薬の効果
感想に美味しい水って書いたんですが
やっぱり良薬は口に苦しってことにしました。
トンネルを抜け、車に乗り込む一樹
一度、家に戻るために車を走らせる。
自宅まで3時間ほどの道のりを車で走り無事に家まで着いた。
途中疲れて、休憩を入れようと思ったが
このままノンストップで行けば
まだ両親の起きているうちに、家に着くことが出来るので
休憩を挟まずに、急いで家に戻った。
到着時刻は午後10時
家の明かりはまだついていた。
(父さんも母さんもまだ寝てないのな
丁度いい父さんにこの薬を試してもらうかな
副作用は無かったし
効果が出るか、それもと何も起こらないという感じだろう)
そう、一樹は一番安い薬(5イェンほど)を
ミミの家で、すでに自分で飲んでいたのだ。
副作用があり、倒れることがあっても
ミミの家でなら、大丈夫だと思ったからだ。
そして、今まで何とも無いということは
副作用が無いということだろう。
しかし、自分が飲んでもあまり疲れている訳でもないので
効果の程はよく分かっていなかったのだ。
なんとなく、元気になったような気がするといった感じだろうか。
「ただいま」
「どうしたの一樹?
夏休み中はT県で研究するんじゃなかったの?」
とすると、一樹の母が少し驚いた様子で出迎えてくれた。
「いや、ちょっとね
確認したいことが出来たから、一時的に帰ってきたんだよ。
また、2.3日したらあっちに戻るんだけどね。
ところで、父さんはまだ起きてる?」
「あらそうなの
お父さんなら、居間でTVを見てるわよ」
母親にそう言われ、一樹は居間に向かう
今では父親はTVを見ていた。
そんな、父親にただいまと挨拶をする。
「おう、一樹おかえり
夏休み中はずっと向こうにいるもんだと思ってたぞ」
「いや、ちょっと父さんに用があってね
一時的に帰ってきたんだ」
「俺に用か、一体何なんだ?」
「これ、体にいい物らしいからさ
父さんに飲んでもらうと思って持ってきたんだ。
少しでも体調が良くなればいいかなって思ってさ」
一樹は父親に例の薬(二番安いやつ10イェン程)を渡しながらそう言った。
そう、薬の効果が本当にあるのか
父親が使ってみれば一目瞭然なのだ。
一樹の父は、慢性腎不全を患っている。
その病が、少しでも改善されるようならこの薬は本物だ。
「なんだこれは、随分と安物の瓶だな
何処かのメーカー品って感じじゃないな。
大丈夫なのか本当に?」
一樹の父親は少し不安そうに一樹にそう尋ねた。
「効果は体力の回復と、体調を整えるらしいよ
でもその程度、体力が回復するのかよく分からないから
それを知るための実験になるのかな?
俺も飲んでみたけど、流石に元気な俺が飲んでも効果の程はわからないからね。
副作用は無いみたいだし、ものは試ってことで飲んでみてよ」
(父さんに飲んでもらうんだ。
副作用が無いって事で安心して飲んで貰わないとね)
「なんだか怪しい感じだな
まあ一樹が持ってきたものだから悪いものではないだろう」
そう言って、一樹の父は瓶を開け、薬を飲み干した。
「こいつは、かなり苦くて不味いな・・・」
「味についてはごめん
でも、俺が飲んだものはそこまでじゃなかったよ?」
確かに一樹の飲んだものにも苦味があり美味しいものでもなかったが
そこまで、顔をしかめるほどのものでもなかった。
後で分かったことだか
この薬、一番高価なものは薬草などを煎じたものを
そのまま瓶に詰めるそうだ。
いわば、カルピスの原液をそのまま飲んでいるようなものだ。
そして、値段の安いものはその原液を、水で薄めたものらしい。
値段が下がれば、その分水で薄まってるという訳だ。
なので、高価になればなるほど苦味が強くなるようだ。
「まぁ、良薬は口に苦しっていうもんだ」
「そっか、じゃあ俺はこれからシャワー浴びて寝るから
もし、体調が悪くなったりしたらすぐに言ってね
俺も飲んで、副作用ないと思ったんだけど
父さんが飲んだものは
俺が飲んだものとは、少し違うようだからさ」
「もしかして、実験だったのか?」
「言ったじゃん、効果の実験だって
俺が飲んだものは、父さんが飲んだものより安いやつだったから
万が一って事もありえると思ってさ」
そう言うと、一樹は風呂へ直行し、シャワーを浴びた。
3日ぶりに浴びるシャワーは汚れと、疲れを流した。
風呂場から出ると、父さんはすでに寝ていたようだ。
父親の事が、少し心配だったが
一樹は、疲れたのかベット入るとすぐに寝てしまった。
そして、次の日の朝父親に叩き起こされた。
「一樹起きろ!」
「なんだよ父さん、こんな朝っぱらから」
朝7時に叩き起こされ少し不機嫌な一樹
だが、次第に頭が覚醒する。
父親が起してくる違和感を感じ少し焦る一樹。
「父さん、もしかして体調が悪くなったの!」
父親は、違う違うといった感じで首を振りこう答えた。
「逆だ、すこぶる快調だ。
疲労感などがほとんどないし、足のむくみの和らいでいる。
あの薬はものすごく効果のある薬だと思うぞ
特に副作用もないようだしな
一樹も何も変わりないんだろう?」
それを聞き、自分の体に違和感がないか確かめてみたが
何処も、おかしなところはなさそうだ。
「そうか、それはよかった。
でも、そんな報告なら今しなくてもいいんじゃないの?
