい顔してるんだよね
感覚的には、すごくいい感じなのに。
もしかして、治療うまくいってないんかな?)
そうなのだ。
治療をしている櫛名の顔は、ずっと怪訝な顔をしているのだ。
何か、問題でもあったのだろうか?
時間にして、5分ほどだろうか治療を続ける。
すると、櫛名が立ち上がった。
「これで、完治しているはずなんですが
一樹さん、膝の具合はどうですか?」
膝の曲げ伸ばしをしても、痛みを感じない。
驚いた一樹は、ミミの家を出て、駆け回る。
一樹のいきなりの行動に、驚くミミと櫛名。
「ウォォォォォォォォ
治ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
雄叫びを上げ、疾走する一樹。
そんな一樹を、何だこいつはと、冷たい目線で見つめる周りの亜人。
10分程すると、辺りを駆けずり回った一樹が戻ってきた。
すると、いきなり櫛名の手を握り。
「櫛名さんありがとうございました。
膝、治りました。
本当にありがとうございました。」
涙を流して、感謝する一樹。
ちょっと、引きつった笑みの櫛名。
(膝が治った。
これで、もう一度サッカーが出来る)
櫛名に、ありったけの感謝を捧げる一樹。
その光景を、面白くなさそうに見つめるミミ。
「なによ、一樹。
確かに、一樹の膝を治したのは櫛名だけど
私だって、色々と頑張ったのよ。
少しは、私にだって」
膝の治療をしたのは、櫛名だが
その治療を手配してくれたのは、ミミとラステさんだ。
「ミミもありがとう。
ミミやラステさんがいなかったら、
治療も頼めなかっただろうし」
一樹に感謝を述べられ、ようやく笑顔を見せるミミ。
しかし、櫛名だけは、笑顔を浮かべていなかった。
「一樹さん、少し試してみたい事があるのですが、よろしいですか?」
「ええ、構いませんよ」
一樹がそう答えると、櫛名は魔法を唱え始めた。
「我、汝に命名する。
汝の名は、一樹。
汝、契約にしたがい我に使えよ。
汝の名を、今ここに封じる」
櫛名は、服従の契約を一樹に使用してきたのだ。
(はて?人に使っても意味がないんじゃなかったけこれ)
「櫛名、いきなり何やってるのよ!」
ミミが叫ぶが、櫛名は真剣な顔で
「少し黙ってて!大事な事なのよ」
ミミは、櫛名の叫び声なんて、
聞いたことがなかった為、黙ってしまった。
「一樹さん、手や足を動かして貰えませんか?」
櫛名に言われた通り、手足を動かそうとするが、
動かすことが出来ない。
(これは、どういう事なんだ!
手足を動かすことが出来ない。
もしかして、服従の契約って俺にも効果があるのか?
俺一応人間のはずだよな)
櫛名は、一向に動こうとしない一樹を見つめ、
「やっぱりそうですか。
一樹さん、これで動けるはずです」
櫛名が言った通り、一樹は、手足を動かせるようになった。
「櫛名さん、これはどういう事なのか、
説明して貰えませんか?」
「櫛名、これはどうゆうことなのよ」
「分かりました。
これで、確信が持てましたので、ご説明します」
そう言って、櫛名は説明してくれた。
櫛名は、一樹に使ったさいに、違和感を感じたそうだ。
一樹の怪我が、どの程度酷いものなのかは知らないが、
走れなくなるほど、酷いものだと聞いていた。
この治療には、時間がかかると思っていたのだ。
だが、実際治療に要した時間はたったの5分。
最初は、大したことない怪我だったのかと疑ったが、
一樹の喜びようを見て、かなり重い怪我だったのが分かった。
そうなると、一樹の回復力は異常だと言うしかない。
治癒魔法は、高い魔力を持っている人ほど回復力が高い。
治癒魔法を掛ける側の魔力に、高い低いは関係ないが、
治癒を受ける側の魔力が、回復力に大きく関係する。
亜人が、人よりも回復力が高いのは、
持っている魔力が、人よりも高いからだ。
竜人族のなかでも、豊富な魔力を持つ櫛名は、
これまでに、色々な亜人を治療してきた。
その経験から言えば、走れなくなるほどの怪我だと、
亜人でも、治療には15分程かかる。
5分で治るのは、竜人族くらいだ。
もし、一樹の魔力が亜人並な場合、
一樹にも、服従の契約が、効果があるかもしれないと思ったのだ。
そこで、一樹に了解を取り、試してみた。
そして、実験は悪い意味で成功した。
一樹にも、しっかり効果があったのだ。
「はぁ~そうゆう訳だったんですか・・・
不味いな、こりゃ」
服従の契約を実際に受けてみて、こりゃ不味いと思う一樹。
自分の意思で、動くことが出来なくなるのだ。
(人に対して、服従の契約を使うなんてめったにないだろうから
そこまで、危険視しなくてもいいし、
契約回避の方法を使えば、さらに安全だろう。
問題は、亜人達だよな。
俺を支配する利点が、ありまくるからな。
この事は、他言無用として、
後は、ミミと櫛名さんを信用するしかない。
そして、一番の問題は、
服従の魔法が込められてる物が、椅子だってことだよな!)
そう、一樹の名前が封じ込まれているのは、
ミミの家の椅子なのだ。
せめて、名前を封じ込めるものを変えたいと願う一樹だった。