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ミミのお願い

「そこで、一樹にお願いがあるの

 一樹の村に、私達亜人を住ませて欲しいのよ」


確かに、本当に一樹の村がこの国に実在すれば連れていけるだろう。

しかし、そんな村はこの世界にはなく

日本へ亜人を連れて行けば、とんでもないことになるのは目に見えていた。

よって、一樹の返答はこうなる。


「やっぱりそうくると思ったよ

 だけど、それはできないよ

 それだけの人数の亜人が村にきたら色々と問題になるだろうし、

 それだけの人数がいっぺんに移住するば、必ず誰かに見つかってしまう」


(助けてあげていのは、やまやまだけど

 流石に、ミミ達を日本に連れて行くわけにはいかないよ)


「そう、やっぱりそうよね

 でもいいの、一樹ならそういうだろうと思ったから」


一樹に、断られるのがわかっていたような顔だ。


(俺が断るのがわかってた感じだな。

 本題は、間違いなくこれだと思ったんだけどな)


「だったら代わりに、

 一樹の村のような隠れ里を

 亜人で作れるよう協力して欲しいのよ」


(そうきたか、でもそれは協力できないなぁ

 そんなの、夏休みが終わるまでに終わる事じゃない


そう一樹は夏休み中なのだ。

夏休み期間であれば、いくらでも協力することは出来る。

しかし、夏休みが終われば大学もあるのだ。

単位も殆ど取り終えて、残るは卒論だけとなっている状態ではあるが。


「ミミ、悪いけどそれも協力できないよ

 俺には、あまり時間がないんだ。

 一月もすれば、村に帰らないといけないし

 それに協力しても、俺にはメリットがないよ

 莫大な金と、莫大な時間をかけて協力するだけのメリットが」


(商人として、メリットがない仕事はしない

 それなら、断る理由になるはずだ)


そんな事を考えてる一樹を、ミミは不思議そうな顔で見ていた。


「メリットっというのはどんな意味なのかしら

 一樹の村の言葉?」


「ああ、利益って意味さ

 俺には、これに協力しても

 得られる利益がまったく無いってことさ。

 それに、俺の村にも利益をもたらさない。

 もし、村に利益をもたらすような物なら

 村に帰って、協力する為の許可も貰えたかもそれないけど」


「そうね、それもそうだわ

 でも、それは報酬の話を聞いてから判断して欲しいわね」


そう言ってミミは笑っている。

どうやら、ミミはそこまで考えて一樹にこの話をしてるようだ。


(こりゃ、一筋縄じゃいきそうにないな)


「まず第一に、村を作れた際には、

 村で一樹に、店を持って商売をする権利をあげるわ」


「それはまぁ、当然じゃないかな?

 むしろ、それ位じゃ割りに合わない」


村を作るための、莫大な金額は一樹が出すことになるだろう

それだけの金をかける割には、あまりにもメリットが低すぎる。


「いいえ、違うわ

 一樹以外には、店を持つ権利を持たせないもの

 つまり、商売の権利を持つのは一樹のみになるってことよ。

 でも、それだと一樹は儲けもすごいだろうけど

 負担も大きいでしょうから、その権利の売買権もつけるわよ」


(こりゃ随分な権利をくれるもんだな

 商売権が、俺にしかないってことは

 実質支配権を持ってるようなもんだぞ)


村で作物なども作るだろうが

すべて自給自足で行える訳ではないだろう。

生活用品、飢饉の為の備え、嗜好品など

村で自給出来ない物すべてが

一樹を通さないと、販売出来なくなるのだ。

その村の支配権を持ってると言っても過言でない。


「随分と気前のいい権利をくれるんだね

 俺が暴利を吹っかけるような商人になった場合

 それだけで、村が崩壊するよ」


「一樹はそんな事はしないわ

 そのあたりは信頼してるのよ

 私を助けてくれるような人だもの」


(まぁ確かにそんなことしなくても、十分儲けられるけどな

 なんせ、ライバルがいないんだからな)


一樹が捕らぬ狸の皮算用的な思考中に

ミミは、次の話に移っていた。


「第二に、亜人の付与魔法を優先的に

 一樹が使えるようにするわ。

 あの時は、説明しなかったけど

 亜人の付与魔法は、人の使う付与魔法より強力よ

 普段は精霊魔法を使うために、付与魔法を使う事はいないけれど

 村ができれば、精霊魔法を使うこともなくなるわ。

 一樹の村では、魔法を使うことがないんでしょう?