朝っぱらから、たたき起こさないでよ」
「なに、俺は今から仕事だからな
仕事に行く前に、もう一度あの薬を貰おうと思ってな」
「そう、わかった。
なら、ちょっと待ってて」
そう言って一樹は、リュックから18イェンほどした
結構高価な薬を出して渡した。
「この薬は1日1本までらしいからね
朝飲むのがいいのか、それとも寝る前に飲むのがいいのかわからないけど
残りは、これを入れて3本だよ」
「まあ、ものは試しだ。
今度は、朝飲んでみるのいいだろう。
では行ってくる」
そう言って父は、薬を持って部屋から出て行った。
一樹は、嵐は去ったともう一度夢の中に入っていった。
昼過ぎまで寝ていた一樹は、その日はダラダラと過ごした。
部屋で本を読んでいた一樹は
夕方随分早くに帰宅した父親に居間に呼び出された。
「一樹座りなさい」
「もう座ってます」
そんな漫才みたいなやり取りをしてると
父親は、真剣な顔をして一樹に聞いてきた。
「まぁそんなことはどうでもいい
一樹、単刀直入に聞くこの薬はなんだ」
「たまたま手に入れた体力を回復させる薬だって
そういったじゃないか」
「そうか、なら質問を変えよう
この薬を何処で手に入れた」
「それは言えない
でも、どっかの新薬を盗んできたとかじゃないから安心して」
「一樹、出来れば教えて欲しい。
これを飲んでから俺の体調はすこぶる調子がいい
病が治ったのかと思うくらい体調がいい」
「父さん、それはいい事じゃないか」
「確かにいい事だ
だからこそ、しっかりと知っておきたいんだ。
俺は明日、会社を休んで病院で検査を受けるつもりだ
もし、病状が改善されていたなら
その意味は一樹分かるだろ」
「それでも、この薬を何処で手に入れたかは言えないよ」
(言えるわけが無い
まさか、異世界の魔法の産物ですなんて言えないよ
俺も、まさかここまで効果があるなんて思わなかったよ)
そうなのだ。
一樹は少しでも、父親の病状が良くなればと思っていたが
ここまで、劇的に改善されるとは思っていなかったのだ。
異世界の魔法薬、恐るべしといったところだ。
「仕方ないか・・・
ところで、今日の薬を飲んでからのほうが
調子がいいんだが
今日の薬は、昨日の薬とは少し違うのか?」
「今日飲んだほうが、高価なんだよ
それで、残ってる後2本はもっと高価だよ」
「もっと効果の高い薬があるのか?
確かに、今日の薬のほうが苦くて不味かったぞ」
「多分だけどね
その分副作用とか心配だったから
安い順から飲んでもらったんだよ」
「自分で飲んで副作用を確認したとはいえ
父親で本当に実験するとは・・・
それよりも、この薬だがもっと量を揃えることはできるのか?」
「大量には無理かもしれないけど
そこそこの量なら、揃えることは可能だと思うよ」
「そうか、取り合えず俺は明日
病院に行ってくる。
その結果如何では、俺も少し考えてることがあるんだ」
「そうだね
でも、父さんの為に持ってきたっていうのは本当だよ」
「分かった
ありがとう一樹
検査結果によってだが、これをこれからどうするつもりだ」
「でも、後は10人くらい被験者が欲しいよね。
後は、どんな症状にも利くのか、
それとも、腎不全だけなのかも知りたいところなんだよね」
「本当に人体実験だなそれじゃ」
「でも、これが本物なら日本の未来は明るくなると思わない?
その為に必要な実験だよ。
しかも、副作用は無いみたいだしね
別に効果がでなくても苦い水を飲むくらいで済むことだよ」
「そうだな
確かにそういった実験は必要かも知れんな
まぁ、明日の検査結果次第で考えていくしかないな」
父親がそう言うと、一樹は明日の検査結果が楽しみになっただった。
ちょっと描写が弱いとの指摘があり
作者も少しそれを感じていたので
全話少し修正を行いたいと思います。
1月26日修正しました。
土、日はそれに当てようと思ってます