 それなら、付与魔法を使った物を村に持って帰れば

 一樹の村にとっても利益になると思わない?」


(やばいな、ミミはかなり頭の回転が早いな

 俺の利益、村の利益をしっかりと考えてる)


そう、ミミは一樹に出会ってからの僅かな時間で

これだけの事を考えついていたのだ。


「確かにそうだな、でも魔法がなくても村は今でも豊かだよ。

 それに、隠れ里までの輸送も大変だ

 見つからないように輸送するのは骨が折れるよ」


「それについても考えてあるわ

 報酬の第三でね」


(まだあるのかぁ)


「第三に、私達亜人が使役できる魔獣の使用権の譲渡よ」


「魔獣の使役だって?」


「そう、人が亜人を奴隷にしたがる原因でもあるのだけど

 亜人は、自分と同じ種族の魔獣を使役することができるの

 使役できる魔獣は1匹だけだけどね。

 空を飛ぶ魔獣だったり、馬よりも早く走れる魔獣だったりは

 人の生活に無くてはならないものになっているわ。

 だから、人は魔獣の使役の利用を求めて

 亜人を奴隷にしたがるの」


(確かに空を飛ぶ魔獣を使えば、輸送の苦労なんてない

 こんな時代だ、野盗や、魔獣の襲撃で

 商品を駄目にした商人は沢山いるだろうし、

 それを回避する為の護衛代も馬鹿にならない

 確かに魅力的だな)


「実際に私は300イェンほどだったけど

 竜人族や鳥人族が、奴隷商に捕まったら

 その10倍以上の値段が付くでしょうね。

 私の使役できる魔獣は、あまり利用価値がないから値段が低かったのよ」


(つまり、ミミは愛玩用として売られてたって訳か

 綺麗な顔してるもんな)


事実、あの奴隷商人の男も魔獣の使役に関してはアピールせずに

見てくれ中々の上玉だの、ミミ自体の価値をアピールしていた。

ミミは愛玩用として売られていたのは間違いないだろう。


「第四に、私を一樹にあげるわ」


「ミミ!そうゆうのは、俺は好きじゃないって言わなかったか?」


一樹はミミと会ってからは出した事の無いような

大きな声で叫んでいた。

奴隷として売られていた事が、可哀想だったので

一樹は、ミミを助けたのだ。

ミミが、一樹の奴隷になってしまうのであれば本末転倒だ。


「言ってないと思うわ

 それに、誤解しないで一樹

 貴方がそういった事を好んでないのは

 話をしていてもよくわかるわ。

 でもこれも必要なことなのよ。

 私のこの計画が成功すれば、私が村を治めることになると思うの」


「それはそうだろう、ミミの計画なんだから」


「私は、亜人の隠れ里としたいと言ったけど

 いずれは、亜人と人とが

 共存できる村にしたいと思ってるわ。

 昔の私ならそんなこと考えもしなかったけど、

 きっとこの国にも、一樹のような人はいると思うし

 亜人だけですべてをするには、限界があるでしょうしね。

 その為にも、村を治める私が一樹と一緒になるのは都合いいのよ。

 村長である私が、人との共存を示すわけだからね。

 それに、もし一樹に何かあったときにその莫大な利権を

 継ぐ人がいないのは怖いわ」


一樹はミミの言っている意味が要約わかったのだ。

いきなり、そんな事を言われても困ってしまう。


「つまりあれか、ミミと結婚しろってことか?」


「ええ、そう思ってくれて構わないわ

 一樹もこんなにカワイイ女の子と結婚できるのよ

 少しは嬉しそうにしてよ」


「断る!」


「なんでよ、女にここまで言わせて一樹は断るの!」


「そんなものは好きな人とするもんだ!

 村の為に結婚するなんて人身御供でもあるまいし」


「ちょっと待ってください」


今まで、ずっと静観していた父親だったが

そう言ってミミの父親が待ったをかけた。


「ミミは、そんな簡単な気持ちで言ったのではありません。

 確かに貴方と結婚することで

 こちらに色々と都合がいいのは確かですが

 その事だけを考えて

 こんな事を言っている訳ではないということを信じて上げてください。

 取り合えず、第1から第3の報酬について考えて頂けませんか?

 貴方にとっても、貴方の村にとっても悪くないと思うのですが。

 第4の報酬については、二人はまだ出会って間もないわけですから

 時間をかけてじっくりと事を進めればいいのではないでしょうか?」


そうやって諭された一樹は、少し考える時間が欲しかった。

実際協力しない訳にはいかないだろうが

取り合えず、今は考えさせて欲しかった。


「わかった、取り合えず第4の報酬については今はなしの方向で

 それ以外について、色々と考えさせてもらいたいんだがいいでしょうか?

 一度村に戻って、許可を得られるかどうか聞いてみないといけませんし

 ミミも、それでいいね?」


そうミミに向かって告げると、ミミは渋々承諾した。


(はあ~、傷心旅行で結婚させられそうになるなんて

 それなんてエロゲ?って感じだよな

 しかも、異世界でシムシティーですか・・・困ったことになった)


1月24日に修正しました

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